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第2章 206 作戦

 翌日―― 


「クラウディア様、荷馬車と着替えを用意してまいりました」


朝食後、救済院の人々とホールで過ごしていると町に出ていた人々が戻ってきた。


「ありがとう、ご苦労さまでした」


実はポケットに忍ばせておいた僅かなアクセサリーを渡して現金に変えて貰い、ふたり分の荷馬車と変装用の衣装を用意してもらうように頼んでおいたのだ。


着替えを受け取り、私とトマスは早速着替えてくることにした。



**



「どうですか? 皆さん」


着替えを終えた私は人々の前に姿を見せた。


「おお! 良くお似合いです!」

「これならクラウディア様と分からないでしょう」

「少年としか思えません!」


今の私は肩先迄の茶色のストレートヘアのかつらをかぶり、男性用のジャケットにボトムス姿をしている。


「あ、あの~……僕はいかがでしょう?」


私の隣に立つトマスが恥ずかしそうに尋ねてきた。彼は私とは逆に茶色の長い髪のかつら姿に、長いローブ姿をしている。

あまり背の高くないトマスには、女装してもらうことにしたのだ。


「ええ。トマスも良く似合っているわ」


こういうのを褒めても良いのか、少し迷いながらも私はトマスに声を掛けた。何しろ、本人は最後まで女装することに抵抗していたからだ。


しかし……


「本当ですか? ありがとうございます!」


トマスは嬉しそうに返事をした。案外、自分の女装姿が気に入った様子にみえた。

そこで私は早速集まっている人々に声を掛けた。


「それではもう一度、計画の確認を行いましょう。いいですか、皆さん」


私の言葉に一斉に頷く人々。


「【クリア】を飲み、城の中に潜入するのは私とトマス。それにサムの三人です。それ以外に五人、同行してください。その内の二人は御者で、残る三人はクリーニング業者を装って洗濯物を受け取る役割をして時間稼ぎをして下さい」


本来なら行商人のふりをして城に潜入したかったのだが、ここ救済院はとても貧しい。城に運べるような品物を用意することが出来なかったのだ。

そこで苦肉の策として、クリーニング業者を装うことにしたのである。


これなら空っぽの荷馬車で城に入っても恐らく疑われることは無いだろう。


城の中にある大掛かりな洗濯物はリネンは専門業者に委託していることは知っている。それに洗濯物の回収作業は時間がかかるので、色々な意味で都合が良かった。


その後五人の若者を選別し、いよいよ私たちは城へ向けて出発することになった。




****


「どうか、お気をつけて。クラウディア様」


荷馬車に乗り込むと、ペトロが声を掛けてきた。


「ええ。必ず大切な仲間を助け出してきます」


不安な気持ちを押し殺しながら、私は笑顔で返事をした。


「大丈夫です。城の構造は大体僕の頭に入っていますから」


「俺に破れない鍵はありませんよ」


トマスとサムが何とも頼もしいことを言ってくれる。


「ありがとう、ふたりとも。それでは行きましょう」


『はい!!』


馬車の中の全員が一斉に返事をした。


そして、私達を乗せた荷馬車は『エデル』の城を目指して走り出した――

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