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第2章 52 アルベルトの話  

「どうだ?美しいだろう?気に入ったか?」


アルベルトが尋ねて来る。


「は、はい‥…とても美しいですね……」


返事をしながらも、私は酷く動揺していた。

鈍い光を放つ賢者の石は、赤い宝石のようにも見える。けれど、私には分かる。

これが賢者の石を加工して作られたネックレスであることが。


 何故アルベルトはこの石を持っているのだろう?


「陛下、このネックレスは一体……?」


何とか平静を装って、尋ねてみることにした。


「この石、一見宝石のように見えるかもしれないがそうじゃない。不思議な魔力を帯びた魔石だ。希少な魔石を砕いて加工して作られている」


アルベルトが声のトーンを落として説明する。


「魔石……」


もしかすると、アルベルトはこの石が賢者の石ということに気付いていないのだろうか?

そもそも、賢者の石が何故この国にあるのかが不思議だった。


「このネックレス、肌身離さず身に着けていろ。出来れば人目に触れないようにな」


「え……?」


普通アクセサリーというものは人の目に留まるように身につけるはずなのに、何故そんなことを言うのだろう?更にアルベルトの話は続く。


「不思議そうな顔をしているな?だが、この石はお前を守ってくれるはずだ。実は俺も身に着けている」


アルベルトはクビの部分に触れると、金属のチェーンを服の中から引っ張り出した。


「あ……」


揺れるネックレスのチャーム部分には、同じ賢者の石の欠片が埋め込まれている。


「これを肌身離さず身に着けていれば……お前を守ってくれるはずだ」


アルベルトは再び、ネックレスを服の中にしまった。


「守る……とは、一体どういう意味でしょうか?」


「今に分かることだ。そのネックレスを身に着けていればお前は安全だ。だが、誰にも知られないようしろよ?」


アルベルトは肝心なことは答えてくれなかった。


「分かりました」


「なら食事の続きをしよう。今夜は邪魔な宰相たちがここへ来ることは無いはずだからな」


邪魔な宰相たち……。

今、はっきり彼は言った。『邪魔な宰相たち』と。

口には出さないが、その中には恐らくカチュアが含まれているのだろう。

宰相たちの話なら尋ねても問題ないだろうか?


「陛下、お尋ねしたいことがあります」

「何だ?」


ワイングラスを傾けながらアルベルトがこちらを見た。


「リシュリー宰相から聞いたのですが……今夜は神殿で『聖なる巫女』の歓迎の儀が開かれるそうですが、陛下は参加しなくて宜しかったのですか?」


「あぁ、宰相が騒いでいた宴の件か?全く……馬鹿馬鹿しい」


吐き捨てるような言い方をするアルベルト。


「え…‥?馬鹿馬鹿しい……?」


「『聖なる巫女』が現れたとか言って、得体のしれない人物を連れて来たかと思えば、今度は神殿の者達を巻き込んで宴を開くなど……。そんな馬鹿げたことはやめさせたかったが生憎神殿は王族の力が働かない場所だからな。口を挟むわけにはいかなかったのだ」


そしてアルベルトは手にしていたワインをグイッと飲み干した。


「そうだったのですか……」


まさか王族でありながら神殿には力を働きかけることが出来ないとは知らなかった。

それでは神殿の力の方が王族よりも強いということなのだろうか?


「おまけにリシュリーの家系は代々神官を輩出している。本来であれば、彼は神官になるはずだったのに……何故かこの城の宰相になったのだ」


そしてアルベルトは空になったグラスをテーブルの上に置いた――。




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