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第1章 38 生じる疑念

「ユダ…どうしてそんなことを…?」


ユダがこんなことを言うには絶対にわけがあるはず…。


「クラウディア様は…貴女の大切なメイドを疑う私の言葉を聞くつもりですか?」


じっと私の目を見つめてくるユダ…。

嘘を付く人がこんな風に人を真っ直ぐ見つめることができるのだろうか?


「ええ、聞きたいわ。聞かせてくれる?」


ユダは一度頷くと何故リーシャに疑いの目を向けるのか、理由を語り始めた。



「俺が気を失ったクラウディア様を抱きかかえて野戦病院へ戻ってきた時、スヴェンが真っ先に駆け寄って来ましたがリーシャの姿はそこにありませんでした」


「え…?いなかった?」


ずっと野戦病院で傷病者の治療に当たっていると思っていたのに…。


「彼の話ではクラウディア様の姿がないことに気付いた時には既にリーシャの姿は無かったそうです」


「そうなの…?」


一体リーシャは何処に行っていたのだろう?


「そして俺がクラウディア様を連れて戻ってきた直後にリーシャが戻ってきました。スヴェンが今まで何処に行っていたのかを尋ねると、井戸で洗濯をしていたと話していましたが…」


そこで一度ユダは言葉を切った。


「俺が見張りをしていた場所からは井戸がよく見えました。けれど…井戸の周りには時折、誰かが水を汲みに足を運んでくるだけで彼女の姿は無かった」


「え…?それではリーシャは一体何処に…?」


「それは分かりません。が…嘘をついているのは間違いないでしょう。それだけではありません」


「まだ何かあるの?」


「はい。俺は意識を失ったクラウディア様を休ませる為に町長に頼んでこの部屋を用意してもらいました。そしてリーシャが付き添うといったのですが、女性患者の治療をするのに人手が必要だったので、彼女には野戦病院に戻ってもらいました」


「…」


私は黙ってユダの話を聞いていた。


「そして俺がクラウディア様の様子を見に行った時…リーシャが貴女の眠っている部屋にいました。そして机の上に乗せておいた貴女のバッグに触れようとしていたのです」


「え…?」


「俺はリーシャにクラウディア様の持ち物に勝手に触れて良いのかと尋ねると、机の上からバッグが落ちそうになっていたので、元に戻そうとしていただけだと話していました。そして逃げるように部屋から立ち去っていったのです」


「!」


その話を耳にした私は急いでバッグの中身を確認するために机に向った。

そしてバッグの中身を改めた。

中には2本の【エリクサー】の原液が入っている。


「どうでしたか?」


少し離れた場所に立っていたユダが声を掛けてきた。


「…大丈夫、中身は無事だわ」


「そうですか、それは良かっ…」


その時…。


「姫さんっ!」


スヴェンが部屋の中に駆け込んできた。


そしてそのすぐ後ろにはトマス、町長。そしてメガネの青年が続けて部屋の中に入ってきた。


「良かった…姫さん。目が覚めたんだな…?本当に心配したよ…」


スヴェンは私を見ると安堵のため息をついた。


「スヴェン…心配掛けてしまったわね?」


するとすぐにトマスが声を掛けてきた。


「王女様…良かったです。…王女様に何かあったら僕は…」


そして俯くトマス。


「トマス…」


「もう具合は大丈夫なのですか?」


メガネの青年が尋ねてくる。


「ええ、もうすっかり元気になったわ」


すると町長が最後に口を開いた。


「王女様。もしお身体が大丈夫のようでしたら野戦病院にいらして頂けますか?大事なお話があります」


「え?ええ…分かりました。今から伺いましょう」


「クラウディア様。1人で歩けますか?」


ユダが声を掛けてきた。


「ええ、大丈夫よ」


「まだ体調が良くないなら俺が姫さんをおぶってやるよ」


スヴェンの言葉に私は笑った。


「そうね、その時はお願いね」


そして…先程から私は気になることがあった。


「あの…リーシャは…?」


すると廊下の奥から声が聞こえ、リーシャが中に入ってきた


「はい、お呼びですか?クラウディア様」


「どうしたの?何故中に入ってこなかったの?」


「ええ…大勢で入ると室内がいっぱいになってしまいますし、皆さんクラウディア様とお話がしたいのではないかと思って遠慮していたのです」


そして、リーシャは笑顔で私を見て…次の瞬間、さっと目をそらした。


「…?」


振り向くと、ユダがじっとリーシャを見つめている姿がそこにあった。


…何もやましいことがなければ視線はそらさないはず…。


私の中で、リーシャに対する疑念が湧いてくるのを感じた―。




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