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第2章 159 ユダの謝罪

 翌日――


 私達は貧民街に行く為に宰相に見つからないようにひっそりと城門前に集まった。仮に宰相に見つかってしまった場合、厄介ごとになるのは目に見えていたからだ。


 そして集まったメンバーの中にはリーシャにマヌエラ、それにエバの姿があった。彼女たちは町娘のようなブラウスにエプロンドレス姿である。


 リーシャはともかく、マヌエラもエバも貴族出身である。そんな彼女達が貧民街に行くのは好ましくないと思い、声を掛けなかったのにも関わらず来てくれたことに驚いた。


「まさか貴女達まで、炊き出しについて来てくれるとは思わなかったわ」


 彼女達に声を掛けるとマヌエラが首を振った。


「何を仰るのですか? 私たちはクラウディア様に仕えている身です。お供するのは当然のことではありませんか」


「そうです。何処へ行くにも私はクラウディア様と一緒ですから」


「料理の経験はありませんが、どうかお手伝いさせて下さい」


 リーシャ、エバが交互に訴えて来た。


「ありがとう、人数は少しでも多い方が助かるから嬉しいわ。でも貧民街は本当に貧しい場所だからショックを受けるかもしれないけれど大丈夫かしら?」

 

 私はマヌエラとエバに尋ねた。


「はい、大丈夫です。むしろ貧民街の人達がどのような生活を強いられていたのかを知っておかなければいけないと思っております」


「私もマヌエラ様と同じ考えです」


 二人は何とも頼もしい返事をしてくれる。


「クラウディア様、出発の準備が整いました」


 そこへマント姿のユダが駆け寄って来た。


「ありがとう、ユダ。それでは行きましょうか?」


するとユダが怪訝そうに眉をしかめて、指さした。


「ですが、本当によろしいのですか? あのように貧しい馬車を使うなど……」


けれど、その馬車は私がこの国にやって来たときと大差ない代物だった。


「そう? でも以前も似たような馬車だったけど‥‥…」


そこまで言いかけて、口を閉ざした。何故ならユダの表情が悲しげだったからだ。


「どうしたの? ユダ」


「い、いえ……自分が許せなくて……」


「え? 何がなの?」


すると、突然ユダが謝ってきた。


「申し訳ございません! クラウディア様をお迎えに上がったあの馬車は……本当にお粗末なものでした! 宰相にあの馬車を使うように命じられたのです! 相手は敵国の姫なのだから、この程度の馬車でいいと言われて……!」


「いいのよ、そんな事気にしなくても」


「いいえ、少しも良くありません! 城には上等の馬車がありました。無理やり強奪してでも、その馬車でお迎えにあがるべきでした! あの当時の自分を今ほど恥じていることはありません!」


自分に怒りながら、物騒なことを口走る謝罪するユダの様子は少し異様だった。彼を見るマヌエラ達も奇異の目を向けている。


「も、もう謝罪の言葉はいいから出発しましょう。ほら、皆が待っているわ」


私たちから少し離れた先には、ハインリヒたちが待機している。


「はい、そうですね。では出発いたしましょう」


ようやくユダは吹っ切れたのか、笑みを浮かべた。


「ええ。行きましょう」


そして私達を乗せた馬車は出発した。


まずは城下町で炊き出しの食材を買う為に――



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