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第2章 101 ザカリーとの再会

「どうでしたか?トマスさんとお話することが出来て」


 調合室を出ると、すぐにマヌエラが話しかけてきた。


「ええ、久しぶりに会って色々話ができたわ」


「それは良かったですね。少しお元気になられたようですね?」


「え?そうかしら?」


「はい、少なくとも私にはそう見えます」


 やはり、自分では気付いていなかったけれども……他人から見れば元気が無かったように見えたのかもしれない。


「ごめんなさい、心配掛けさせてしまったわね」


「いえ、お気になさらないで下さい。ただ、陛下はかなりクラウディア様を心配されていると思います」


「え?アルベルト様が?」


「はい、少なくとも私にはそう思えました」


「そう……なのね……」


「ザカリーさんという方は兵舎で暮らしており、今訓練を受けている最中だそうです。早速行ってみましょう」


 マヌエラが笑顔で教えてくれた。


「ええ、そうね」


 何故、アルベルトが私を気にかけるのか未だに謎だったが……この様子なら、あの件を頼みやすいかもしれない。

 ザカリーの元へ向かいながら、アルベルトの顔を思い浮かべた――。




****


 ザカリーは見習い兵士として、新しく入隊してきた他の新人たちと一緒に外で剣術の訓練を受けている最中だった。


 彼らを指導していた大柄の男性は私が来たことで、少しだけ嫌な顔を見せたもののすぐにザカリーに呼びに行ってくれた。その様子を見ながらマヌエラが声を掛けてくる。


「良かったですね。クラウディア様。それでは私はまた後ほど伺いますので、どうぞ彼とお話下さい」


「ええ、ありがとう」

「それでは失礼致します」


 そしてマヌエラは去って行った。




「王女様!お久しぶりです!」


 麻のシャツにボトムス姿というラフな姿でザカリーが笑顔で駆け寄ってきた。余程激しい訓練だったのか、肩で息をしている。


「久しぶりね、ザカリー。ごめんなさい、訓練の最中に訪ねてしまって」


「いえ、いいんですよ。何しろ俺から王女様に会いに行くわけにはいかないですから。それに今から丁度休憩になるところだったんです。あそこにベンチがあるので座って話しませんか?」


 ザカリーが指さした先には建物があり、ベンチが置かれていた。


「ええ、いいわね。そこで座ってお話しましょう」



 


**


「どう?ここの暮らしは?少しは慣れたかしら?」


 ベンチに座ると、すぐにザカリーに質問した。


「はい。訓練は中々厳しいですが、新しく入った仲間たちが皆気の合う者たちばかりなのでうまくやれていますよ」


 笑顔で答えるザカリーの言葉に嘘は無さそうだった。


「それなら良かったわ。少し心配していたから」


「心配?何をです?」


 不思議そうな顔をするザカリー。


「いえ、敗戦国の……しかも私と一緒に『エデル』へ来たので、周囲から白い目で見られているのではないかと思っていたのよ」


「王女様……もしかして、何か嫌な目に遭っているのですか?」


 ザカリーが心配そうな目を向けてくる。


「嫌な目というか……少しは肩身が狭い思いはあるけれどね」


「そうですか。確かに城内では、あまり王女様について良い噂を聞くことがありませんが……それは皆が王女様の力を知らないからですよ」


「そうかもしれないけれど……でも、私の力をあまり見せることは出来ないのよ」


「確かにそれはありますね。王女様の力を欲しがる輩は沢山いますから。だからこそ、俺は訓練を真面目に受けているんです。兵士になれれば、次に騎士を目指すことが出来ますからね。いつか必ず騎士になって、王女様の専属護衛騎士になると誓いますよ」


 ザカリーの頼もしい言葉が胸に染みる。


「ありがとう、そのときを楽しみにしているわ。ところで、ザカリー。貴方に聞きたいことがあるのだけど……」


「はい、何でしょう?」


「スヴェンという人物を貴方は知っている」


「スヴェン……スヴェンですか?さぁ……知りませんね。誰ですか?」


「いえ。何でも無いの。どうか気にしないで頂戴。以前お世話になった人で、この城にその人物がいないか確認したかっただけだから」


「そうですか?ではもしその人物を見かけたら王女様に伝えますね?」


「ええ、お願いね」


 その姿はとても嘘をついているようには見えない。


 やはり思った通り、ザカリーもスヴェンの記憶が消えていたのだ――。


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― 新着の感想 ―
[一言] ずっと読ませて頂いていて、話が進み始めて面白くなってきたのですが、やっぱりクラウディアは回帰前の呪縛から逃れられないのかしら? >それでは、回帰前の彼は一体どうなのだろう? >私のことを傲慢…
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