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第1章 47 『クリーク』の今後と揉め事

 温泉は薬草湯のようで、若草色にハーブのような香りのするお湯だった。


「確かにこの温泉に入ると疲れが取れそうね…」


誰もいない温泉のお湯に浸かりながら回帰前のことを思い出していた。


前回、『クリーク』に立ち寄った時には温泉の存在すら知らなかった。何故なら町の人達から敵意のある目で睨みつけられ、しまいには命の危険すら感じるほどの悪意を向けられて逃げるようにこの町を去って行ったからだ。



 『アムル』の村には『エデル』に到着後、アルベルトに頼んで復興支援の資金を捻出していく予定だが、この町には立派な温泉施設がある。


敗戦で『エデル』の属国に下るという結果にはなってしまったが、戦争は終わって今後は平和な世の中になっていくはずだ。


傷病者は全て回復して野戦病院の必要は無くなった。

あの病院を温泉客の休憩所に作り替えて、この町を日本のように【湯治場】として栄えさせるのも良いかもしれない…。


「フフフ…こうして温泉につかっていると…日本人として暮らしていた時の記憶が思い出されるわ…」


子供たちが小さかった頃は家族4人で、月に2回は車で10分程の場所にあるスーパー銭湯に良く行っていた。


「皆…今頃どう過ごしているのかしら…」


この世界で再び「クラウディア」として、回帰してからは気の休まることが殆どない。

敵も味方もまだはっきりせず、危うい橋の上を歩いているような状況は息が詰まりそうになってくる。

けれど、この温泉につかったことで…少しは心と身体の疲れが取れていくような気がする。


「この町を救うことが出来て良かったわ…」


そして私は少しの間、温泉を堪能した―。




****


「あら…?」


温泉から上がって、宿屋の廊下を歩いていると部屋の前でリーシャとユダが睨みあっている姿が目に飛び込んできた。


一体何があったのだろう?


嫌な予感がした私は、慌てて声を掛けながら2人に駆け寄った。


「どうしたのっ?!2人とも!」


「「クラウディア様!」」


ユダとリーシャが同時にこちらを振り向いた。


「い…一体、こんなところで何をしていたの?」


駆け寄って来たので、息を整えながら2人に尋ねた。


「クラウディア様の宿泊している部屋の前で立っていると、この女が文句を言ってきたのです」


ユダは明らかに不機嫌そうな目でリーシャを睨みつけた。


「この女っていう呼び方はやめて下さい。私はリーシャと言う名前があるのですから」


リーシャは負けじとユダを睨み返した。


「プッ」


リーシャの言葉に思わず吹き出してしまった。


「クラウディア様?」

「何故、そこで笑うのです?」


リーシャとユダが不思議そうに私を見る。


「い、いえ…つい最近…ユダが私に同じようなことを言ったのを…思い出して…」


「あ…そう言えばそうでしたね…」


「え?そんなことがあったのですか…?いえ、そんなことよりもクラウディア様!彼は私がここに戻ってきたときクラウディア様のお部屋の前に立っていたんですよ?!一体何をしていたのか…怪しいと思いませんかっ?!」


リーシャは余程ユダが私の部屋の前?で見張りをしていたのが気に入らなかったのか、唇を尖らせて訴えてきた。


「当然だ。クラウディア様の不在中に部屋を見張るのも俺の仕事だからな。勝手に荷物に触れるような不届き者が現れないように」


「な、何ですって‥‥?!」


ユダはまるで挑発するような言葉をリーシャに向けた―。





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