第2章 205 新しい仲間
テーブルの上には救済院の男性がはがしてきた二枚の手配書が乗せられている。
「これが、私とトマスの指名手配書なのね……」
「悔しいですが……中々良く描けていますね」
私の言葉にトマスが頷く。
それぞれの手配書には私とトマスにそっくりな似顔絵が描かれている。そして下の方には懸賞金が記されていた。
私の手配書には金貨300枚、トマスの手配書には金貨100枚と記されている。
「金貨100枚なんて、我々が一生働いても貯められる金額ではありません。ましてや金貨300枚など……これでは人々が血眼になって、おふたりを探し出そうと躍起になるでしょう」
ペトロが眉をひそめる。
「それにしても宰相は随分大胆な真似をするな」
「自分たちのほうが詐欺師のくせに……」
「懸賞金にこんなに大金を掛けられるなんて、どれだけ城は裕福なのだ?」
「そうだ! こんなに余裕があるなら、もっと俺たちのような者たちに援助してくれてもいいはずだ」
救済院の人々は忌々しげに手配書を見つめている。
「それにしても困ったことになりましたな。これでは迂闊にここを出ることもむずかしいですね」
ペトロが心配そうに声を掛けてきた。
「ええ、そうですね……」
手配書の人相書きは本当に良く描かれていた。このまま町中へ出れば間違いなく即刻捕まってしまうだろう。
現に手配書には人だかりが出来ていたそうだ。
私は今更ながら、迂闊にここを訪ねたことを後悔していた。まさか自分が指名手配されるなど考えてもいなかったので、顔を隠すこともせずに救済院を訪れてしまっていたからだ。
もしかすると、町の人たちに私がここにいることを知られてしまった可能性もある。
そのことを考えると、ゾッとした。
「まず、城へ向かうには僕もクラウディア様も変装する必要がありますね。ところでクラウディア様、どのような方法で城へ潜入するつもりだったのですか?」
不安な心を押し殺していると、不意にトマスが問いかけてきた。
「城には様々な行商人が出入りしているでしょう? その行商人を装って、荷馬車で城の通用口から城の内部に潜入しようと思っていたの。予め【クリア】を飲んでおけば姿を消したまま中に入れるでしょう?」
「なるほど、確かにそれなら潜入出来ますね」
「ただ、薬の効果がどれくらい続くか分からないから継続的に飲み続けたほうがいいわ。ただ、一番問題なのは見つけ出せても鍵を開けることが……無理やり壊すしか無いかもしれないわ」
すると1人の青年が突然手を上げた。
「クラウディア様、それなら俺に任せてください!」
「あなたは?」
手を上げたのは赤毛に茶色い瞳の青年だった。
「はい、俺の名前はサムといいます。俺は針金1本でどんな鍵でも開けることが出来ますよ。お恥ずかしながら以前、こそ泥のような真似をして生計を立てていたものですから。だけど、悪いことは出来ないですね。逃げるのに失敗して足に大怪我を負って二度と歩けない身体になってしまい、倒れていたところをこの救済院に運び込まれたんですよ」
恥ずかしそうにサムは頭を掻く。
「こんな身体になったのは自業自得と思い、俺は深く反省しました。万一、奇跡が起こって再び歩けるようになったら心を入れ替えて真面目に生きようと自分に誓いました。そして、クラウディア様。あなたが現れて、俺の足を治してくれたのです。どうか俺を連れて行って下さい。必ずお役に立ちますから」
「そうね……ならサム。あなたにお願いします。私に力を貸して下さい」
「はい、勿論です!」
サムは笑顔で頷いた――




