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第1章 66 忍び寄る恐怖

 毒蛇事件から約2時間後―


私たちは遅めの昼ご飯を食べた後、再び『シセル』の村を目指して旅を続けていた。



何処までも続く地平線に私達、旅の一行の影が長く伸びている。


「少し日が陰ってきていますね…。夜になる前にあの村に到着するでしょうか…?」


トマスが心配そうに空を見上げた。


「そうね、到着すればいいけれど…」


だんだん日が暮れる様子を見ていると、不安な気持ちがこみあげてくる。

それに気のせいか、移動する速度も遅くなっている気がする。


やはりあの毒蛇事件は歩みを遅くする為に、わざと仕組まれたものだったのだろうか?


何しろあの村の周辺は太陽が落ちると…。



「クラウディア様」


不意にリーシャに名前を呼ばれて顔を上げた。


「どうかしましたか?先ほどから浮かない顔つきをしていように見えますが?」


「え?そうかしら?気のせいじゃないかしら?」


何も知らないリーシャの前で下手に、私が不安に思っていることを口にすることはできない。

要は日が暮れるまでに『シセル』の村へ辿り着けばいいのだから。

…尤も、あの村も決して安全な場所とは言えないのだけれども。



「そうですか?ならいいですけども…。それにしても驚きました。クラウディア様の作ったお料理、本当に美味しかったです。ですがいつの間にお料理が出来る様になっていたのですか?」


「え?ええ。ほら、お城から使用人の人達がどんどん減って行った頃、厨房に立って時々お手伝いしていたのよ」


本当はそんなことなどしたことは無かったが、私は苦しい言い訳をした。

まさか前世は日本人の主婦で、家族の為に食事を用意していたから…等とは口が裂けても言えるはずはなかった。


「そうだったのですね…少しも知りませんでした。ですが、それで料理が作れるようになったのですね?納得しました。とても美味しかったです」


リーシャが笑顔で私の料理を褒めてくれた。


「ええ。本当に美味しかったです。まさか自分の人生の中で、王女様の手料理を頂ける日が来るとは思いもしませんでした。特に干し肉と乾燥野菜で作ったシチューはとても美味しかったです」


「トマスったら…大げさね。でもありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」


やはり作った料理を美味しいと褒めてもらえるのは嬉しい。


「あの人たちだって、美味しそうに食べていたじゃないですか。特にあのライって人はこっそりお替りしていたのですよ?」


「まぁ…そうだったの?少しも知らなかったわ」


あんなに当たりが強かったライが私の手料理をお替りするなんて…少し信じられなかった。


「でも、あの毒蛇をスヴェンさんが料理しようとした時は驚きましたよ。全員嫌がっていたじゃないですか?」


トマスが苦笑しながら言った。


「ええ。そうね…やはりいくら何でも自分たちを襲った毒蛇を食べるのは嫌でしょうからね?」


「私もそう思います。でもあれって、ひょっとするとスヴェンさんのちょっとした嫌がらせだったかもしれませんよ?」


リーシャの言葉に私たちは笑った。



こうして3人で楽しく会話をしていると、不安な気持ちが和らいでくる。


私はバッグの上から【聖水】が入っているか確認した。



大丈夫…きっと夜になるまでには『シセル』の村に到着出来るはず…。

もし万一のことがあってもこの【聖水】を使えばいいのだから。



しかし、私の願いもむなしく日は完全に落ちてしまい、回帰前に経験した恐怖体験を再び味わうことになるのだった―。



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