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第1章 112 沈む気持ち

 このままではリーシャの命が…っ!

もう【エリクサー】も無いのに……っ!



その時――。


「姫さんっ!」

「クラウディア様っ!」


突然ドアが蹴破られ、スヴェンとユダが部屋の中に飛び込んできた。


「きゃあっ!」


不意をつかれたシーラが叫んだ。


2人に向かって私は必死に叫んだ。


「お願いっ!彼女を取り押さえてっ!」


「え?お、おいっ!何やってるんだっ!」

「やめろっ!」


スヴェンとユダは首にナイフを突きつけているシーラを見て、飛びかかるとあっというまに床に押さえつけた。


「や、やめて!離してよっ!」


必死で暴れるシーラを取り押さえているのはユダ。

そしてスヴェンはシーラからナイフを取り上げると、床にしゃがんで彼女に問いかけた。


「おい、リーシャ。一体どういうつもりだよ。姫さんを心配させるような真似をするなんてお前らしくないじゃないか」


「ああ、そうだ。どうしたんだ?リーシャ」


何も事情を知らないユダも問いかける。


「……」


しかし、シーラは口を閉ざしたまま黙っている。


「違うわ……。彼女はリーシャだけど…中身は別人だったのよ」


私の言葉に驚いたように振り返るスヴェンとユダ。


「「え…?」」


怪訝そうな顔でこちらを見る2人に私は頼んだ。


「お願い、彼女を……シーラの手足を拘束してもらえる?私は…少し外の空気をすってくるから……」


「……」


シーラは私を黙って見つめている。


「姫さん……」

「…分かりました」


スヴェンとユダの返事を聞くと、私は扉へ向かった。



キィ〜…


家の扉を開けて外に出ると、眩しい太陽が差し込んでいた。

周囲はのどかな農村の光景が広がり、あの毒霧に覆われていた光景が嘘のようだった。


「良かった……。これで『シセル』の村は救えたわ……」


けれど、私の心は少しも晴れることは無かった。


信じられない。

信じたくは無かった。


まさか…リーシャが私の知るリーシャでは無かったなんて。

私は偽物のリーシャとここまで旅をしていたなんて……。


「どうしよう……」


力ずくでリーシャの中からシーラを追い出すなど不可能だ。大体、人の精神を乗っ取ることが出来る魔法など、回帰してから初めて知った。


「どうしてこんなことになってしまったのかしら……。回帰前、私と一緒に『エデル』についてきて来れたのは……シーラだったのかしら……?」


その時、ふと目の前の畑に目が止まった。

その畑はすっかり毒が抜けたマンドレイクの畑だった。


「マンドレイク……」


その時、私の中にある考えが閃いた。

マンドレイクは錬金術を行なう際、よく素材に使われる。


「そうだわ……あの薬を作ってみれば…」


目の前のマンドレイクを引き抜く為に畑に近付いた時……。


「クラウディア様」


不意に背後から声を掛けられ、振り向いた。


「ユダ……」


そこに立っていたのは神妙な顔つきのユダだった。


「ユダ、彼女は…シーラはどうしているの?」


「シーラとは…リーシャのことでしょうか?」


「ええ、そうよ」


「リーシャは今、スヴェンが見張っています。クラウディア様の仰る通り、手足を拘束しておりますが……何を尋ねても無言なのです。一体どういうことなのでしょう?とても同じ人物には見えませんでした」


「同じ人物に見えなくて当然よ。だって彼女はリーシャでは無かったのだから」


「え?何ですって?」


ユダが眉を潜めた。


「あの中に入っている人物は錬金術師を探している組織に属する人物で、シーラというそうよ?」


「シーラ?」


「ええ。シーラはリーシャの身体を盾に使って、私を脅迫して……自分達の組織に連れて行こうとしていたのよ」


「え……っ?!」


ユダが息を飲んで私を見つめた――。

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