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第2章 133 任務とは

「し、死んでいるって……一体どういうことなの……?」


 震えながら足元で息絶えた2人の騎士を見おろした。


「暗示を掛けられていたのかもしれません。任務に失敗すれば自死するようにと。恐らく何か毒でも仕掛けられていたのでしょう」


 そっけない態度で話すハインリヒ。何故彼はそんな冷たい態度を取れるのだろう?


「何故そんな恐ろしいことを……平然と言えるの?人が……死んでいるのよ?」


「俺が説明しますよ。我々は戦争に赴く際、あらかじめ毒を持たされるのです」


「毒……?」


「ええ。腰のベルト部分に仕掛けられています。触れると針が飛び出して刺さり、瞬時に全身に毒が回る……魔力で作り出された恐ろしい猛毒です」


 ユダの言葉に背筋が寒くなった。

 魔力で作り出された猛毒……?もしかすると錬金術によって作り出されたのではないだろうか?


「任務に失敗したり、捕虜にされて自白させられそうになった時に自死出来る様に事前に暗示をかけられるのです」


 ハインリヒが続けて説明する。


「酷い……何て恐ろしいことを……」


「仕方がありません。任務ですから」


 ユダがぽつりと呟く。


「え?そ、それではもしかして私達を襲ってきた他の騎士達は……?」


「言われて見れば……そうだ!彼らが死んだと言うことは……!」


「他の3人も!!」


 ユダとハインリヒが顔を見合わせる。


「クラウディア様!参りましょう!」


 ハインリヒは駆け出し、ユダは私の右手を取ると森の中を走り出した。その時、背後から視線を感じて振り向いた。


 すると先程、弓矢を射った若者が木の側で立ってこちらをじっと見つめていた。


 一体彼は……?

 その人物に心当たりは無かったものの……何故か無性に懐かしさを感じた――。




****



 聖木の元へ戻ってくると、そこには旅を続けて来た仲間たちが集まっていた

 

「クラウディア様!」


 私の姿に、真っ先に駆けつけて来たのはヤコブだった。


「良かった……クラウディア様。ご無事だったのですね?!」


 ヤコブはユダを手で押しのけると私の前に立った。


「おい!ヤコブ……!」


 押しのけられたユダは明らかに不満の声を上げるも、ヤコブは彼を無視して私に尋ねて来る。


「クラウディア様。どこもお怪我はされておりませんか?」


「ええ、大丈夫よ。ユダが助けに来てくれたから。私達を助けてくれてありがとう」


「い、いえ。我々は当然のことをしたまでですから」


 ヤコブは顔を少しだけ赤らめて頭を掻く。恐らく照れているのだろう。


「おい、いつまでもクラウディア様と見つめ合うな。それより襲ってきた騎士達はどうなった?」


 ユダはヤコブを睨みつけながら彼の肩を掴む。


「ああ……奴等なら向こうだ」


 ヤコブが指さした先には旅の仲間たちが地面を見おろしていた。その中にはハインリヒの姿もある。


「まさか……全員、血を吐いて……死んでしまったの……?」


「はい、そうです……」


 私の問いに、ヤコブは沈痛な面持ちで頷いた――。




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