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第2章 78 バレた嘘

 宰相とカチュアが護衛の騎士達を連れて立ち去ると、私はすぐにマーフィー伯爵の方を向いた。


「伯爵。まずは水不足の問題の前に……少しお話をお聞きしたいのですけど」


「え?私にですか……?」


「はい、そうです。日照り続きで困っている近隣の町や村に水を分けてあげているのですよね?」


「ええ、勿論そうです。困ったときはお互い様ですからね」


 伯爵は当然のように頷く。


「本当に無償で分けてあげているのですか?日照り続きで大変だという最中に随分羽振りが良さそうですね?それに町の人々は体調が悪そうな人が多いのに、伯爵は随分元気があるように見えますが?」


 伯爵は私は元より、アルベルトよりも豪華な服を身につけている。


「え?!い、一体何を言い出すのですか?!」


「確かに……言われてみればそうだな。町はすっかり活気もなくなリ、随分寂れた様子だ。それに……町民たちはクラウディアの言う通り、皆具合が悪そうだぞ?」


 すると、町民たちの中で一番年若い男性が突然口を開いた。


「へ、陛下……お、お願いがあります……」


「何だ!貴様は!陛下に直に話しかけようとするとは……この身の程知らずめ!黙っていろ!」


 伯爵がアルベルトの前で青年を叱責した。すると……。


「いや、黙るのはむしろ伯爵。お前の方だ。彼は今私に話をしようとしている。彼らの話を聞くのが先だ」


「で、ですが……あ、相手はただの平民ですよっ?!そんな取るに足らない存在の者の話を聞くのですか?!」


 なんて酷いことを……!伯爵の言葉は聞くに耐え難いものだった。


「この者たち大切な我が国の国民だ!そのようなことを言うな!」


そしてすっかり恐縮している青年にアルベルトは話しかける。


「さぁ、話すがいい」


「は、はい……伯爵は……この町の水路や井戸水の独占所有権を持っていて……金持ちにばかり水を売っているのです。お陰で我々は……水を配給制にされて……満足いく水を貰えないのです……」


青年の言葉に周囲にいた町民たちは力なさげに頷く。


やはりそうだったのだ……!彼らが皆一様にして元気のないのは脱水症状による疲労だ。


「どういうことだ……?伯爵。水はこの町に住む人々全員の物。いつから独占所有権を有するようになったのだ?」


 アルベルトは伯爵を物凄い目で睨みつけた。


「ヒッ!そ、それは……お、おい!貴様ら……よくも陛下の前で……!」


 伯爵は町民達に怒りをぶつける。


「いい加減にしろ!伯爵!彼らに当たるのは筋違いだ!」


 再びアルベルトは伯爵を叱責するもこれでは埒が明かない。そこで私は声を掛けた。


「お待ち下さい、アルベルト様。今はそんなことよりもまずはこの水不足を解決しなければなりません」


「確かにそうだな……。それで?何か解決策はあるのか?」


「はい。まずは先程初めに案内された、ため池にもう一度戻りましょう」


「ため池に……戻るのか?」


「はい、そうです」


アルベルトの言葉に私は頷いた――。

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