表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/380

第2章 3 城門を潜り抜けて

「ついに…城へ辿り着いたのね‥‥」


私の言葉にスヴェンが心配そうに声を掛けて来た。


「不安か?姫さん」


「…いいえ、大丈夫よ」


首を振って返事をする。


不安が何もないと言えば嘘になるが、回帰前と今とでは状況が異なる。

何故ならあの時は私が『レノスト』国の領地を見捨てて、ここまでやって来たと言う噂が既に城の内外で知れ渡っていたからだ。


けれど、今回は違う。

自分の中では3つの領地を救ってきたと自信を持てる。


スヴェンは少しの間私の顔を見つめていたけれども嬉しそうに笑った。


「そうか?ならいいけどさ」


「ところで城に着いたらスヴェンはどうするの?」


私の問いに何故かスヴェンはチラリとユダを見た。


「…?」


するとユダが一度咳ばらいをすると私に視線を向ける。


「実は、俺がスヴェンの身元を引き受けることにしたんですよ。彼には俺が所属する兵士の上官に兵士見習いとして受け入れて貰えるように頼むことにしたんです」


「ああ、その通りなんだ」


スヴェンが頷き、ユダを見た。


「そう‥‥だったの?」


「ええ、そうなんです」


私の問いかけに頷くユダ。


知らなかった‥‥いつの間に2人はそんな取り決めをしたのだろう?

あれほど、出会った当初は敵対していた2人なのに、今では何となく彼らの間に友情らしきものを感じる。


すると、ユダが前方の隊列を見ると私に声を掛けて来た。


「クラウディア様。先頭の兵士が門を開城して、城の中へ入って行きました。我々も後に続きましょう」


「…ええ」


頷きながら、私は前方の城門をじっと見つめた。


いよいよ……私にとっては敵だらけの城へやって来たのだ……。




 巨大な門扉を潜り抜けると、広大な敷地の広場が現れた。左右には大きな対になった噴水から勢いよく水が噴き出している。

そして眼前にそびえたつ巨大な城を見つめた。


とても美しく絢爛豪華な城……。

ここは回帰前の私にとっては牢獄のような場所だった。

けれど、今の私には何も感じることは無い。アルベルトには元より一切の興味は無いし、本日虹色の雲が現れたと言う事はカチュアも現れたと言う事。


敵国の姫が嫁いでくるよりも、余程の一大事件だろう。



「きっと…今回もアルベルトの代わりに、あの人物が出迎えてくるのでしょうね…」


私は姿勢を正し、馬車の窓から外をじっと見つめた……。



****


城の大扉に到着すると、そこには2人の騎士が立っていた。


馬車は大扉の前で止まると、ゆっくり音を立てて扉が開かれた。


「クラウディア様。城へ到着致しました」


ユダが恭しく頭を下げて来た。


「…ええ」


「…お手をお貸し致しましょうか?」


ユダが小声で問いかけて来た。


「いいわ、私1人で降りられるから…代わりにリーシャをお願い出来る?」


私に手を貸そうものならユダの立場が悪くなってしまうかもしれない。

折角騎士を目指そうとしているなら尚更だろう。


するとスヴェンが前に出て来た。


「いい。俺がリーシャを引き受けるよ。ユダ、あんたはリーダーなんだから報告の義務があるんだろう?」


「あ、ああ…では頼む」


ユダは次に私を見た。


「クラウディア様‥‥申し訳ございません」


「いいえ、大丈夫よ」


私はユダに見守られながら、1人で馬車から降り立った――。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ