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第2章 191 宰相の企み

「シモンさん、……あなたは一体何者なのですか?」


城へ戻る馬車の中、私は向かい側に座るシモンに尋ねた。


「クラウディア様、私のことはどうぞ呼び捨てで呼んで下さい。それに敬語も結構ですよ。何しろ貴女は特別な方なのですから」


「私は別に特別では無いわ。むしろシモン、あなたのほうが特別に思えるわ」


じっと私はシモンを見つめた。いくら神官で、神聖力があるからと言っても普通の人間が時を操れることなど出来るとは思えなかった。


「私は神殿に仕える神官ですよ。ただ少し人とは違った神聖力があるだけです」


「時を操ることの出来る神官がこの世にいるとは思えないわ。そんなの……この世の摂理に背いている……」


自分がこの世界に再び回帰してしまったせいだろうか? 時を操るなど、もはや神の領域にしか思えなかった。


「確かに神聖力には限りがあるかもしれませんが……その力を最大限に引き伸ばすことだって可能なのですよ。『賢者の石』さえあれば」


賢者の石……! 何故彼がそのことを知っているのだろう? 賢者の石を知る存在は本当に限られた極一部の者たちばかりのはずなのに?


「それにしても、神殿はいつまであの宰相の言いなりになるつもりなんでしょうね?クラウディア様はご存知でしたか? アルベルト様が王位を継いでから、あの方は神殿の権力を弱めようと働きかけていたのです」


そんな話は初耳だ。


「そうなのですか? でも一体何故です?」


「それは全て宰相の存在のせいですよ。大昔からこの国の神殿は王族でも言いなりに出来ないほどに権力を握っていました。そして宰相は代々優れた神官を排出してきた名門の家系なのです」


「宰相が神官の家系だということは聞かされていたわ」


けれど、宰相は神官にはならなかった……一体何故?

するとシモンがまるで私の心の内を見透かしたかのように語り始めた。


「クラウディア様は何故、リシュリー宰相が神官にならなかったのかご存知ですか?」


「い、いえ? 知りません」


アルベルトからもそのような話を聞かされたこともない。


「それは彼には神聖力が全く備わっていないからですよ。だから彼は神官にはならずに、宰相になったのです。神殿の力を利用してね」


「そうだったのですか?」


言われてみれば宰相には神聖力があるようには思えなかった。


「けれど、宰相は神官になれなかったにも関わらず神殿に対して権力を振るっています。それは彼が代々優秀な神官を排出してきた名門だったからです」


シモンの話は段々熱を帯びてくる。


「しかし、いつまでも神殿は神聖力を持たない人物の言うことを聞くほど愚かではない。宰相もそのことに薄々気づいていた……だからこそ必要だったのですよ。『聖なる巫女』……いわゆる聖女の存在が」


「!」


ま、まさか……


「あのカチュアという女性は絶対聖女だとは思えません。強い神聖力を持つ者には分かります。だからこそ、自分が聖女であると周りに誇示する必要が合ったわけです。なのに、ことごとくそれをクラウディア様に潰されてしまった……」


私はその言葉にゴクリと息を呑む。


「クラウディア様。どうぞお気をつけ下さい。彼らは焦っています。何か仕掛けてくるかもしれませんので、決して油断されてはいけません。これは私からの忠告です」


シモンは真剣な表情で私を見つめてきた――






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