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第1章 55 3人で過す夜

 自分の持ち物を全て持参し、リーシャが借りている隣の部屋へ向った。


扉は開いており、部屋の中には長ソファで寝る支度の最中のスヴェンとベッドメイクをしているリーシャの姿があった。


「あ、来たんだな?姫さん」


スヴェンがいち早く私の姿に気付いた。


「クラウディア様、今ベッドのお支度が出来ました。いつでもお休みになること出来ますよ?」


「ありがとう、リーシャ。それにごめんなさい、スヴェン」


私はスヴェンに頭を下げた。


「え?何故謝るんだ?」


不思議そうにスヴェンは首を傾げる。


「それは…あんなことがあったばかりだから、貴方をそんなソファの上で寝かせることになってしまったから…」


するとスヴェンが笑った。


「アハハハ…。本当に姫さんは変わった方だよ。俺みたいなただの領民にもそんなに腰が低くてさ…。でも、そんなところが姫さんのいいところだよ。だからユダも…」


「え?ユダがどうかしたの?」


「ユダさんがどうかしましたか?」


ユダに対してあまり良い印象を持っていないリーシャは面白くなさげにスヴェンに尋ねた。


「あ…悪い、今のは言葉の綾だ。気にしないでくれよ。さってと、姫さんとリーシャはもう寝ろよ。今夜の見張りは俺に任せてくれ」


スヴェンは腰に差した剣を握りしめた。


「スヴェン、その剣はどうしたの?貴方…短刀しか持っていなかったんじゃないの?」


「あ?この剣か?実はこの町の町長に貰ったんだよ」


「え?町長さんにですか?」


リーシャが会話に加わってきた。


「ああ。ここ【クリーク】は兵士が多くいた場所だろう?武器庫の大半は燃やされてしまったらしいけど、まだ地下倉庫には武器が残っていてさ。これから姫さんを守っていくなら剣が必要だろうと言って、今日貰ったんだよ。今迄剣なんか持ったことが無かったからな…嬉しかったよ。他の仲間たちにも持たせてやりたかったな…。そうすれば戦争で…」


そこでスヴェンは言葉を切った。

その表情は…少し悲しげだった。


スヴェン…。

きっと彼は戦争のせいで辛い目に…。申し訳ない気持ちで一杯になる。


「…ごめんなさいね。スヴェン。私の父が戦争を始めたばかりに…」


「え?何言ってるんだよ?姫さんは何も悪くないだろう?あ…ごめん!俺が変なこと言ってしまったばかりに…悪かった!今の話は忘れてくれっ!俺は姫さんには感謝の気持ちしか無いからな?」


スヴェンは必死になって頭を下げてきた。


「そうですよ、クラウディア様は何も悪くありませんから」


「リーシャ…」


「さ、2人とも。もう寝ろよ。見張りなら俺がするし、多分今ユダ達が犯人の行方を追ってるんじゃないか?」


スヴェンの言葉に先程の覆面男と対峙したときのことを思い出した。

あの覆面男は何者なのだろう…?被り物のせいで、声質が変わっていたとはいえ、聞き覚えのない声だった。


「クラウディア様、スヴェンさんがああ言って下さるのですから、もう眠ったほうがいいですよ」


自分のベッドに潜り込みながらリーシャが声を掛けてきた。


「ええ、そうね」


「一応用心の為、テーブルランプだけは明かりを灯しておくよ」


スヴェンが部屋の明かりを消しながら声を掛けてきた。


「ありがとう」


薄暗くなった部屋で私もリーシャにならってベッドに入ったものの、少しも眠気は襲ってこない。

恐らく、妙な時間に眠ってしまったことと、先程襲われたショックで眠気など、どこかへ飛んで行ってしまったのだろう。


「…」


一方、驚くことにリーシャはもう眠ってしまったのか隣のベッドからは既に寝息が聞こえている。


「スヴェン…。私が起きているから、貴方が眠ったら?」


闇の中、スヴェンに声を掛けた。


「え?何言ってるんだよ、姫さん」


スヴェンの声がソファの方から聞こえる。


「今の私は少しも眠くないのよ。それに移動は馬車だから旅の途中で眠くなったらいつでも眠れるわ。でもスヴェンは馬にまたがるのよね?眠くても寝ることが出来ないじゃない?だから私が起きているわよ。何かあればすぐに起こすから」


ベッドから起き上がるとスヴェンに声を掛けた。


「だけど、姫さん…」


「大丈夫だってば。それに多分今夜はもう私を狙ってくることは無いと思うわ」


「う〜ん…分かったよ…。でも、その前に少しだけ姫さんと話がしたいんだけど…いいかな?」


「ええ?いいわよ?どんな話?」


私はベッドから降りると、スヴェンが座っているソファの向かい側の椅子に腰を下ろした。


「ああ…実は…ユダのことなんだが…」


「え…?ユダ…?」


スヴェンは一体何を話すつもりなのだろう―?




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