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第2章 150 揉め事

「クラウディア様見て下さい。あの露店で素敵なアクセサリーが売られていますよ!見に行きませんか?」

 

 大国の城下町に初めて来たリーシャはすっかりお祭りに興奮していた。


「そうね、行ってみようかしら」


 露天に向かいながら黙って後ろについてきているユダとハインリヒに視線を送る。


「どうかしましたか?」

「何でしょう。クラウディア様」


 ユダとハインリヒが首を傾げる。


「いえ、二人に申し訳ないと思って」


「何故、申し訳ないと思うのですか?」


 ユダが尋ねてきた。


「だって男性の貴方達には女性の買い物に付き合うのは退屈じゃないかと思ったからよ」


 つい、前世の時代を思い出して口にしてしまった。するとハインリヒが目を見張る。


「本気でそのようなことを仰っておられるのですか? 護衛騎士に気を配る方は初めてですよ」


「それは当然ですよ。クラウディア様は誰にでも分け隔てなく気配りが出来る素敵な女性なのですから」


 ユダが大真面目な顔で頷く。


「そうですよね。クラウディア様は本当にご立派な方です。私ももっと見習わないと」


「ちょ、ちょっと二人共一体何を言ってるの?」


 リーシャとユダの言葉に思わず赤面してしまった。


「なるほど……だから……なのか……」


 ハインリヒが口の中で何やらブツブツ呟いているけれども声が小さすぎて聞こえない。




 綺麗な石がはめ込まれたブローチが並べられている露店の前にやってくると、すぐに中年女性が笑顔を向けてくる。

 女性は一瞬私の方をチラリと見た後……リーシャに視線を移すと声を掛けてきた。


「いらっしゃいませ、お嬢さん。どのアクセサリーがお好みですか?どうぞお手にとって見て下さい」


「そうですね〜。どれも素敵ですね〜」


 アクセサリー好きなリーシャは真剣に品物を選んでいる。私もテーブルの上に並んでいる品物をじっと見つめ……一つ、気になるアクセサリーが目に止まった。


 ウサギのデザインのブローチで目にはめ込まれた赤い石がまるで「賢者の石」の様に見える。

 よく見てみようと、商品に手を伸ばしたとき……。


「ちょっと! 勝手に商品に手を触れないで貰えないかしら?」


 女性店員が突然鋭い目で睨みつけてきた。


「え? あ、す、すみません!」


 手にとって見て下さいと言ったのは気のせいだったのだろうか?すると次に女性店主は耳を疑うような台詞を口にした。


「あんたはこのお嬢さんの付き添いなんだろう?お金も持ってい無さそうだし……たまにいるんだよね。買うフリをして、盗んでいく輩がさ。どうせ路地裏の者なんだろう?あんた達のせいでどれだけ被害を被ってきたか分かってるのかい!?」


「え……?」


 すると次の瞬間――


「何だと! 女! もう一度言ってみろ!」

「一体どの口がそのような台詞を吐く!」


 ユダとハインリヒが同時に店主を怒鳴りつけてきた。


「ひいっ! な、何なんですか! あ、貴方達は!」


 店主は顔を真っ青にさせて震えている。


「この店は人の身なりで判断すると言うのか⁉」


「よくもこの方を侮辱したな! どうやら痛い目に遭いたいようだな?」


 ハインリヒもユダも今にも剣を抜きそうな雰囲気だ。


「そうですよ! 謝って下さい! こちらの方は、この国の……ムゴッ!」


 私は咄嗟にリーシャの口を手で塞ぐと、店主に謝った。


「申し訳ございません、立場を弁えずに品物に触れようとして、失礼いたしました! 皆さん、行きましょう!」


 そして私はまだ何か言いたげな三人を露店から連れ出した――




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