表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/380

第1章 98 地下に響く呻き声

 私は縄で両手を縛られた状態で、『シセル』に居残った男性達に取り囲まれるよう

に地下道を歩いていた。

白髪交じりの男性は私を縛り付けている縄を手にしている。


「お前が王女だろうが何だろうが関係ない。何しろ国は亡びたのだからな。所詮敗戦国の姫など飾りでしか無い」


縛り付けた縄を手にしている男性が憎悪の目を向けて来た。

その目を見ただけで、私達王族がどれほどまでに『シセル』の村人たちから憎まれているのかが良く分かる。


「はい」


その言葉にうなずき……そっと、周囲の状況をうかがった。

周囲には私を取り囲むようにカンテラを持って歩く男性達がいる。彼らの視線は白髪交じりの男性と同様だった。


誰もが私を睨みつけ‥‥その視線だけで息が詰まりそうだった


「いいか?決して逃げたりしようなどと愚かなことは考えるなよ」


「分かっています。…ところで貴方はこの村の村長さんですか?宜しければお名前を教えて頂けますか?」


「俺の名はセト。ただし、村長ではない。この村の村長はマンドレイクの重い中毒になって、頭がおかしくなっちまったから代理を務めているだけだ。何しろ村長は村が毒霧に包まれてからずっと解毒方法を探す為にマンドレイクを調べていたからな。ちなみにお前の隣を歩く若者は村長の息子のザカリーだ」


「え……?」


隣を歩く青年は、私が倒れているところを助けてくれた男性だ。


「‥‥…」


彼‥…ザカリーは一言も話さず、ただ鋭い視線を私に向けてくる。


「申し訳ございませんでした…」


縛られて歩きながら、私はザカリーに謝罪した。


「俺たちが望んでいるのは謝罪の言葉なんかなじゃない。本当に解毒できるかどうかだ。もし出来なければ……命は無いと思え」


ザカリーはぞっとする言葉を口にした。

今回の旅の道中でも幾度も危険な目に遭ってはきたものの、これほどまでに命の危機を感じたことは無かった。


それは常に私を助けてくれる仲間たちがいたからだ。

でも…今、彼らはここにはいない。


皆はどうしているのだろう?

『シセル』の村の解毒はある程度は出来たのだろうか‥‥?


すると、突然前を歩くセトが振り返った。


「何だ?随分肝が据わっているな?ザカリーに『命は無いと思え』と言われているくせに。それとも俺たちが本当にお前の命を狙っているはずは無いと思っているんじゃないか?言っておくが‥‥俺達は全員本気だからな」


その声はゾッとするほどに冷え切っていた。


「フン!怖くて声も出せないんじゃないか?」


茶色の髪の若者が鼻で笑った。


「…皆さんが本気だということは分かっています…」


私は既に2回も命を落としているのだ。

死ぬのが怖くない‥‥と言えば嘘になるが、一瞬思ってしまった。


もし、今ここで死んだ場合‥‥再び私は日本人として生まれ変わって両親や夫、そして子供たちに再び巡り会えるのだろうか……と。


その時‥‥。



うぉおおおおおおーっ!



地下道の奥から恐ろしい唸り声がきこえてきて、思わず肩がビクリと跳ねてしまった。


「あの奥がマンドレイクの末期中毒患者たちが収容されている地下道だ。どうだ?恐ろしいだろう?逃げたいんじゃないか?だが…彼らを治療するまでは逃がさないからな?それにもし助けられなければ‥‥その時は死んでもらう」


セトの声はゾッとするほどに恐ろしい声色だった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ