表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/380

第2章 85 あらぬ疑い

 部屋に戻り、着替えを済ませると扉をノックする音が聞こえてきた。


 リーシャだろうか?


「はい、どうぞ」


 声を掛けると、扉が開かれた。


「え……」


姿を現したのは驚くことに騎士のハインリヒだった。


「ハインリヒ?何か私に用かしら?」


「はい、そろそろ夕食の時間なのでお迎えにあがりました」


彼は相変わらず無愛想な顔で答える。けれど、騎士がわざわざそれだけの為に私の元へ来るなんて……。

訝しげに思いながら頷いた。


「ええ、分かったわ。なら行くわ」


 そして私はハインリヒと共に部屋を後にした。




「あの、何処へ行くのかしら?ダイニングルームへ行く通路では無いと思うのだけど?」


 前を立って歩くハインリヒは違う方向へ向かっている。確かこの先は……。


「執務室でアルベルト様がお仕事をしておりますので、お声を掛けにいくところです」


 振り向きもせずに返事をするハインリヒ。


「そうだったの。分かったわ」


 素直にうなずき、私はハインリヒの後をついて行った。



 やがて、私とハインリヒはアルベルトの執務室の前にやってきた。

すると何やら声が漏れて聞こえていることに気付いた。よく見れば扉が少し開いている。


「誰かいるみたいだわ」


「ええ、そのようですね」


私の言葉に頷くハインリヒ。


その時――。


『いい加減にしろ!リシュリー!』


アルベルトの怒鳴りつける声が聞こえてきた。


宰相が執務室に……?まさかまだアルベルトと話をしていたのだろうか?

その時、耳を疑う言葉が宰相の口から飛び出してきた。


『しかし、実際クラウディア様が呪いを掛けて水を降らせなくなったと噂が流れているのは事実なのですよ?わざと干ばつ状態にさせ、人々の前で呪いを解除して水を復活させたとのだろうと疑う国民達がいるのです』


 え……?!あまりの言葉に衝撃を受ける。


『そのような根も葉も無い噂をするのは何処の輩だ!今すぐ連れてこい!目を覚まさせてやる!』


『目を覚ますのは陛下、貴方です。既に近隣の村や町ではクラディア様は魔女ではないかと言われているのですよ』


魔女……?!回帰前すら、そのようなことは言われたことが無かったのに……?!

あまりの言葉に目眩がして、崩れ落ちそうになった。


「しっかりなさって下さい」


その時、背後からハインリヒに支えられた。


「あ、ありがとう……」


 お礼を言いながら彼の顔を見上げた時、息を飲んだ。ハインリヒは冷たい目で私を見つめていたのだ。

 

 その瞬間、私は全てを悟った。


彼は……わざと今の話を聞かせる為に、ここへ私を連れてきたのだと。


 部屋の中ではまだアルベルトと宰相の話が続いている。


『クラウディアが魔女だと……ふざけるな!彼女はそのような者ではない!』


『だとしたら何だと言うのです?しかも聞く所によると、陛下はどのようにして水を蘇らせることが出来たのかクラウディア様に尋ねもしなかったそうではないですか?一体何故なのです?』


『それをお前に告げる必要があるのか?話はここまでだ。出ていけ!』


『分かりました……。けれど陛下。もっと周囲の状況を見るべきです。後で後悔しないように』

 


 そして少しの無言の後……。


突然扉が開かれ、私の目の前に宰相が現れた――。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 盛り上がってるな~ 毎回先が楽しみになります [気になる点] だんだんと、主人公が不憫すぎて、「さっさと国に返してあげてください」と思うようになってきました アルベルトさん・・・国民の声…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ