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第2章 134 聖木と黄金の果実

 ハインリヒ達が集まっている元へユダとヤコブと共に近づいた。


「クラウディア様」

「良かった……ご無事で」

「間に合って安心しました」


 次々と旅の仲間達が声を掛けてくる。


「私達を襲ってきた騎士たちは……?」


 ハインリヒに尋ねると、彼は首を振った。


「駄目です……全員口から血を吐いて……先程の2人の騎士たちと同じ死に方です」


「そう……」


 騎士たちの遺体は私からは見えないが、恐らく苦しみの表情を浮かべていることだろう。あの2人の騎士たちのように……。


「クラウディア様。あまり近づかれないほうがいいです。俺は……クラウディア様にあまり恐ろしい光景は……見て貰いたくはありません」


 ユダが背後から声を掛けてきた。


「ええ……分かったわ。私も……正直に言うと、見たくはないし……」


 平和だった前世では人が目の前で死んでいく様など、見たことは無かった。2人の騎士が目の前で血を吐いて死んでいく姿はあまりにショックが大きかった。勿論命を狙われたことも含めて。


「クラウディア様。後のことは彼らに任せて、私達は黄金の果実を採取して神殿に戻りましょう」


 ハインリヒが私に声を掛けてきた。


「ええ。そうね」


 黄金の果実を実らせた聖木は、鈍い光を放ち……その存在感を顕にしていた。


「我々も採取するお手伝いをしますよ」


 ヤコブが手を上げた。


「そうだな。こんなに沢山あるのだから人手がいるだろう」

「よし、先に果実の採取をしよう」


 仲間たちが次々と黄金の果実の採取を始めた。


「クラウディア様、全て採取するのですか?」


 ユダが尋ねてきた。



「ええ。そうね。全部採取するわ。そのほうがいいのよ」


「そうですね。クラウディア様が見つけられた聖木なのですから、ここに実っている果実は全てクラウディア様の物ですからね」


「別に……そういうわけでは無いのだけど……」


 果実をもぎながら返事をした。きっと彼らはまだ知らないのだろう。聖木に実った果実を全て採取すればどうなるかを……。


 その後も、私達は黙々と黄金の果実を採取し続けた。



「クラウディア様、これが最後の果実のようですぜ?」


 ライが黄金の果実を指さした。


「ええ、そうね。もいでくれる?」


「へい」


 返事をしたライは黄金の果実を枝からもぎ取った途端……。


「うあああ?!」


 突然ライが叫んだ。


「な、何っ?!」

「聖木が!!」

「か……枯れていく!」


 そう、ライが最後の黄金の果実をもぎ取った瞬間……聖木が枯れ始めたのだ。

あれ程瑞々しく生い茂った緑の葉も枯れ落ち、樹皮はボロボロと剥がれ落ちてしまった。


「ライ!お、お前……なんってことをしてくれたんだ!」


 ユダが激怒してライの襟首を締め上げた。


「な、何で俺のせいなんだよ!!お、俺は最後の果実をもいだだけだよ!」


「うるさい!!お前のもぎ方がおかしかったからに決まっているだろうが!!」


 眉間に青筋を立てて怒り猛るユダを私は必死で止めた。


「待って!ユダッ!聖木が枯れたのはライのせいじゃないわ!」


「え?」


 ユダが襟首を離した瞬間、ライはドスンと尻もちを着いてしまった。


「いって〜!!」


 痛がるライを無視してユダが尋ねてくる。


「ど、どういうことでしょうか?」


「それはね……聖木がその役目を終えたからよ」


 私の話に全員が耳をそばだてた――。

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