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第2章 158 民達の為に

 あの後私達はトマスとザカリーの元を訪ね、二人から炊き出しの付き添いをしてもらえることを承諾してもらった。

 さらに、供に旅をしたヤコブ達も賛同してくれることになった――




****


「クラウディア、聞いたよ。十人以上の供達が炊き出しに行くことになったそうだな」


 夕食の席でアルベルトが尋ねて来た。


「はい、そうです。彼らはみんな信用出来る人達ですから」


 私の話にワインを飲んでいたアルベルトがフッと笑った。


「何だか……随分楽しそうに見えますね?」


「楽しい? 当然だ。何しろお前がこの国の者達の為に積極的に動いてくれているのだから。こんなことを言えば気にしてしまうかもしれないが……。民達の間では、敵対国だった国の王女を妻にすることを良く思っていないという話が俺の耳にまで伝わっているからな」


「ええ。存じております」


「お前に負の感情を抱いているというのに、民達を助けようとしている心根が嬉しくてつい、笑ってしまったのだ」


 アルベルトはワインをテーブルに置くと、頬杖をついて私をじっと見つめて来た。

その目はとても優し気で……そして、何処か懐かしかった。 

 そんなアルベルトの視線がくすぐったく感じ、視線を逸らすと食事を口に運んだ。


「それで? いつ炊き出しに行くつもりだ?」


「はい、明日行きます」


 するとアルベルトが驚いた様に目を見開いた。


「何だって? いきなり翌日に行くつもりか?」


「そうです。いつ、リシュリー宰相から二回目の勝負の話が出て来るか分かりませんし、何よりも貧民街に住む人々の状況はかなりひっ迫しておりました。早急に対応するべきです」


「そうか……。だが準備はどうする? 城の厨房に頼んであるのか?」


「いいえ、頼んでおりません。炊き出しに使う食材も材料も明日、王都の店で調達するつもりですから」


 私はどうしても城の厨房は利用したく無かった。すると案の定、アルベルトが尋ねて来た。


「何故だ? 厨房に命じて鍋ごと用意して貰えば済む話ではないか?」


「アルベルト様……それは無理です。私はこの城で、自分がどれだけ良く思われていないか知っておりますから」


「クラウディア……」


「もし私が厨房に頼むものなら、すぐにリシュリー宰相の耳に入るとは思えませんか?」


「確かにそれは言えるが……」


「それに王都で買い物をすることによってこの国の人々の生活が見えてきますし、お金を落とせば彼らの懐も潤いますよね? ご安心下さい。私は決して自分の名前も身分も明かすつもりはありませんから」


「確かにそれは言えるな……。本来なら俺も正体を隠してついていきたいところだが、執務があるので無理なのだ」


 その言葉に驚いた。


「何を仰っているのですか? アルベルト様にそのようなこと、させるわけにはまいりません。どうかお気になさらないで下さい」


「…‥分かった。その代わり資金は全て用意しよう。明日は宜しく頼む」


「はい、お任せください」


 私はその言葉に頷いた——

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