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第2章 51 アルベルトからの贈り物

 私には回帰前も今も、所々自分の記憶が抜け落ちている期間がある。


 その理由が何故なのか……当然記憶が抜け落ちている私には知る由も無かった。

けれど、アルベルトが人質として『レノスト』国に囚われ……短い期間ではあったものの2人で同じ時間を過ごした時のことは今も覚えている。

何故なら、まだ幼かった私はアルベルトと出会って初めての恋をしたからだ。


 幼さ故、何故彼が城に囚われていたのか私は知らなかったけれど彼と一緒に過ごした時間はとても楽しかった。

だからこそ、突然アルベルトがいなくなってしまった時は酷く悲しく……暫くの間は嘆き暮らしていた記憶が残されている。


でもそれは、もう過去のことであり……処刑されて回帰した私にとってはどうでも良いことであった。

何故なら、今の私はアルベルトに対して少しも恋心を抱いてはいないからだ。


あるのは……猜疑心のみだった。



「どうした?クラウディア。そんなに俺の顔を見つめて……何かついているか?」


アルベルトが首を傾げて私に尋ねて来た。


「い、いえ。何でもありません。陛下を不躾に見つめてしまい、申し訳ございませんでした」


いけない、ついアルベルトに対する疑念から凝視してしまった。


「陛下……か」


アルベルトはため息をついた。


「どうかなさいましたか?」


「いや、昔のように名前で呼んで貰えたらと思ったのさ」


「名前……で、ですか?」


「ああ、そうだ」


私はまたしてもその言葉に耳を疑ってしまった。回帰前、アルベルトは私に名前を呼ばれることを拒んだのだ。


『お前のような悪女に私の名を呼ぶ資格はない』と――。


「では……正式に婚姻した際にはお名前で呼ばせて頂きます。それで宜しいでしょうか?」



私は断頭台で私を死へ追いやった宰相やアルベルト、カチュアを恨みながら断頭台で命を散らせた。

その時の無念の思いが、この国に来てから強まってしまったようだ。


「そうか……?まぁ、お前がそう言うなら無理強いするのはやめておこう」


アルベルトはたいして気にした素振りも見せずに、頷いた。


「ありがとうございます」


お礼を述べながら、心の中でため息をついた。

どうしても回帰前の記憶に翻弄されそうになってしまう。本当はもっと上手に立ち回らなければならないのに……。


「ところで、クラウディア。実は今夜人払いをして2人きりの晩餐会にお前を呼んだのには、理由があるんだ」


「理由……ですか?」


一体どんな理由だろう。


「ああ、これを渡しておきたくてな」


アルベルトは上着のポケットから細長い箱を取り出すと、テーブルの前に置いた。


「これは……?」


「開けて見てくれ」


「はい」


彼に促され、私は箱の蓋を開けて目を見開いた。


「!!」


箱の中にはネックレスが入っていた。


そしてネックレスの飾りは小さくカットされた【賢者の石】だったのだ――。


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