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第2章 87 アルベルトの申し出

 2人で食事をしていると、アルベルトが話しかけてきた。


「クラウディア、少しは城の暮らしに慣れたか?」


「!そ、それは……」


 居心地が良ければ慣れたと言ってもいいかもしれない。けれど今の私は毎日気が張っているので、神経がすり減っていた。


「すまん」


 すると、何故か突然謝ってくるアルベルト。


「どうされましたか?」


「いや。今のは愚問だったな。こんな環境では城の暮らしに慣れるも何も無いだろう」


「アルベルト様……」


 だったら、私を元の『レノスト』国へ……。

 けれど幾ら何でもそのことだけは言えない。何しろこの婚姻は政略結婚。敗戦国から嫁いできた私は、もう二度と『レノスト』国が『エデル』の国に逆らえないようにする為の手段として結ばれたものだから。

 

 アルベルトにしても、本当は私を妻になどしたくはなかっただろう。恐らく周囲の家臣から勧められてやむを得ず、婚姻することに決めたに違いない。

 恐らくリシュリーに反対されながらも……。


「ところで、専属護衛騎士のことについてだが……」


 ワインを口にしていたアルベルトがグラスをテーブルに置いた。


「クラウディアが以前指名していたユダだが、再来週騎士になる為の試験を受けさせることになっているので少しだけ時間がかかる。それで提案なのだが、やはり護衛騎士が1人では心許ない。もう1人専属騎士を配属しようと考えているのだ」


「分かりました。アルベルト様のお考えにお任せします」


「よし、なら決まりだ。それで新しい専属護衛騎士についてだが、実は1人名乗りを上げている人物がいる。先程のハインリヒだ。彼が自らお前の護衛騎士にして欲しいと願い出てきたのだ。俺としては、自分から名乗り出てきた者に任せたいと思っているのだが……どう思う?」


 アルベルトが私に意見を求めてくるとは思いもしなかった。ハインリヒの意図はもう分かっていた。彼の目的は私の護衛ではなく監視だ。常に私に目を光らせ、何か疑うべきことがあれば、すぐにアルベルトに報告するつもりなのだろう。


「はい、私も彼で構いません」


 頷くと、アルベルトは笑みを浮かべた。


「そうか?それを聞いて安心だ。ハインリヒは俺の忠実な騎士で、信頼出来る。腕も立つから、何かあっても必ずお前を守ってくれるだろう」


「それは頼もしいですね」


「ああ、そうだ」


 その後もアルベルトはハインリヒがどれだけ凄い騎士か、彼の武勇伝を得意げに語っていたが私に取ってはどうでも良いことだった。


 アルベルトは何も知らないのだ。いくら自分の忠実な家臣でも命令に従うかどうかなど。


 ハインリヒと言う騎士は私にとっては宰相と同樣、脅威の存在でしか無い。

 これでまた一つ、私の頭を悩ます問題が増えてしまった。

  

 けれど、私は自分の感情を押し殺し……アルベルトの前でいつも通りに振る舞うのだった――。


 

 

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