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第2章 129 裏切りへの誘い

「あっ!お、お前達は……!!」


 剣を構えたハインリヒは朗らかに動揺した様子を見せている。


「ハインリヒ?もしかして彼らを知っているの?」


 私に背中を向けているハインリヒに尋ねた。


「ええ、彼らは皆同じ騎士団に在籍しています。陛下の直属の騎士団のはずだったのに……。お前達、まさか……陛下を裏切ったのか?!」


 怒気を含めた声で叫ぶハインリヒ。


「ああ、そうさ。っていうか馬鹿だな、お前は」


 1人の騎士が嘲笑する。


「あの騎士団は殆ど全員リシュリー様寄りだぜ」


「何だと!!何故だ!!」


 ハインリヒがい言い返した。すると、騎士たちの口から信じられない言葉が飛び出してくる。


「何故だと?あんな年若い王の下で騎士なんかやってられるかよ」


「ああ、そうだ。しかも子供時代は……ほれ、そこの敗戦国の姫の国に人質として送りこまれていたそうじゃないか?」


「要はそれだけ、前国王から冷遇されてきたってことだろう?挙げ句にずっとこの国の為に尽力しているリシュリー様に逆らってばかりの国王なんかに従えるかよ」



「そ、そんな……!」


 私は彼らの話を信じられない気持ちで聞いていた。まさか、これほどまでにアルベルトの地位が不安定なものだとは思ってもいなかった。

 

 それなのに、彼は私に色々良くしてくれている。 

 敗戦国の人質姫と周囲から呼ばれ……疎まれているこの私を。



「貴様ら……!よくも陛下に向かってそのような口を!!」


 剣を抜こうとしたハインリヒを1人の騎士が止めた。


「おっと、お前……本当に俺たちに剣を向けるきか?俺たちは皆同等の腕前を持っていることを忘れたのか?4対1で勝てると思っているのかよ?」


「だったら、何だと言うのだ?」


 ハインリヒは剣に手を添えたまま彼らを睨みつけている。


 そこへまた別の騎士が声を掛けてきた。


「それよりも、ハインリヒ。俺たちと手を組まないか?」


「何?手を……組めだと?」


 

 その言葉に私は全身の血の気が引く思いがした。

 ここは深い森の中。そして森の中にいるのは私達のみ。他には誰もいない。


 もし、ここでハインリヒが彼らに寝返ったら……もう、私には成すすべがない。

 メッセンジャーバッグを私は強く握りしめた。


 この中には万一の事を考えて、以前私が作り上げた服従薬が入っている。いざとなればこの液体を彼らに掛けて自分の言いなりにすることが出来るかもしれない。    

 けれど、もし全員に取り押さえられてしまえば力の弱い私には為す術もない。



 騎士たちとハインリヒの会話はまだ続いている。


「いいか?ここには目撃者は誰もいない。宰相はお前にチャンスを与えて下さろうとしているんだよ。お前が宰相に寝返れば、病気で苦しんでいるお前の妹の治療費を支払ってやると言ってくれているんだぜ?」



 え?ハインリヒには……病気で治療中の妹がいる?

 初めて耳にした言葉に私は彼を見上げた。


「だが、流石はリシュリー様だな。万一のことを考えて、お前達の後をつけろと言われたときには、そんな必要があるのかと思ったが……」


「ああ。そうだ。まさか本当に黄金の果実を実らせるのだから驚きだ。ここまでつけてきた甲斐があるってものだ」


「まさか……お前達。この果実を奪う気か?!」


 ハインリヒの身体に殺気が宿る。


「ああ、そうだよ。その為に俺たちはお前達の後をつけてきたのだからな」


「これで手柄は俺たちのものだ」


「残念だよ。ハインリヒ」


「本当に馬鹿な男だな。ここで死ぬ気か?」



 4人の騎士たちは一斉に剣を抜いた――。

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