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第2章 92 アルベルトの条件

「アルベルト様……?どうされたのですか?」


 よく見るとアルベルトのフォークを持つ手が小刻みに震えている。しかも呼びかけても無反応だ。


「アルベルト様?一体どうしたのですか?」


 再度声を掛けると、ようやくアルベルトは我に返ったかのように反応した。


「あ……い、いや。何でも無い」


 口ではそういうものの、ただごとではない様子は私でも分かった。


「ですが……」


 尚も尋ねようとした私の言葉を遮るかのようにアルベルが声を掛けてきた。


「クラウディア、一体誰に会いたいのだ?差し支えなければ教えてもらえるか?」


「はい。『アムル』の村の村長であるドーラさんという女性に会いたいのです。高齢の女性だったので、お元気にしているかどうか気になりましたから」


「そうか……」


 アルベルトは視線をそらせながら頷く。


「お許し……頂けますか?」


「分かった。『アムル』は元々レノスト王国の領地だったのだからクラウディアの好きにするといい。だがあの村までの道のりは遠い。今すぐ旅立ちの許可を与えることは無理だ。大体準備期間も必要だしな。だからもう少し待ってくれ」


「そうですか、分かりました」


 アルベルトの言うことも尤もだ。やはり『アムル』までの道のりは1週間以上はかかる。そう簡単に許可を得られるものではないのだろう。


 それに今すぐスヴェンの行方を探すことも無い。ただ、知りたかったからだ。

 何故スヴェンが私以外の人々から存在ごと消えてしまったのかを。『アムル』に行けば彼が消えてしまった手がかりが得られるのではないかと思ったのだ。


「他に……何か願いはないか?」


 ワインを飲みながらアルベルトが尋ねてきた。


「そうですね。では他の領地も気になるので、『アムル』に行くついでに立ち寄らせて頂く許可を下さい」


「……まぁ、それは別に構わないが……そうなると長旅になるな」


「はい。そうですね。出来れば半月ほどは領地へ行く許可を頂きたいです」


「半月か……領地の視察も兼ねると確かにそれくらいにはなるかもしれないな……。だがまだ仕事が山積みだからそんなに長く城を開けるわけには行かないし……」


「え?」


 アルベルトの言葉に思わず声が漏れてしまった。まさか……一緒に来るつもりなのだろうか?


「何だ?その顔は。まさか1人で領地に行くつもりだったのか?」


 アルベルトの顔はどこか不機嫌そうに見える。


「はい。そのつもりでしたが……?あ、でも1人とは言っても、護衛は頼もうかと思っておりました」


「護衛……か。念の為に尋ねるが、まさかユダに頼もうと思っていたのか?」


「そうですね。後はハインリヒに『シセル』と『クリーク』の領民で一緒にこの国へ来た2人の青年にも声を掛けようかと思っています」


 きっとトマスやザカリーも里帰りをしてみたいはずだ。


「また……か……」


 その時、アルベルトが何か呟いた。しかも何故か随分不機嫌そうに見える。


「アルベルト様?どうかされましたか?」


「クラウディア……」


「はい」


「領地に行くときは必ず俺も一緒に行くからな?彼らが同行するというのなら、尚更だ。そうでなければ許可を出すわけにはいかない」


 アルベルトは何処か不機嫌そうに言い切った――。




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