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第1章 59 ユダの説得

「ユダ…」


「どうされますか?クラウディア様。今なら…闇に紛れて貴女を連れてここから逃げ出すことが出来ます。幸い…リーシャもスヴェンも眠っている。今がチャンスです」


ユダの言葉に耳を疑う。

彼は『エデル』の兵士なのに…本気で国を裏切るつもりなのだろうか?


「まさか…貴方、本気でそんなことを言ってるの?」


「ええ、本気です。俺はこれ以上クラウディア様が危険な目に遭うのを見たくはありません。本音を言えば…この町にも立ち寄りたくはありませんでした。『レノスト』王国の領民達は、勝手に戦争を起こした挙句に敗戦したことで…王族の方々を憎んでいるのは知っていましたから。クラウディア様がまた酷く責められるのではないかと危惧しておりました」


「そう…やはり…知っていたのね…」


やはりアルベルトは私が領民達に憎まれているのを知っていた。それなのに、遭えて『アムル』『クリーク』そして…これから向かう予定の『シセル』の村に立ち寄るようにユダ達に命じたのだ。


回帰前に既に身をもって、私がどれだけ領民達から憎まれ、嫌われているのか…既に分かっていた。現に今回だって訪れた領地での領民達の私に対する最初のイメージは最悪だったのに…。


アルベルトは仮にも妻となる為に『エデル』に向かう私に、どれだけ領民達に憎まれているのか…身をもって体験させたかったのだろう。



「だが、貴女は先に訪れた『アムル』の村で、救いの手を差しのべ…信頼を得ました。そして、この町でも貴女は王女という立場にありながら傷病兵たちの治療に最善を尽くし…彼らを救いました。自分のことなど顧みずに。本当に貴女は凄い方だ…」


ユダの雰囲気がいつもと違う。

普段はピリピリした空気をまとい…目つきも鋭いのに、今は随分優し気な目で私を見つめている。


「ありがとうユダ。そう言ってもらえると嬉しいわ。でも、私は逃げるわけにはいかないのよ」


何故なら…次の村は今にも死にかけている村なのだ。その村が…最も助けを必要としているのに。

回帰前、私はあの村のあまりの惨状に耐え切れずに彼等を見捨てて逃げてしまった。

その結果…あの村は滅んでしまったのだ。


これにより、私の悪評は益々高まり…『エデル』に到着した私を迎えた人々の目は、まるで氷のように冷たいものだった―。



「クラウディア様は…あの村『シセル』のことを何も知らないから、そのように仰るのでしょう。いいですか?あの村は瀕死状態です。みすみす危険を冒して行くような場所ではない。けれど、我々は…王命により、立ち寄ることが決められている。俺の独断では『シセル』行をやめさせるわけにはいかないのです。それならいっそ…」



するとその時―。



「そこまでだ、ユダ」


闇の中で声が聞こえた。


え…?あの声は…?

私はその声に振り返った。


「誰だっ?!」


部屋の入り口を睨みつけるユダ。


「さっきから黙って聞いていれば、勝手なことばかりぺらぺらと…お前って意外とよく喋る男だったんだな?」


声の主は話しながら私たちの方へと近づいてくる。


そして…。


「お、お前…!」


ユダの声に焦りがあった。


「え…?ね、眠っていたんじゃなかったの…?」



「ああ、言っただろう?俺は耳には自信があるって」


私たちの前に現れたのは、スヴェンだった―。






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