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第2章 35 疑うリーシャ

 リーシャと一緒に部屋に戻る為に回廊を歩いていると、中庭の木々の間から声が聞こえてきた。


「ほら、見て。カチュア様からこんなに素敵なリボンを頂いたのよ」


女性の楽しげな声が聞こえてきた。


「あら、私だって貰ったわよ?どう?このハンカチ素敵でしょう?」


更に別の女性の声が聞こえる。


「私なんかもっと凄いわよ?この髪飾りカチュア様から頂いたのだから」



「どうやら中庭でメイド達がお話をしているようですよ?」


リーシャが私に声を掛けてきた。


「ええ、そうね。きっと庭掃除でもしながらお話をしているのじゃないかしら?」


回帰前もそうだった。

カチュアは城の使用人たちに色々な品をプレゼントしていた。

それらは決して高価なものではなかったが、何しろ相手は『聖なる巫女』。貰うだけで御利益があると思われていた。

だから彼らは喜んでカチュアからのプレゼントを受け取った。

そして、彼女は城中の皆を懐柔していったのだ。


その陰で私を陥れる話をそれとなく広めながら……。



「宜しいのですか?クラウディア様」


不意にリーシャが真剣な顔で私に問いかけてきた。


「え?何が?」


「はい。本来、城の人々に称えられるのはいずれ王妃様となられるクラウディア様ですよね?それなのに、『聖なる巫女』と名乗る女性が称賛されるなんて……」


「リーシャ…」


「それだけではありません。城中の人々はあの女性を『聖なる巫女』と信じて疑っていませんが、本当に彼女はそのような人物なのでしょうか?」


リーシャは更に声のトーンを落とした。


「そうね……。貴女が疑うのも無理ないかも知れないわね」



けれど、カチュアが『聖なる巫女』であるのは多分間違いないだろう。何しろ彼女はあっという間に城中の者達だけでなく、『エデル』の国民達の心を虜にしてしまったのだから。

一方の私はカチュアに嫉妬し、嫌がらせをしてしまった。

そのせいで私の悪評はますます高まっていき……気付いたときには何もかもが手遅れになっていたのだ。


「この国の人々が彼女を『聖なる巫女』と称えるのだから、私はその考えに従うだけよ。所詮私は『エデル』にとっては敗戦国の姫であり、人質でしかないのだから」


「クラウディア様……またそのような事を仰って……」


「いいのよ、本当のことだから。私はこの国で静かに暮らしていくつもりよ」


そう、今度の私はカチュアには一切関わらないつもりだ。

今のところ、アルベルトは彼女に興味が無いようだが近い将来必ずカチュアに好意を持つ日が来るはずだ。


それまで、目立たぬように暮らしていくのだ。

宰相やカチュアの機嫌を損ねないように……。


「リーシャ、部屋に戻ったら美味しいお茶でも2人で頂きましょう?」


「そうですね、クラウディア様」



けれど部屋に戻った私の元に、またしてもトラブルが舞い込んできた――。





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