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第1章 56 耳を疑う言葉

「姫さんは…ユダ…あいつのこと、どう思う?」


「どうって…?」


そんな漠然とした質問をされても何と答えればよいか思いつかない。けれど、先程のユダの様子から、一つ確信を得られたことがある。


「そうね……旅を続けていた最初の頃は私の心配なんかしない人だと思っていたけど…今は違う気がする。多分…私のことを本気で心配してくれている気がするわ。だから…今は信用してもいい人…かもしれない」


何しろ私の悲鳴を聞きつけて真っ先に部屋に駆けつけてくれたし、覆面男が逃げた後のユダの様子はいつもと違って見えた。

いつもの冷静なユダでは無かった。


「そうか…姫さんもユダの様子に気付いたんだな…」


スヴェンがため息をついた。


「スヴェンもそう思ったの?何だか普段のユダとは違っていたわね。何があって、あんなにユダの様子が変わったのかしら…」


「え?姫さんは…分からないのか?ユダが何故変わったのか」


何故かスヴェンが驚いた様子で私に尋ねてきた。


「え、ええ…さっぱり分からないわ。スヴェンは分かったの?なら教えてくれるかしら?どうしてユダがここにきて突然変わったのか…」


「……」


するとスヴェンは少しの間、口をポカンと開けて私を見ていたが…。


「い、いや。俺も正直なところ、よく分からないんだ。今の所姫さんとユダは親しい間柄に見えたから…姫さんなら理由を知っているかと思って尋ねただけだよ。ごめん、変なこと尋ねて」


「いいのよ。別に…。でもありがとう、スヴェン」


膝を抱えて座りながらスヴェンを見た。


「え?何で俺に礼を?」


「ええ…。実はさっき覆面男に襲われた時の恐怖がまだ身体に残っていたのだけど…スヴェンと話をして気が紛れたわ。ありがとう」


「い、いや。だから俺に礼なんか言うこと無いって。逆に感謝するのは俺の方だよ。姫さんは俺が酷い言葉を投げつけても村を救ってくれたし、姫さんのお陰でこうして旅に出て…今迄狭かった俺の世界が広がった。それに同じ領民であるこの町の人達を救ってくれたじゃないか」


「スヴェン…」


「姫さん。『エデル』の使者達が話してるのを偶然立ち聞きしてしまったんだけど…次は『レノスト』王国最後の領地に行くんだってな」


「ええ、そうよ?」


「そこで大変なことが起こっているはずだから、きっと次こそ姫さんは困ることになるだろうって話していたんだよ」


「え…?」


まさか、その話って…。


しかし、『エデル』の使者たちの中に私達の敵が潜んでいることをスヴェンは知らない。知らないからこそ、話を続けている。


「でも、姫さんは今度の村も救ってくれるんだろう?だから敢えて旅の途中に立ち寄ることにしたんだろう?次もまた手伝わせてくれよ。同じ領民として、困っている人々を…助けてやりたいからさ。俺…そ、その姫さんの力になりたいんだよ」


アルコールランプの下で話すスヴェン。

彼は余程照れくさいのか、最後の方は顔を真っ赤に染めながら話していた。


スヴェンの言葉はとてもありがたかった…それと同時にスヴェンが立ち聞きしたという『エデル』の使者達の話のほうが気がかりだった。

そこでさり気なく尋ねてみることにした。


「ありがとう、スヴェン。次の村でも手伝ってくれると、とても助かるわ。ところで貴方がさっき、立ち聞きしてしまったという『エデル』の使者達は誰だったのか分かる?」


話をしていたということは、複数人いたに違いない。


「あ…。悪い。宿屋の隙間から声が漏れていただけだから…姿は見ていないんだ。でも1人は分かるぜ」


「え?誰なの?」


「それはユダだよ。あの声を聞き間違えるものか」


「え…?」



私はその言葉に目の前が一瞬、真っ暗になってしまった―。



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