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第1章 121 シーラの仲間

「何だっ?!今の騒ぎはっ!」


スヴェンが声を上げると同時に、ユダが扉へ向かって駆け出していく。

他にもその場にいた『エデル』の兵士達もユダの後を追うように慌てて家を飛び出して行く。


「姫さん!」


スヴェンが傍に駆け寄ってきた。


「スヴェン」


「いいか、姫さんは危険だからここにいるんだ。シーラの尋問を続けるんだろう?」


「ええ。そうよ」


そしてシーラを見た。

シーラの目は虚ろになっている。これは私の強い支配下に置かれている状況だ。


「シーラ。この中で仲間はカイロという人物だけなのかしら?」


私は再びシーラの尋問を続けた。


「はい、そうです。同じ組織の仲間です。彼は『エデル』に元々潜入していた人物です。今回『レノスト』王国に錬金術師がいると言う噂を聞きつけ、クラウディア様の輿入れの同行者として行動しております」


「それで私が錬金術師だと気付いたのね」


その人物がユダの話していた真の裏切り者なのだろうか?


「はい。その通りです。本当はもっと早くにクラウディア様を拉致しようと思っておりました。けれどクラウディア様はどうしても最後の領地まで立ち寄る意志が強かったので、ここまで一緒に参った次第です」


シーラの話は少し意外だった。


「もしかして、いつでも拉致出来る状況だったのに…私の為に『シセル』まで同行してきたの?」


「そうです。『シセル』でクラウディア様の目的が達成された暁には我々の組織へ連れ去る予定でした」


それは…彼等なりの私に対する気遣いなのだろうか?

けれど、連れ去るという言葉にスヴェンは敏感に反応した。


「何だってっ?!とんでもない話だなっ!」


スヴェンが吐き捨てるように言ったその時――。


「おい!さっさと中へ入れっ!」

「もたもたするな!」


突如開け放たれたままのドアから両手を後ろに縛られた人物がユダ達によって連れてこられた。

その人物は無口な人物で、私は彼とは口も聞いたことが無かった。


「クラウディア様、この男がカイロです。我らの裏切り者ですよ」


ユダが私の前にカイロを連れてきた。


黒髪に、年齢は20代と見られる彼は憎々しげな目でユダを睨みつけている。


「貴方がカイロね?」


「…ええ、そうですよ。クラウディア様。今まで一緒に旅を続けていましたが、口を聞くのは初めてですね?けれど……まさかこんな薬まで作れるとは驚きですよ。あのシーラを自分の言いなりにするのですから」


カイロの言葉は何処か嫌味を含んでいた。そして彼はすっかり私の支配下に置かれたシーラを忌々しげに睨んだ。


「ええ、そうね。だけど…言いなりにするのはシーラだけではないわ。貴方もよ、カイロ」


「な、何だってっ?!」


カイロの顔に焦りが見えた。


「ユダ、スヴェン。彼を動けないようにしっかり押さえつけてくれる?」


「はい。クラウディア様」

「お安い御用だ!」


「お、おいっ!何をするっ?!離せっ!!」


カイロは必死で暴れるも、力の強いユダとスヴェンに押さえつけられてはひとたまりもない。

私はカイロの目の前で【服従薬】とハンカチをポケットから取り出した。


「お、おい…何をする気だ…?」


彼は私の手にしている瓶を見て顔色を変えた。


「悪いけど、貴方のことも私に服従するようにさせてもらうわ」


そして瓶の蓋を開けて【服従薬】をハンカチに垂らすと、抵抗するカイロの鼻に無言で押し当てた――。





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