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第2章 45 忘れられない記憶

 気付けば私は自室のベッドの上に寝かされていた。


「あ……」


部屋の中はオレンジ色の夕焼けに照らされていた。


「え?私の部屋……?」


身体を起こして辺りを見渡し、ここが自分の部屋のベッドの上であることが分かった。

いつの間に部屋に運ばれていたのだろう?


「確か図書館で頭痛が起きて意識が無くなって……」


そうだ。

あの時私の脳裏には身に覚えの無い映像が頭に浮かんだ。カチュアの前で錬金術を行おうとしている自分が……。


「ま、まさか私……回帰前にカチュアの前で……」


ひょっとして私は身に覚えの無いところで操られていたのだろうか?

もし、彼女が人を操る力を持っていたとしたら……?


そう考えると怖くなった。

背筋が寒くなり、両肩を抱きかかえた時‥‥…。


「ク、クラウディア様……」


突然名前を呼ばれた。


「え?」


振り向くと、開け放たれた扉の前にリーシャが立っていたのだ。


「リーシャ……」


するとリーシャが私のいるベッドに駆け寄って来た。


「良かった……クラウディア様。目が覚められたのですね?本当に心配しました」


「ごめんなさいね。貴女に心配かけさせてしまったようね?」


「いいえ、私のことはいいのです。ただクラウディア様に何かあったらどうしようと思って……」


リーシャは首を振った。


「ところで、一体何があったのかしら?どうして私はベッドの上にいるのかしら?」


「はい、国王陛下が本棚の前で倒れているクラウディア様を発見されて、お部屋まで運んで下さったのです」


「え?陛下が?!」


その話に驚いてしまった。


「はい、そうです。陛下はかなりクラウディア様のことを心配されておりました。暫くの間付き添われていたのですよ?」


「そ、そうだったの……?」


にわかには信じられない話だった。

回帰前、私は自分を顧みてくれないアルベルトの気を引く為にわざと階段から落ちて怪我をして見せたことがあった。それ以外に仮病を使ったこともあったのに、彼は一度も私を気に掛けたことが無かったからだ。


「クラウディア様はとても国王陛下に大切に思われているのですね。安心しました」


リーシャは嬉しそうに笑った。


「え、ええ。そうね」


 返事をしたものの、私はアルベルトに心を許すつもりは無かった。

何しろ彼は私を断頭台に送りつけた人物だ。

そして鋭い刃が私の首に落ちて来る最後の瞬間までカチュアの肩を抱きよせて、冷たい瞳でじっと私を見つめていた。

あの時の光景は一生忘れることなど出来ないだろう。


 だからと言って、彼に反発するのも得策では無い。

私はリーシャに尋ねた。


「リーシャ、今何時かしら?」

「時間ですか?午後4時を過ぎた頃です」


午後4時……。恐らく夕食時間は18時過ぎだろう。


「あのね、今夜は陛下と2人きりで夕食を頂くことになっているの。その時にお礼を述べるつもりだから……着替えと髪のセットをお願い出来るかしら?横になっていたせいで髪が乱れてしまったみたいだから」


髪を撫でつけながらリーシャに頼んだ。


「はい、お任せ下さい」


リーシャは嬉しそうに返事をした――。





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