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終章 6

 私とアルベルトが手を取り合って城内に入ると、城中の者たちが集まっていた。その人数は凄いもので、恐らく数百人は集まっていただろう。

人々は左右に分かれて並んでおり、玉座へ続く道が空けられていた。


「あ、あの……」


今までの人生で、こんな経験が無かった私は思わず戸惑い……アルベルトを見上げた。


「大丈夫だ、何も臆することはない」


アルベルトがしっかりと私の手を握りしめる。


「は、はい……」


頷くと、私達は人々に見守られながら玉座へ向かってゆっくりと歩いた。

辺を見渡しながら進んでいると、私の見知った顔ぶれがある。


共に旅を続けてきたユダたち……騎士のハインリヒ。私の大切な侍女たち、それにトマスやザカリーの姿もあった。

彼らは皆、私を真剣な目で見つめている。特にユダやリーシャに至っては何故か涙目になっていた。


皆……。

そうだ、葵や倫……そして夫のいる世界も確かに掛け替えのない物だった。

けれどこの世界だって、私にとってはとても大切な場所なのだ。

あれほどシモンに元の世界に帰して欲しいと訴えたけれど……ここも私の居場所なのだ。


ユニコーンの言葉を思い出す。


<思いが強ければ、いつかその願いが叶うかもしれぬ>


そうだ。その言葉を信じるのだ。願いが強ければ、きっと叶うはずなのだ。

何故なら、この世界には日本にはない魔法が存在する世界なのだから。


気持ちを切り替えると、私は前を見据えた。眼前には2つの立派な肘掛け椅子が置かれている。


国王と……王妃の座る椅子だ。


私とアルベルトはゆっくりとした足取りで辿り着くと、並んで椅子に座った。


すると、たちまち拍手と歓声が沸き起こる。

その光景に私はただただ、圧倒されるばかりだった。


少しの間、アルベルトは周囲を見渡していたが……やがて立ち上がり、片手を上げた。

すると、ピタリと拍手と歓声は治まる。そしてアルベルトが声を張り上げた。


「皆の者! 聞くが良い! 長きに渡り、この城を手中に収めていた悪しき存在である宰相は偽物聖女と共に神の怒りを買った! 宰相と偽物聖女は身の程をわきまえずに神殿に収められた聖物に手を出したのだ!」


アルベルトの言葉に、一瞬周囲がざわつく。


「そのせいでこの国を守る神の逆鱗に触れてしまった! 神は悪心に変わり、我らを石に変え……この国を滅ぼそうとした! しかし、 ここにいる本物の聖女であるクラウディアが我らを滅亡の危機から救ったのだ!」


その演説に再び拍手と大歓声が沸き起こる。


『クラウディア様! 万歳!』

『我らの聖女様!!』


人々は口々に私を称え、その様子を面白そうに見つめているアルベルト。


「ア、アルベルト様……これはいくら何でもやり過ぎではありませんか?」


「何がやり過ぎだ? お前がこの国を救ったのだぞ? これくらい当然のことだ」


アルベルトは笑みを浮かべると、再び人々を制するために手を上げた。

彼の手の動きで、再び辺りは静かになる。


突然アルベルトが私の手を取り、立たせた。


「ア……アルベルト様?」


一体何をする気なのだろ?


するとアルベルトは私の肩を抱き寄せると声を張り上げた。


「皆の者! クラウディアを正式な我妻にすることを今、この場で宣言する! 聖女はこの国の国母となるのだ!」


アルベルトの宣言により、城内は今まで以上の歓声に包まれるのだった。


そして、この日……私は人々から認められた国母と聖女になった――

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