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第2章 144 アルベルトの推測

 2人で執務室に戻ってくるとアルベルトが声を掛けてきた。


「クラウディア、まだ少し話が出来るか?」


「ええ、大丈夫です」


「そうか、ならそこのソファに掛けてくれ」


 アルベルトから部屋の中央に置かれたソファを勧められる。


「はい」


 おとなしく座ると、向かい側にアルベルトが座って来た。


「それにしてもクラウディアは本当に凄いな。何しろ本物の黄金の果実を持ってこれたのだから」


「アルベルト様、それでは……」


「ああ、当然だ。あの女が取って来たとされる果実……あんなのは真っ赤な偽物だ。恐らくあの溶液では色が落ちないように特殊な加工を施していたに違いない。だがお前が命懸けで採って来た果実は紛れもなく本物だ。あの光を浴びた時……何というか、幸せな気持ちになれた」


 アルベルトはしみじみと語る。


「そうですね。私も同じような物を感じました」


「クラウディア、俺は以前から思っていたのだが……『聖なる巫女』は本当はお前じゃないのか?」


「ええっ?!ま、まさか!」


 驚いてすぐに首を振る。

 私は聖女なのではない。錬金術師なのだから。


「だが、色々報告は聞いているぞ?『エデル』に来るまでの間にお前は『レノスト』の領民達を救ってきたという話は耳にしていた。それだけじゃない。この間は水を復活させただろう?おまけに今回の黄金の果実だ。恐らく宰相は相当焦っているだろうな?」


 アルベルトは機嫌が良さそうに笑う。


「何しろ聖女として連れて来たあの女は、まだ一度もそれらしい奇跡を起こしていないのだから。尤も神殿では訪れた人々に祈りを捧げて祝福を与えているらしいが」


「そうだったのですか?」


「ああ。だが、祈るフリだけなら誰にでも出来る。恐らく、今度も自分たちが有利になるように何か仕掛けてくるはずだ。だから先程、今から救済院に行こうと提案したのだ」


「あ……すみません。私のせいですね?救済院に行けなかったのは。皆様の考えに従いますと言ったばかりに……」


 やはり、あの時アルベルトの意見に従って救済院に行くべきだったのかもしれない。


「いや、その事は別に気にする必要は無い。仮に救済院に行ったとしても、恐らくあ

の抜け目ない宰相のことだ。事前に手は打っていただろう。こちらが不利になっていた可能性もある」


「そうなのでしょうか?」


「あらゆる可能性は考えておかないとな。だから本日は救済院に行かずに済んで却って良かったと思っている」


「アルベルト様……」


「そろそろ部屋まで戻るとするか?送ろう」


 アルベルトが立ちあがった。


「いえ、それなら私一人で戻れますから。お忙しいアルベルト様のお手を煩わせるわけには参りませんので」


「だが、黄金の果実がこちらにある以上また宰相がお前を狙ってくるかもしれないではないか?」


「確かにそれはありますが……」


 言われて見れば確かにその通りだ。


「よし、分かった。なら行こう」


「はい」


 アルベルトに促されて2人で執務室を出た私は驚いた。


「ん?お前は‥…」

「ユダ……」


 驚いたことに執務室の前にユダの姿があった――。

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