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第2章 82 アルベルトからの相談

 次の目指す農村『ポルタ』までの道は意外にも悪路だった。


 ガタガタと揺れる馬車の中でアルベルトは窓の外に目を向けながらため息をついた。


「相変わらずこの道は揺れが激しいな……」


「そうですね。確かに道の高低差があったり、デコボコしていたり状況が悪そうです。農村地帯の道がこれでは仕事や日常生活に影響が出てきそうですね」


 私が返事をするとアルベルトは身を乗り出してきた。


「やはり、クラウディアもそう思うか?このような悪路では大きな荷車での運搬作業も難航してしまう。以前から王都から他の領地へ向かう道が悪路なので改善して欲しいと嘆願書が寄せられていたので改革をしようとしているのだが……」


 そこでアルベルトが忌々しげに顔をしかめた。


「王政の財源管理は宰相に一任されている。宰相が首を縦に振らないせいで、中々改革に乗り出せないでいるのだ……。俺はまだ年若いし、王位に就いてから1年足らずだから尚更だ」


 確かにアルベルトはまだ22歳。親子以上に年の離れた宰相に甘く見られてしまうのも無理はないかしれない。

 ましてや先代から宰相を務め、更には神殿との結びつきが強ければ尚更アルベルトを軽んじているのだろう。


 だけど……。

 

 膝の上に乗せた手に力を込めた。


 回帰前、確かに私はアルベルトによって処刑されてしまったけれども恐らくその背景には宰相の力が働いていたはずだ。

 彼は私を敵視し、自分が連れてきたカチュアを『聖なる乙女』としてアルベルトに引き合わせたのだから。

 

 でも、今回はそうはいかない。

 宰相の思うツボになってはまた前回の二の舞いを踏んでしまいかねない。



「アルベルト様」


 そこで私はアルベルトに声を掛けた。


「何だ?」


「アルベルト様は国王です。ですが、宰相は陛下を補佐する立場であり、実権を握ることが出来るのはアルベルト様ただお一人です。まずは王政の改革をするのを優先するべきだと思います。宰相に権力が集中するのを防がなくては、領地改革をするのは難しい問題だと思います」


「……」


 アルベルトは無言のまま、私の話を聞いている。ひょっとすると、何も分かっていないのに生意気な口を利いていると思われてしまっただろうか?


「あ、申し訳ございません。つい、意見を申してしまいました」


 しかし、アルベルトは笑みを浮かべた。


「そうか、やはりクラウディアも俺と同じ考えを持っていたのだな?やはり相談して良かった」


「え?」


相談?今の話が相談だったとは思いもしなかった。


「とりあえず宰相のことは今は置いておこう。先に水不足で困っている残りの領地の問題を解決するのが先だ」


「はい、そうですね」


 

 返事をしながら私は思った。


何故アルベルトは何も聞かないのだろう?


どうやって『ソリス』の町に水を呼び戻したのかを。ひょっとすると、アルベルトは私が何らかの力を持っていることを知っているのだろうか?


 だとしたら、もっと用心しなければ。


 私は今度こそ、生き残るのだから――。





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