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第2章 14 夕食会に現れた人物

 その後私は部屋に鍵を掛けて、誰も自分の部屋に入れないようにした。

そして部屋のカーテンをしめきると、テーブルの上に錬金術の道具を並べ始めた。


この先、何が起こるか分からない。

自分の身を……。そしてリーシャの身を守るためにも錬金術で薬を作り出して置かなければ。


「やっぱりまず最初に作るのは【聖水】ね。【エリクサー】は別の日に作りましょう」


どうせ、今はすることは何も無いのだ。

アルベルトは私を相手にするはずもない。正式な夫婦になれば私用の予算が割り振られるはず。

それが決定するまでは、恐らく私はこの城で放置状態にされるだろう。


何しろ回帰前がそうだったのだから…。


「とりあえず、今は2瓶だけ作りましょう……」



私は羊皮紙に術式を描き始めた――。




****


「ふぅ……」


気づけば目の前には【聖水】の元になる液体が出来上がっていた。

今はどれくらいの時間が経過したのだろう。

錬金術を駆使している間は途中からトランス状態に入ってしまう。その為に時間の経過が分からなくなってしまうのだ。


出来上がった【聖水】を保存用の瓶に移すと、ドレスルームの奥に隠すように置かれたダイヤル式金庫に【聖水】を入れて鍵を掛けた。


「ふふふ……。回帰前はこの中にはアクセサリーばかりだったのに、今入れるのは【聖水】なのだから、おかしなものね」


今の私はアクセサリーの類など、一切興味は無い。

そんなものを身に着けたところで、今の私には意味が無かった。

そのような贅沢品を買い集めるくらいなら、領民達を助ける為の予算に回す方が余程有意義だ。


「そうだわ…。これからも少しずつ【聖水】や【エリクサー】を作って、トマスに託そうかしら……」


その時、ふと私の為に『エデル』までついてきてくれたスヴェンやザカリーのことを思い出した。


「皆は今頃、どうしているのかしら……」


出来れば酷い扱いをうけていなければいいのだが、今の私にはもう彼らと会える手段は無い。


「せめて元気で過ごしてほしいわ……」



金庫を閉じると、次はカーテンを開けて外を見ると既に空はオレンジ色に染まっていた。


「まぁ……もう夕方になっていたのね」


部屋の壁掛け時計を見ると、時刻は16時半を過ぎていた。


「それにしても疲れたわ……」


ホウとため息をつくと、カウチソファに座った。


いくらこの身体が20歳だとしても、疲れるのは無理もないかも知れない。

何しろ長旅で到着したばかりで、錬金術を行ったのだから。


アルベルトとの食事会が何時から始まるのかは分からないが、呼ばれるまでは部屋で休むことにしよう……。


そして私は目を閉じた――。




****



「…ディア様、クラウディア様」


すぐ側で誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。


「う〜ん……」


誰だろう…?

私を呼ぶのは……。


薄っすらと目を開けると、そこには私を心配そうに覗き込むリーシャの姿があった。


「あ……リーシャ…」


目をこすりながら彼女の名を呼んだ。


「良かったです。お目覚めでいらっしゃいますか?実は先程ダイニングルームにクラウディア様をお連れするようにとメイド長から言われましたのでお迎えに参りました」


「まぁ、もうそんな時間だったのね?」


起き上がって部屋の中を見渡すと、いつの間にか部屋のあちこちに置かれたオイルランプにはオレンジ色の炎が揺れていた。


「リーシャ、今は何時なの?」


「はい、もうすぐ19時になります」


「19時……」


2時間半近く眠っていたようだ。


「それではお待たせしてはいけないわね。行くわ」


ソファから立ち上がるとリーシャに声を掛けた。


「はい、では私についてきて下さい」


そして私はリーシャの後に続き、ダイニングルームへと向かった。



****



「こちらでございます」


ダイニングルームに到着すると、そこにはまだアルベルトの姿は無かった。


部屋の中には給仕のメイドとフットマンが1人ずつ控えており、私を招き入れてくれた。


「お待ちしておりました、クラウディア様。どうぞこちらのお席にお掛け下さい」


フットマンが声を掛けてくる。


「ええ……」


白いテーブルクロスが掛けられた長方形の大きなダイニングテーブルにはそれぞれが向き合うように4つの椅子が並べられている。


訝しみながらも私は着席し、改めて椅子を見つめた。



椅子が4脚……?

一体どういうことなのだろう?


てっきりアルベルトと2人きりの食事会だと思っていたのに……。



すると着席と同時に濃紺のスーツ姿のアルベルトがダイニングルームに現れた。


「何だ?クラウディア。もう来ていたのか」


「はい、陛下」


立ち上がろうとすると、すぐに止められた。


「いや、いい。そのまま座っていろ」


「はい……」


返事をすると、アルベルトは突然足を止めてテーブルを見た。


「何故…椅子が4脚もあるのだ?」


「え?」


アルベルトが用意するように命じたのではないだろうか?


「おい、何故椅子が4脚もある」


アルベルトが給仕のフットマンに尋ねた時……。



「私が4脚出すように命じたのですよ」


背後から声が聞こえて振り向くと、そこにはリシュリー宰相が立っていた。




背後に…『聖なる巫女』カチュアを連れて――。



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