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第1章 107 残るわだかまり

「他の『エデル』の人達はどうしているの?」


私はリーシャに尋ねてみた。


「はい、皆さんは今別の場所で休んでおられます」


するとザカリーが教えてくれた。


「ここの家の付近で皆さん休んでいます。何しろ今はまだ夜明け前の時間なので」


「夜明け前……ということは今何時なの?」


「今午前4時頃です」


「そうなの……」


するとスヴェンが近付いてくると声を掛けてきた。


「姫さん。夜が明けるまではまだ時間があるんだ。まだ休んでいたほうがいいぞ?」


「そうです。クラウディア様は大分お疲れのようです。【聖水】を使った解毒作業は朝になったら始めましょう」


次にユダが距離を詰めて声を掛けてくる。


「おい、ユダ。お前姫さんと距離が近い。もっと離れろ」


「スヴェンこそ何を言う。いつもいつも何かと言って、クラウディア様の側から離れないだろう?」


「当然だ、俺は姫さんの騎士だからな」


「まだそんなことを言うのか?お前はただの民間人だろう?」


「何だと?貴様……」


スヴェンの眉が上がる。


「いつでも相手になってやるぞ?」


そして……再び2人は口論を始めてしまった。


「あ〜あ…。又しても口論を始めてしまいましたね。クラウディア様、もうあの2人は放っておきましょう」


「え、ええ……そうね」


リーシャに促され、返事をした


「王女様、俺たちで王女様とリーシャさんが休める家を用意しました。夜明けまでその家でお休み下さい」


ザカリーが私とリーシャに話しかけてきた。


「そうね、それは助かるわ」


「それでは参りましょう」


こうして私とリーシャは未だに歪みあうスヴェンとユダを残してその場を後にした。




****


「どうぞ、こちらの家でお休み下さい。ベッドも2台ご用意しております」


ザカリーが案内してくれた家は先程目覚めた家の2軒隣にある家だった。


「どうもありがとう」

「ありがとうございます」


リーシャと2人で交互に挨拶すると早速家の中へ入った。


家の中はきちんと片づけられており、ベッドは清潔に保たれていた。


「ありがとう、あなた方は大変な時だと言うのにベッドまで用意してくれて」


連れて来てくれたザカリーにお礼を述べた。


「いえ‥‥王女様に失礼な態度を取ってしまったお詫びにもならないのですが‥‥」


「そんなことはいいのよ。あなたがたの怒りは当然なのだから」


「いえ。それでもやはり王女様に怒りの矛先を向けるのは間違えていました。そちらにいるリーシャさんに散々責められて……目が覚めました」


ザカリーは恥ずかしそうにリーシャを見た。


「え……?そうだったの?」


「ええ。当然ですよ。クラウディア様は何一つ悪いことはされていないのですから」


憤慨したようにリーシャは腕組みすると、ザカリーをジロリと見た。


「はい。もう心から反省しております。本当に申し訳ございませんでした。それではごゆっくりお休みください」


ザカリーはそれだけ言い残すと、家を出て行った。



バタン……


「クラウディア様。もう【聖水】の用意は出来ているのですよね?」


扉が閉じられると、早速リーシャが話しかけて来た。


「え?ええ。出来ているわ」


どうしよう……何か尋ねられるだろうか?


内心ドキドキしながら返事をした。


「そうですか。それは良かったです。なら今日中にこの村の解毒作業をすることが出来ると言う事ですよね?」


「そうなるわね」


「それなら今日は忙しくなりそうですね。ではクラウディア様、すぐに休まれた方が良いですね。お着換えされますか?」


「いえ、いいわ。どうせ着替えも持ってきていないし」


「あ、そう言えばそうでしたね。ではもうお休み下さい。8時に朝食を用意して下さるそうなので」


「分かったわ」




そして私達はそれぞれベッドに入り、短い仮眠をとることにした。


「……」



ベッドに入るとすぐにリーシャの寝息が聞こえて来た。


リーシャの寝息を聞きながら思った。


何故、リーシャは何も私に尋ねてこないのだろう……と。


恐らく私が錬金術師なのは、既にリーシャにバレてしまっているはずなのに――。






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