第2章 207 作戦開始
私は不安な気持を抱えたまま、馬車に揺られていた。
もし、私の運命が……結末が回帰前と変わりが無ければ、最終的に違う罪状で捕らえられ……再び断頭台に送られてしまうかもしれないのだ。
仮にこの世界で死んでしまったとしたら……再び私は日本人に生まれ変わることが出来るのだろうか? 橋本恵として……
「……クラウディア様。大丈夫ですか?」
そこまで考えていた時、トマスに声をかけられてハッとした。彼は心配そうな表情で私を見つめていた。
「ええ、大丈夫よ。トマス」
「顔色があまり良くありませんよ?」
「そう? 少し緊張しているからかもしれないわね。いくら姿を消して城に侵入しても……やっぱりね。失敗は許されないから」
「クラウディア様……今までだってうまくいったのです。今度だって、きっと大丈夫ですよ」
捕まれば、断頭台に送られてしまうかもしれないということは伏せて置かなければ。もし、私が捕まれば……ここにいる全員が捕まる可能性がある。
それだけではない。私の仲間とみなされ、最悪の場合……
恐ろしい考えを振り払うかのように、首を振るとトマスに声を掛けた。
「ごめんなさい。そうよね? 弱気な発言は駄目よね? 大丈夫。きっとうまくいくわ」
そして私は荷馬車の上から顔をのぞかせ、遠くにある城を見つめた。
皆……待っていて。必ず助け出すから――
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「クラウディア様、そろそろ城が近づいてきましたよ」
御者を務めていた青年が声をかけてきた。
「ありがとう、分かったわ」
返事をすると、私はトマスとサムに【クリア】の液体が入った小瓶を三本ず手渡した。
「実際に効果がどれくらい続くか分からないけれども、一本で少なくとも一時間は効果が続くと思うわ。後は……はぐれないように私たちの身体を紐で結びつけましょう」
持参してきたメッセンジャーバッグから長い紐を取り出した。
「え? ええ……いいですけど?」
トマスが怪訝そうに返事をする。
私の考えが正しければ……【クリア】を飲むと、着ている服まで消える。互いの姿を消す前に紐で結びつけておけば、液体を飲んだときに結びつけた紐も消えるのではないだろうか?
「では……」
トマス、私、そしてサムの並び順に紐で互いの身体を結びつけた。
「準備はできたわね」
私の言葉にその場にいた全員が頷く。
「それでは……【クリア】を飲みましょう」
私の言葉に合わせて、三人同時に液体を飲み干した――
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「そこの荷馬車、止まれ! ここは王宮の裏口へ続く出入り口だぞ!」
「そうだ! 止まれ!」
門を警備していたふたりの兵士が乱暴な口調で馬車を止めた。
「すみません。我々はクリーニングの行商人です。城の洗濯物を取りに来ました」
男性御者が返事をする。
「フン、本当にそうか? 何か怪しいものを運んでいたりしていないだろうな? 中を改めさせろ!」
ひとりの兵士が荷馬車に近づき乱暴に幌を上げた。
中には三人の男が座っている。
「……全員、男か。それにしては荷台が空っぽじゃないか」
胡散臭そうな目つきで荷馬車を眺める兵士。
「ええ、当然です。洗濯物を取りに来ただけですからね」
一人の若者が答えた。
「……まぁいい。これなら隠れる場所もないようだしな……いいだろう、通れ」
兵士が馬車から離れると、御者は再び荷馬車を走らせ始めた。
「……うまくいきましたね。クラウディア様」
何も見えない空間からトマスの声が聞こえてくる。
「ええ、そうね。私達の姿は完全に見えていないし……それに……」
私は目に見えない紐を握りしめた。
「私達を結びつけている紐もうまい具合に消えているもの」
「そうですね」
姿の見えないサムが返事をする。
「待っていて……皆。必ず助け出してみせるから」
私は自分自身に強く言い聞かせた――




