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第2章 185 演説

 救済院に到着すると、既に宰相とカチュアの前には大勢の人々が集まっていた。

カチュアはカゴを手にしていた。


「さぁ、これから我が国の『聖なる巫女』がそなた達に奇跡を与えてくださるぞ!」


声高々に人々に訴える宰相。

彼らは皆、カチュアを拝むかのように周囲に集まっている。人々の身なりは皆粗末なもので、中には松葉杖をついた小さな子供までいる。

そんな彼らの前で、豪華な白装束に身を包んだカチュアは一種、異様に見えた。


「私が来たからには安心して下さい。必ず皆さんの生まれ持った病を治してさしあげます」


カチュアは自愛たっぷりの笑みを浮かべて人々に語りかけている。


「我が巫女殿は随分自信たっぷりのようですね」


その様子を見たシモンはまるで他人事のような態度を取っている。


「いいのですか? あなたは神官ですよね? 聖なる巫女に仕える態度には見えませんけど?」


「ええ、別に良いではありません。私のような神官がいても」


「確かに宰相の前で堂々と笑う神官など、初めてだ」


シモンの言葉にハインリヒが頷く。


その時――


「おお、来たようですね。クラウディア様。てっきり逃げたのではないかと思っておりましたぞ?」


宰相が私達に気付き、嫌味を込めた目でこちらを見る。


「ええ、何故逃げなくてはならないのですか?」


「ではクラウディア様もいらしたことですし、勝負を始めませんか?」


カチュアが私に声を掛けてきた。


「いいでしょう」


私は頷く。


「フフフ……いつまでその強気な態度をとっていられるか見ものですな。ではまず我々が先に二十人治療を行います。その後、クラウディア様に治療を行って頂きましょう。宜しいですかな?」


「ええ、私は構いません」


「ほう……すごい自信ですね。これは楽しみだ」


笑う宰相。そして再び、周囲に集まる人々に視線を移した。


「それでは今から治療を施していきます。これは私が聖地から取ってきた奇跡の果実です。これを食べれば、たちどころに健康になれます」


カチュアはカゴから黄金に輝く果実を取り出した。すると人々からざわめきがおこる。


「素晴らしい!」

「本当に光り輝いている」

「あんな果実がこの世にあるなんて……」


その様子を見ていると、背後から不安そうにユダが話しかけてきた。


「クラウディア様、本当に大丈夫なのでしょうか?」


見ると、ハインリヒもトマスもザカリーも皆不安そうな目で私を見ている。彼らは私が『黄金の果実』を持っていることを知らないからだ。


「大丈夫よ。私を信じて。あの人達には決して負けないわ」


「はい! 僕はクラウディア様を信じていますから」


トマスが頷く。


「俺もです」

「当然私もです」


続いてザカリーにハインリヒも頷く。


「では、クラウディア様。まずは巫女殿のお手並みを拝見しましょうか?」


シモンが私に声を掛ける。


「ええ。そうですね」


私はうなずくと、カチュアをじっと見つめた――





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