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第2章 120 カチュアの本性

 扉が閉じられると、カチュアはニッコリ笑って私を見た。


「ようやくこれで話が出来るわね?考えてみれば私達、まだ一度も2人きりで話をしたこと無かったじゃない?」


「……ええ、そうかもしれないわね」


 突然今までとは雰囲気が変わった話し方になるカチュア。


「へ〜……貴女、私が態度を変えても驚かないのね」


 カチュアは意外そうな目で私を見る。


「ええ。別に驚く程のことでは無いわ」


「ふ〜ん。それじゃ貴女の前で私は猫をかぶる必要は無いわけね。だったら気が楽だわ」


「そうね。好きにすればいいわ」


「言われなくてもそうさせてもらうから」


 そしてカチュアはリーシャが淹れたお茶を飲み始めた。そんな彼女を私は黙って見つめていた。

 回帰前、私はカチュアの本性を見てきたのだから今更驚くほどのことでもなかった。

 カチュアの命を狙ったと言う、ありもしない罪で監獄に入れられた時……彼女は私に1度だけ面会に訪れたことがあった。

 カチュアは案内人の牢屋番がその場を去ると、私を侮蔑の目で見つめながら信じられない言葉を投げつけたのだ。


『好い様ね、私に敬意を払わないからバチがあたったのよ。地獄で悔いなさい』

と――。

 


「ところでクラウディアさん。明日馬に乗せて貰う人は誰か決まったのかしら?」


 お茶を飲んでいたカチュアが不意に私に話しかけてきた。


「いいえ、まだよ」


「あら、そうなの?勝負は明日だと言うのに、随分のんびりしているのね」


「その言い方だと、貴女はもう決まっているようね?」


「ええ、当然じゃない。私は『聖なる巫女』なのよ。騎士の人たちは誰もが自分を選んで欲しいと申し込んで来て選ぶのに大変だったのだから」


「そうなのね」


 別にカチュアが誰に馬に乗せてもらうか興味は無かった。けれど私の気のない返事が気に触ったのか、彼女は睨みつけてきた。


「随分余裕の態度なのね……。もしかしてアルベルト様の馬に乗せてもらうつもりなの?」


「え?そんなはずないでしょう?アルベルト様を巻き込むつもりは少しも無いわ」


 そんなことをすれば、宰相が黙っていないのは目に見えていた。それにアルベルトの評価だって下がるに違いない。


「ふ〜ん。少しは考えているのね。でもまだ相手が決まっていないなら都合がいいわ」


 カチュアは手にしていたカップをソーサーの上に戻した。


 都合がいい……?


「一体どういう意味なの?」


「ええ。明日の勝負、棄権しなさいよ。そのことを勧めに来たのよ」


「棄権?どうして?」


「決まっているじゃない。この勝負、どうあっても私が勝つに決まっているのだから。今、棄権するなら、悪いようにはしないわよ。私から宰相に話をして、うまく収めてあげるから」


 そんな言葉を信用しろというのだろうか?


「どうして、貴女が勝つと決まっているの?」


「そんなのは当然じゃない!私は聖女なのよ?神聖力も無い貴女に負けるはず無いでしょう?!」


 ヒステリックに叫ぶカチュア。


「けれど、この間私は水不足に悩む町や村を救ったわよ?」


「ええ、そのことだけどね……どんな方法を使って水を蘇らせたのか分かっているわよ」


「え?」


 カチュアの言葉に背筋が寒くなる。


 まさか……私が錬金術師であることがバレてしまったのだろうか――?

 



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