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第2章 178 黄金の果実の効果

「アルベルト様、しっかりして下さい!」


彼は声をかけるも、苦しそうに唸るだけで返事をしない。


「アルベルト様……?」


その時、アルベルトの背中に回した手に生暖かいヌルリとしたものを感じてハッとなった。


「え……?」


自分の手を見てギョッとした。手に真っ赤な血がついてきたからだ。


「ア……アルベルト……さ……ま……?」


何とか彼の身体を支えながら、床にうつ伏せにした時――


「ヒッ!!」


思わず悲鳴を上げそうになってしまた。アルベルトの背中はまるで何か鋭い刃物で切られたかのように切り裂かれ、真っ赤な血が着ている服に染み込んでいるのだ。


「アルベルト様!」


このままでは危険だ。アルベルトの身体からは今も止まること無く血が流れ出ている。


「何とか……何とかしないと! 【エリクサー】を使って……!」


その時、ふと私の目にアルベルトが持ってきた黄金の果実が目に入った。


「そうだわ……黄金の果実……これが本物だと検証するのに丁度いいわ。もし駄目でも【エリクサー】を使えばいいのだから」


急いでキャビネットから果物ナイフを取ってくると、私は黄金の果実を切り分け、乳鉢ですりつぶしてアルベルトの口元に運ぶ。


「アルベルト様、飲み込んで下さい!」


「……」


けれどアルベルトは意識を失っているのか、全く動かない。顔は血の気を失ってか真っ白になっている。


「アルベルト様……」


どうしよう、このままでは死ぬのは目に見えている。

もう一刻の猶予もならない。私はすりつぶした黄金の果実を口に含むと、アルベルトに口移しで飲ませた。


お願い……! 飲んで、アルベルト!


すると……


――ゴクン


アルベルトの喉が鳴り、黄金の果実の汁を飲み干す気配を感じた。良かった……!

飲んでくれた……!


私は残りの果実も全て飲ませると、ようやくアルベルトの顔に血の気が戻ってきた。そして流れ出ていた血もいつの間にか止まっている。


「アルベルト様……」


声を掛けても、返事はない。彼の怪我の具合を確認したかった私はまだ意識の戻らないアルベルトの上半身をそっと脱がせてみた。


「……傷が……治っている……」


アルベルトの背中にあった大きな傷は、まるで初めから無かったかのように傷跡すら残っていなかった。


「すごいわ……まるで【エリクサー】と同じ効果だわ……」


その時……


「う……」


アルベルトが小さい声で唸り、ゆっくりと目を開けた。


「ク……クラウディア……?」


「アルベルト様! 気が付かれたのですね!?」


覗き込むように彼を見ると、アルベルトは戸惑ったように頷く。


「あ……ああ」


アルベルトはゆっくりと床の上から起き上がり……自分が上半身裸だったことに気づいたようだ。


「……」


暫く自分の上半身を見つめていたアルベルトは次に私に視線を移した。

その目はまるで「お前が脱がしたのか?」と尋ねているように思えた。


「あ、あの……も、申し訳ございません! アルベルト様の傷の具合を確認したかったので……勝手に脱がしてしまいました!」


すると、フッとアルベルトは笑い……突然彼の腕が伸びてきた。


次の瞬間。


私は彼の胸に抱き寄せられていた――

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