第2章 66 意味深な言葉
そんな噂が流れていたなんて……。
「お2人とも、貴重なお話を教えて頂きどうもありがとうございます」
にっこり笑って感謝の言葉を述べると、宰相もカチュアも意外そうな表情で私を見た。
「い、いえ。礼には及びませんよ」
「そうですね。お役に立てて嬉しいです」
ひきつった笑いを浮かべる宰相とリシュリー。
「それでもうお身体の方はよろしいのですか?」
カチュアが尋ねて来た。
「ええ、そうですね。本日目が覚めたばかりですので、まだ本調子ではありませんが明日にでも城の中を歩けそうです。城の人達に私が健全な姿を見せておかなければなりませんからね」
私の頭がおかしいだとか、精神を病んでいる等と噂を立てられればこの先私の立場が悪くなるのは目に見えていた。
今回はもう処刑されるわけにはいかない。少しでも自分に不利な状況は取り除いておかなければ。
「さようでございますか。クラウディア様の健全な姿を城の者達が見れば皆、安心するでしょうな。では我々はこの辺で退散することにしましょう。あまりクラウディア様を疲れさせるわけにもいきませんからな。明日からはまた元の生活に戻られるのですから」
「そうですね。リシュリー様。それに今はあの問題が起きているせいで陛下も大変忙しい時ですから。私達が気を配らなければなりませんしね」
カチュアは意味深な話をするも、私はあえて尋ねないことにした。彼女が私に自分の話を引き出させようとしているのが目に見えて分かったからだ。
「……」
私は黙って紅茶を飲んで聞き流すことにした。すると案の定、カチュアはチラチラとこちらを気にしている様子がうかがえた。
「さ、さて。それではそろそろ行くとしよう」
「そうですね。リシュリー様」
宰相とカチュアが立ち上がったので、私も2人を見送る為に席を立った。
「リシュリー宰相、カチュアさん。お忙しい中、お見舞いに来て下さってありがとうございます」
「いえ、それでは失礼致します」
「お元気になられて良かったです」
宰相とカチュアは交互に挨拶をすると部屋を出て行った。
2人が出て行き、扉が閉ざされるとため息が漏れてしまった。
「ふぅ……疲れたわ……」
今回は回帰前に比べて、宰相もカチュアも私に絡んでくる回数が多いように感じる。
けれど、それは私とアルベルトの関係が今のところ悪くはないせいだろう。
「けれど、私に関する悪い噂はまずいわね‥‥…」
噂を払拭する為に、何か手を打たなければ。
そう言えば、カチュアは今、問題が起こっていると話していた。その為にアルベルトは忙しくしていると。
「その問題を私が解決できれば……私に関する悪い噂を払拭することが出来るかしら?」
明日にでも、アルベルトに会う機会があれば尋ねてみよう。
そして、その機会はすぐに訪れる事になる――。




