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第2章 81 アルベルトの決断


 人々が喉の乾きを癒やし、それぞれの帰路についた後……アルベルトは伯爵を振り向いた。


「マーフィー伯爵」


「は、はい!」


 ガタガタ震えながら返事をする伯爵。


「お前はこの町共有の財産である貴重な水を独占し、日照り続きで困っている者達に高値で水を売っていた。そして私腹を肥やすだけでなく、自分だけは喉の乾きを癒やしていた。その罪は非常に重い」


「そ、その通りでございます……」


「よって、お前の伯爵家の爵位を剥奪することにする!」


「ええっ?!そ、そんなっ!陛下!それだけはお許しを!」


 伯爵は必死になって懇願している。

 確かに少し重すぎる罪だと思ったが、この町の人々から見れば妥当な判断なのかもしれない。その証拠に、先程伯爵と一緒にいた町人達はうなずき合っている。


「いや、許すわけにはいかない。お前のように欲深い人間にはこの町を治める資格など無い!」


「そ、そんな……」


 伯爵は顔面蒼白になり、その場に座り込んでしまった。


「近日中に知らせを出すので、その際は必ず城に来るのだ。さもなくば所有する財産を全て差し押さえるからな」


「つ、謹んで……承ります……」


 そして伯爵はガックリと頭を垂れた――。




****


 『ソリス』の町を出た私達は次の目的地『ポルタ』という農村を目指していた。


「……」


 アルベルトは馬車に乗ると持参していた書類に目を通し始めたので、私は外の景色を眺めていた。

 

 それにしても……先程の伯爵の処罰は少し重すぎたのでは無いだろうか……?

そんなことを考えていると、不意に名前を呼ばれた。

 

「クラウディア」


「はい、アルベルト様」


「どうかしたのか?何だか元気が無いように見えるが?」


「え?そ、そうでしょうか?」


「ああ。『ソリス』を出てから何だか様子がおかしい。ひょっとすると先程の件で何か思い悩んでいるのか?」


 まさかアルベルトに私の考えを見透かされているとは思わなかった。


「はい。あの……流石に爵位の剥奪は罰としては重すぎるのではありませんか?」


「何を言う?あの伯爵は勝手に町の共有物である大切な水資源を私物化したのだぞ?しかも水不足で人々が苦しんでいる最中に勝手に高値で水を売買していた。情状酌量の余地はあるまい?」


 アルベルトの言うことは尤もだ。けれど、あまり厳しい締付けを行えば周囲から反感を買うのでは無いだろうか?

 

 私が黙っていると再びアルベルトが尋ねてきた。


「何か思うところがあるなら言ってみろ?」


「はい。なら言わせて頂きます。本人が反省しているようであれば、もう少し処罰を軽くしてあげるのはいかがでしょうか?例えば財産の半分を押収し、『ソリス』の町の人々に分けて上げるとか……」


「……」


 アルベルトはじっと私を見つめている。やはり、私の意見は却下なのだろうか?

 そこですぐに謝罪の言葉を述べた。


「出過ぎたことを言いました。申し訳ございません」


「何を謝る?お前は質問に答えただけだろう?」


「はい、そうです」


「でも今のがお前の考えなのだな?…分かった。肝に命じておこう。ところで……話は変わるが、これが2人の初めての外出だな」


「そうですね」


「これからも色々な所へ出掛けよう。2人で一緒にな?」


 そしてアルベルトは私に笑いかけてきた――。




 

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