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第1章 99 ザカリー

 地下道には大きな鉄格子がはめられ、まるで檻のようになっていた。

その中には4人の男性たちが足かせをはめられて拘束されている。


彼等は皆目が血走り、獣のような咆哮を上げている。


「こ、これは……」


私は彼等を見て息を飲んだ。

間違いない。これはマンドレイクの毒が回って狂乱状態に陥っているのだ。


「どうだ?温室育ちのお姫様には衝撃的な光景だろう?だがな…これがマンドレイクの毒に侵された者達の末期症状だ。俺たちの仲間は皆…このような状態になって最期は死んでいった」


松明の明かりで彼等を照らしながらセトが話している。


「あの中の1人が俺の父親だ。最近までは…まともだったのに、今じゃあんな状態だ」


ザカリーはすべてを諦めたような……冷めた口調で檻の中で呻いている3人の男性を見つめている。


「さぁ、あんたなら彼等を助けることが出来るんだろう?一体どうするんだ?」


別の男性が声を掛けてきた。


「これを使います」


私は荷車の中から持ち出してきた瓶をメッセンジャーバッグから取り出した。そこには透明の液体が入っている。


「これは【聖水】です。これを飲めば解毒出来ます」


毒が全身に回っていなければ【聖水】を飲まなくても、身体にかければそこから体内に浸透してくれる。けれど彼等のように全身に毒が回ってしまえば口から摂取しなければ解毒するのは不可能だ。


「おい、本当にそれが【聖水】なのか?嘘じゃないだろうな?」


ザカリーが私の左腕を強く掴んできた。


「…っは、はい…そうです。嘘ではありません……」


痛みに堪えながら返事をした。


「本当は【聖水】ではなく、毒なんじゃないだろうな?俺たちを騙して毒を飲ませて…殺して証拠隠滅するつもりなんじゃないだろうな?」


尚も腕を握る力を強めてくる。


「そ、そんなこと……しません…第一、証拠隠滅なんて…考えたことすらありません」


するとそこへセトがザカリーに声を掛けた。


「おい、やめろ。とりあえず腕を離してやれ」


「…チッ」


ザカリーは私の腕を乱暴に離すと睨みつけてきた。


「この【聖水】を毒だと疑うのなら、私が試せば良いですよね?」


「何?」


ザカリーが眉をひそめた。


「私がこの【聖水】を飲んで、何ともなければ信用して頂けますか?」


「…ああ、そうだな」


頷くザカリー。


「…分かりました」


持参してきた木製コップをバッグから取り出すと、瓶の蓋を開けて【聖水】を注ぎ入れた。


「飲みますから見ていて下さい」


私の言葉にその場にいた全員が頷く。

そこで私はコップを傾けると一気に飲み干した。


ごくっ

ごくっ

ごくっ


「……飲みました」


全員の前に空になったコップを見せた。


「どうですか?私に何か異変でもありますか?」


「…特に無いな」

「ああ、何とも無さそうだ」

「毒では無いようだな…」


「……」


けれど、ザカリーだけは黙っている。


「どうですか?私は何ともありませんよ?これで信用して頂けますか?」


「毒では無かったかもしれないが、まだ効果があるかどうかは分からないだろう?」


何処までもザカリーは私を疑う。


「それはあの人達に【聖水】を飲ませれば分かることです。ただ、私1人ではあの人達に飲ませるのは不可能です。お手伝いして頂けますよね?」


私はザカリーに尋ねた。


「ああ、いいだろう。この俺が本物の解毒薬かどうか見極めてやる」


ザカリーは不敵な笑みを浮かべながら返事をした――。

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