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第2章 177 アルベルトの行方

「ま、まさか……アルベルト様の身に……?」


顔から血の気が引くのが分かった。


「い、いえ! そういう意味ではありません! 実は……まだ、その……アルベルト様の行方が分からないのです……」


「え? そんな……!」


もう二十四時間近く行方不明になっているのに?


「我々は引き続き捜索を行います。そのことをお伝えしたくて、何度もクラウディア様の元に足を運んでいたのです」


ハインリヒが教えてくれた。


「そうだったの……ごめんなさい。皆に心配かけさせてしまったわね……」


「いえ。こちらこそ申し訳ございませんでした。まさか体調が優れなかったとは知らずに……でもまだ随分お疲れなのではありませんか?」


マヌエラが心配そうに尋ねてくる。


「そう? そんなことないわ。もう大丈夫よ」


本当は錬金術を駆使した為に、疲労困憊ではあったがこれから聖地に入らなければならない。自分の体調が優れないことは内緒にしておかなければ。


「そうでしょうか……」


尚もマヌエラは私をじっと見つめてくる。


「ええ、本当に大丈夫だから。マヌエラ、リーシャ、エバ。あなた達はもう下がっていいわよ。食事も今夜はいらないわ。あまり食欲が無いから」


そして次に私はユダとハインリヒに視線を移した。


「ユダ、ハインリヒ。あなた達には悪いけれど、引続きアルベルト様の捜索を行ってくれる」


「はい」

「承知致しました」



**



全員が部屋の前から去っていくと、すぐに私は聖地に出かける準備を始めた。早く行かなければ完全に夜になってしまう。


「恐らく今もまだ聖地には見張りが立っているはずだわ……だけど、この薬を飲めば……」


私はポケットに忍ばせた小瓶にそっと触れる。急がないと……



そのとき――


ガタンッ!!


突然バルコニーの方から大きな音が響き渡った。


「な、何!?」


恐る恐るバルコニーへ続く窓に近づき、覗き込んで私は息を呑んだ。


「え? あれは何かしら?」


バルコニーには大きな麻袋が無造作に置かれていた。

ま、まさか……!


慌てて駆け寄り、私はすぐに麻袋の紐を解いた。すると、中からは黄金の果実が沢山入っている。


「これは……もしかして黄金の果実? で、でも一体何故……」


その時――


「クラウディア」


近くで声が聞こえ、慌てて振り向くと驚いたことにアルベルトが立っていた。


「ア、アルベルト様!? い、一体これは……」


すると、アルベルトは素早く私に近付くと口を抑えた。


「静かに。とりあえず中に入ろう」



「アルベルト様、一体何があったのですか? 何故、突然バルコニーに現れたのですか?」


アルベルトを室内に入れると、すぐに私は尋ねた。


するとアルベルトから驚きの言葉が飛び出した。


「お前がつけている指輪があるだろう?」


「え、ええ」


私は左手薬指にはめられた白い石のついた指輪に視線を移す。アルベルトは何も言わないけれども、恐らくこれは【賢者の石】だ。


「自分と……同じ石を身につけた者のことを思えば……その相手のところへ引き寄せてくれるのだ……もっとも……ある程度まで相手に近付く必要がある……が……」


説明するアルベルトのようすがおかしい。それによく見ると顔が苦痛に歪んでいる。


「……アルベルト様……?」


「だ……だから俺はお前の元に飛んで……」


突然アルベルトが私の身体に寄りかかってきた。


「アルベルト様!?」


そして、そのままズルズルと床に崩れ落ちていった――

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