表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

337/380

第2章 210 地下牢の囚われ人

「あ……あれはユダさんの声ですよ」


トマスが囁くように言う。


「ええ、そのようね……近づいて様子を見ましょう」


「「はい」」


トマスとサムが返事をする。そこで私達は互いの腰にくくりつけた紐を握りしめながら、慎重に牢屋に近づく。すると、薄暗い牢屋の中にうずくまる人物がいた。

その人物は……


「ユダ……」


口の中で小さく呟く。薄暗いせいでよく見ることができないが、うずくまっているということはもしかすると……!


先程すれ違ったときの宰相の言葉が蘇る。


『あれだけ痛めつけても絶対に口を割らないんだからな……!』


「うぅ……う……」


ユダの声は酷く苦しげだった。早く牢屋を開けてユダを助けてあげなければ……!


「お願い、サム。鍵を開けられるかしら?」


傍らにいるはずのサムに声をかける。


「はい、クラウディア様」


そしてサムは鍵に近づくと、カチャカチャと外しにかかった。金属の触れ合う音が地下牢に響き、ユダが反応する。


「な……何だ!? この音は……うっ!」


すると、別の場所から声が聞こえてきた。


「ど、どうした……ユダ……先程の兵士は……ど、どうし……た……?」


途切れ途切れに聞こえるのはハインリヒの声だ。彼もまた酷く痛めつけられているのかもしれない。


ここで声をかければ、騒ぎになるかもしれない。取り敢えず、サムが鍵を開け終えるまでは様子を見ることにした。


カチャ!


その時、鍵が外れる音がした。


「開きました……クラウディア様」


「そう、良かったわ……」


その時――


「あ……ク、クラウディア様の姿が……」


トマスが声を震わせる。


「え?」


振り向くと、トマスの身体がうっすら見え始めている。薬の効果が切れたのだ。


「トマス、貴方の身体もよ!」


そしてサムの姿も見え始めていた。


「え……? ま、まさか……その声は……クラウディア様……!?」


暗闇にうずくまるユダが身動きした。


「な、何だって……? ク、クラウディア様……が……?」


ハインリヒの声が奥から聞こえる。


「ええ! そうよ! 私よ、みんなを助けに来たわ!」


私は素早くサムの紐を外すと頼んだ。


「おねがい、サム。隣の牢屋の鍵も開けてきて!」


「はい! クラウディア様!」


サムはすぐに隣の牢屋に移動して、解錠を始める。


「ユダ! 大丈夫なの!?」


私はトマスとともに、地下牢の扉を開けるとユダに駆け寄った。


「クラウディア様……ど、どうやってここに……うっ!」


苦しそうにユダが顔を歪める。薄暗い地下牢のせいで様子がよく分からないが、ユダは相当怪我を負わされている。


「そんな話は後よ、まずは怪我の手当をしないと」


急いでメッセンジャーバッグからエリクサーを取り出すと、すぐにユダの身体にふりかけた。


すると――


一瞬、ユダの身体が光に包まれて地下牢を明るく照らす。そして……


「クラウディア様! 申し訳ございません! 俺は貴女の護衛騎士でありながら……逆に助けてもらうなんて……!」


ユダは突然頭を下げてきた。


「そんなことはいいのよ。それよりもハインリヒが心配だわ。すぐにここを出ましょう」


「はい!」


私達三人は牢屋を出ると、次にハインリヒが閉じ込められている牢屋へと向かった。


「どう? サム……開けられそう?」


私は鍵を開けているサムに尋ねた。


「はい……もうすぐです……あ! 開きました!」


サムが扉を開けた。


「ハインリヒ! 大丈夫!」


「クラウディア……様……」


ハインリヒがうめき声を上げる。


「待っていて! すぐに治してあげるわ!」


エリクサーを掛けると、ユダと同様に彼の身体が光って瞬時に怪我が治る。


「こ、これは一体……」


怪我が治って呆然とするハインリヒにユダが自慢気に語る。


「これがクラウディア様の力ですよ。相変わらずお見事です……」


「まだザカリーが捕まっています! 彼はこの一番奥の牢屋に入れられています!」


ハインリヒが教えてくれた。


「すぐに行きましょう!」


私達は急いでザカリーの入れらている牢屋に向かった――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ