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第2章 209 地下牢へ続く廊下

 陽の光があまり届かない寒々しい北の塔……地下牢はその場所にあった。


「見張りがいませんね……」


先頭を歩くトマスが小声で呟く。地下牢へ続く通路には見張りの姿がどこにもいなかった。


「でも、地下には見張りがいるかもしれないわ。なるべく足音を立てないように歩かなくてはいけないわね。地下は特に足音が響くから」


一応私達は足音が聞こえにくい靴を履いている。城に潜入するために、それぞれ靴を履き替えてきたのだ。


「そう言えば、もし地下牢のすぐ側に見張りがいたらどうするのです?」


サムが心配そうに尋ねてきた。


「それなら大丈夫よ。私が錬金術で作り上げた強力な睡眠薬があるから」


ただこれには欠点がある。相手の身体に直接液体をかけなければ睡眠薬の効果が発揮されないのだ。


そのためにも、自分たちの姿が見えなくなるようにする必要があった。ただ、バレないように近づくことが出来るか……不安は尽きない。


今の私の姿が見えていれば、恐らく青ざめていたことだろう。さぞかしトマスやサムを不安にさせていたに違いない。


自分の姿が見えなくて本当に良かった……


心の中で安堵のため息をつきながら、私達は地下牢を目指した。



薄暗く、冷たい石畳の階段を注意深く降りていくと徐々に当たりの空気はひんやりとしてくる。

私達は一言も言葉をかわさずに、慎重に階段を降りていた。互いの身体が見えないことがたまらなく不安だ。唯一自分たちを結びつけている紐を握りしめることで、なんとか心を落ち着かせることが出来る。


ついに階段を降りきると、正面に真っ直ぐ伸びる冷たい石の廊下が見える。右側は壁になっており、牢屋は左側にズラリと並んでいた。


そして、一定の距離を開けて牢屋を見張る四人の兵士の姿があった。


「やはり、見張りが立っていますね」


ささやき声でトマスが声をかけてくる。


「ええ、そうね……まずは一番手前にいる兵士から眠らせましょう」


錬金術で作り上げたこの睡眠薬は即効性だ。液体が肌にかかれば、瞬時に眠りに落ちる。

恐らく手前の門番が意識を失った段階で、全員がこちらに駆けつけてくるだろう。ほぼ同時に意識を失わさなければ……計画は失敗だ。



「トマス、サム。いるわよね?」


私は二人を結びつけている紐を引っ張りあった。


「はい、います」

「います」


予め、ポケットに忍ばせておいた睡眠薬入りの瓶を手探りで取り出すと二人に声をかけた。


「あの兵士に近づきましょう。なるべく足音を立てないようにね」


「「はい」」


そして私達は慎重に、足音を立てないように……ゆっくりと兵士に近づいた。


「ん……?」


睡眠薬を掛けられるまでの距離に兵士に近づくと、気配に気付いたのか怪訝そうにこちらを振り向く。

そこへすかさず、兵士の左手首に睡眠薬を垂らした。


「うわ! な、何だ!? あ……」


一瞬、驚いた兵士は次の瞬間崩れ落ちるように派手な音を立てて石畳に倒れた。


「何だ!!」

「おい! どうした!」

「何事だ!」


慌てた様子で三人の兵士たちが駆けよってくる。


お願い! どうかうまくいきますように……!

私は祈るような気持で、彼らの身体に触れないように慎重に睡眠薬をかけていく。


すると物言わずに次々と兵士たちは重なるように崩れ……全員が床の上に伸びてしまった。


「はぁ……はぁ……う、うまくいったわ……」


心臓は緊張のあまり、早鐘を打っている。


「大丈夫ですか? クラウディア様」


姿の見えないトマスが声を掛けてくる。その声は心配そうに聞こえた。


「え、ええ……大丈夫よ」


その時――


「一体……何が起こっているんだ……?」


聞き覚えのある声が牢屋の中から聞こえてきた――






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