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第1章 32 幻の薬【エリクサー】

「ユダ、一体どうしたの?」


駆けつけてくるのがスヴェンかリーシャならまだしも、まさか私を良く思っていないユダが来るなんて…。


「ええ…クラウディア様に…お尋ねしたいことがあって…参りました」


ユダは余程慌て来たのか、荒い息を吐いている。


「尋ねたいこと…?」


首を傾げるとユダが頷いた。


「ええ、そうですっ!一体クラウディア様がお持ちしたあの薬は何なのですか?!患者に使用したら凄いことになりましたよ?!」


「薬…」


ユダが話しているのは恐らく【エリクサー】のことだろう。早速あの薬の効果の事を伝えにやってきたのだろう。



しかし…。


「何っ?!王女が持ってきた薬だって?!」


「何があったんだっ!すぐにその患者の元へ案内してくれっ!」


何を勘違いしたのか、眼鏡の青年とトマスと呼ばれた青年が同時に声を上げた。


「あ、あ…そうだな。話すよりも直接見てもらった方がいいかもしれない。みんな、こっちに来てくれっ!クラウディア様も宜しいですね?」


「ええ。勿論」


自分の目でも【エリクサー】の効果を確認してみなくては。


ユダの後を追って皆で患者の元へ向かっている途中、トマスが私を睨みつけてきた。


「王女、素人の貴女が持ってきた薬で患者にもし何かあったら…僕は一生貴女を許しませんからね」


「ええ…分かっています。責任は全て私が負います」


「…フン。やっぱり貴女は信用出来ない。そんな台詞を軽々しく口にするなんて」


そしてそれきりトマスは口を閉ざしてしまった。

そんな彼を見て私は思った。


やはり『クリーク』の町の人達との溝はそう簡単には埋まらないのだろうか…と―。




****



ユダが連れてきた傷病者のベッドの周囲には人だかりが出来ていた。


「皆、どいてくれ。クラウディア様がいらっしゃった」


人ごみをかき分けながらユダが私を傷病者のベッドの元へ案内する。

そしてその背後を眼鏡の青年とトマス、町長さんがついてきている。


人だかりの中心にいたのは1人の若い男性患者とリーシャにスヴェンだった。

男性は上半身裸だった。



「あ!クラウディア様っ!」

「姫さん!」


私の姿を見つけると2人が声を掛けてきた。


「姫さんっ!一体あの薬は何なんだっ?!」


「驚きましたよ!薬を塗った傍からあれほど酷かったこの方の怪我が一瞬で治ったのですから!」


スヴェンもリーシャも興奮を隠せない。


するとベッドに座っていた男性が私に深々と頭を下げてきた。


「王女様。貴女が持ってきてくれた薬のお陰で背中に受けた傷がすっかり綺麗になり…命拾いしました。ほ、本当に…ありがとうございます…」


青年は涙声でお礼を述べてきた。


「あっ!お前は…サムじゃないかっ!!」


私の背後で声を上げたのはトマスだった。


「あ!トマスッ!俺…助かったみたいだよっ!」


怪我人…サムはトマスの知り合いだったようだ。


「う、嘘だろう…?お前…死にかけていたのに…あんなに大怪我をして傷口も塞がらずに膿んでいたのに…?」


サムの背中は傷跡一つ見当たらないほどに完治していた。


「クラウディア様。我々は貴女に言われた通り、包帯を外して傷口を洗った後…荷物の中に入っていた軟膏を塗りました。するといきなり薬が光輝き…光が収まった後は完全に傷口が消えていたのです。一体あの薬は何なのですか?」


ユダが静かな声で尋ねてきた。


周囲にいた人々全員の目が私に集中する。


すると…。


「まさか…その薬は…幻の薬…【エリクサー】ではありませんか…?」


トマスが目を見開き、私に尋ねてきた―。



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