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第2章 65 噂の内容

「陛下に部屋の交換は断られてしまいましたが、やっぱりいつ見ても素敵な部屋ですね」


私が2人の向かい側のソファに座ると、早速カチュアが何処か皮肉を込めながら宰相に話しかけて来た。


「まぁ陛下が反対したのだから仕方あるまい。しかし、神殿に立派な部屋を用意して貰えたでは無いか?『聖なる巫女』専用の」


「はい、そうですね。神官の方たちに良くして貰えて、本当に感謝しかありません」


「ああ、全くだ。特にこの間の宴は素晴らしかった。料理も、振舞われた酒も全て一級品だったしな」

 

 リシュリー宰相とカチュアはわざと神殿の話を持ち出して、私の存在を無視するかのように2人だけで盛り上がっている。


私は黙ってその様子を見つめていた。私に対する嫌がらせだということは分かっていたからだ。


 そこへノックの音が部屋に響きわたり、「失礼します」と言ってマヌエラがワゴンに3人分のお茶を運んできてくれた。


「お茶をお持ち致しました」


マヌエラはワゴンを押しながら部屋に入り……宰相とカチュアが2人だけで話をしている姿を見て、眉をしかめた。


「ありがとう、マヌエラ」

「いいえ」


声を掛けるとマヌエラは返事をしたものの、明らかにその目には不満が宿っている。


「テーブルの上に置いたら、下がっていいわよ」


「はい……」


マヌエラは私たち前に紅茶を置き、「失礼致しました」と言って退室した。



「……」


黙って紅茶に手を伸ばすと、わざとらしく宰相が声を掛けて来た。


「おや、これは失礼。つい、『聖なる巫女』と話が盛り上がってしまいましたな」


「いえ、どうぞお気になさらずに。それで、リシュリー宰相。先程お話されていた私に関する悪い噂とは一体どのようなお話なのでしょうか?」


紅茶を一口飲むと、宰相に尋ねた。


「ええ、宜しいでしょう。実は今城中でクラウディア様に関しての悪い噂が流れてしまっているのですよ」


「そうですか。城中に……ですか?」


 私の身体に緊張が走る。回帰前も私に関する悪い話が城中どころか、国民達の間に広がった。その結果、『国を亡ぼす悪妻』と称されて処刑されてしまった。けれどもそれらは全て身に覚えがあり、誇張されてしまったのが原因だった。


 しかし、今現在私は自分に関する悪い噂が流れていると言われても、全く心当たりはない。

何しろ私はまだこの国に到着したばかりで、さらに5日間もベッドに伏していたのだから。


 戸惑っていると、宰相は口元に笑みを浮かべた。


「ええ。そうです。どんな噂か気になるのですか?クラウディア様はご自分の悪い噂が流れても、動じないお方だと思っておりましたが」


宰相はもったい付けた言い方をする。


「それは確かに気になりますね。自分の悪い噂が流れていると言われれば気にして当然です」


「これは失礼致しました。では教えて差し上げましょう。クラウディア様は心が病んでいるとか、頭がおかしい等と言われております」


「何ですって……?」


その言葉に眉をしかめた。


「だから真夜中にフラフラと森の中を1人で出歩いていたのだろうと城中に噂が流れてしまっているのですよ」


すると宰相の後にカチュアが続いた。


「それだけではありません。このままクラウディア様をこの国の妃にしていいのだろうかという声が上がっているのですよ。酷い話ですよね?心から同情いたします」


しかし、私を見るカチュアの目は笑っていた――。

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