557【ウィリアムSide】――事件の調査と深まる疑心
この国に来てから見慣れるようになった王城の貴賓室に戻ってきたあと。
アリスやセオドアが俺の方へと『ノエルや、ダヴェンポート卿の様子はどうだったのか』と聞いてくる中で、俺は、苦々しい表情を浮かべながら、アリスが怪我をしかけてしまったことや、ノエルと学院内で、植木鉢を落としてきた犯人についての調査をしていたことを思いだしていた……。
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そもそもの話、帰り支度を終えて、俺が講師を務める経済学部まで迎えに来てくれたアリス達と一緒に、馬車まで向かう道中、オルブライトが置きっぱなしにしていたという疑惑のあるナイフを、アリスが誤って握り、怪我をしてしまったということを聞いて、心の底から大丈夫なのかと心配していたのもつかの間。
学院を出た瞬間に、今度は、アリスの頭上目がけて、植木鉢が降ってきたことで『危ない……っ』と咄嗟の機転を利かせて動いたセオドアとルーカスと同様に、アリスを助けようと動いた瞬間にはもう、時を司る能力が発動してしまい。
近くにいたのに助けることも出来なかった俺は、無力感と悔しい気持ちに苛まれながらも『状況の確認をしに学院の4階へと調査をしに行く』と言ってきたノエルについて行くことに決め、自分に出来ることとして、王城へと、アリスを帰してやることしか出来ずにいた。
アリス自身、今も、俺たちの話を聞きながらも、まだまだ、生気を失ったように青白い顔のままでいることを思えば、本来なら直ぐにでも休んでほしいんだが、それでも、責任感の強さから、俺たちから、しっかりとした事情を聞くまでは、休むことはしない方が良いと判断しているのだと思う。
その上で、能力を使ったあと、逆流するように出てきてしまった血を口から吐き出すこともなく、ただただ、ひたすらに飲み込んで耐えることすらも、もの凄く気持ちが悪かっただろうし。
この瞬間にも、俺たちに心配をかけないように無理をしているのだろうなというのが伝わってくるだけに、俺自身、どうして、もっと早くに動いてやれなかったのかという苦々しい気持ちが沸き上がってくるのを抑えることが出来なかった。
だからこそ、何としてでも、植木鉢を落としてきた犯人が分かればという思いで、俺は、アリス達と別れてから、ノエルと一緒に、誰が植木鉢を落としたのか探るため、急ぎ学院の4階まで向かって行ったのだが……。
「なぁ、ウィリアム……。
あんなことがあった以上、勿論、驚くのも無理はないなって感じるんだけど、アリス姫は、いつもあんな風に顔面蒼白になる感じなのか……っ?
いや、俺自身、ナイフで怪我をした時なんかのアリス姫を見ていたら、比較的、ああいうことが起こったあとは、いつも耐えるような感じで、周りに心配をかけないようにって、あまり感情を表に出さないように心がけているっていうかさ。
常に、周りのことばっかり気に掛けているような、そういうイメージだったから……、あんなにも顔面蒼白になっているアリス姫を見たのが初めてのことでビックリしてるんだ」
と、その道中で、突然、ノエルからそう言われて、俺は内心の動揺を悟られないため、表情にはおくびにも出さないように気を付けながらも。
「アリスが周りを気遣うのはいつものことだし、今日も、俺たちのことを気遣っていたとは思うが、流石に、上から植木鉢が降ってくるような状況に対峙してしまったんだ。
普通なら、誰しもが恐いと思うような場面だし、当然のことだろう……?」
と、慎重に声を出していく。
実際、自分が狙われて、あれだけの目に遭っている状況下で、恐慌状態に陥らずに正常でいられる人間なんて殆どいないだろう……。
そんな中でも、アリスは自身の能力で状況の把握が一早く出来ていただろうから、動揺をしながらでも、冷静に対応することが出来ていた方だと思う。
それでも、能力を使った反動で、どうしても、生気を失ったように顔面蒼白になってしまったことに関しては、確かに、普段から、俺たちに対しても、心配をかけないよう『大丈夫だよ……っ!』というような表情をすることの多いアリスからしたら意外なことだったのかもしれないが。
アリスの顔色が変わったことについては、恐怖からくるものだと思ってもらえるはずだと感じていただけに、ノエルから、こういった質問が降ってくると、どうしても身構えてしまうというか、探りを入れてきているような気がして、疑わざるを得ないなとも思ってしまう。
今日だって、ノエルが言っているように、アリス自身が『大丈夫なので、心配しないでください……っ』と、俺たちに必要以上に心配をかけないように視線を向けるような瞬間だって、決してなかった訳じゃない。
だけど、魔女のことに詳しい、ノエルがそう言ってくるということは、アリスが顔面蒼白になった理由について『魔女の能力が発動してしまったからなのではないか』という意味合いが、その裏に見え隠れするように、多分に含まれているような気がしてならなくて、俺はノエルに対する警戒心を跳ね上がらせていく。
それに、アリスが、レイアードから聞いた内容について、俺たちが留学をしに来ていることで、ソマリア側にいる誰かが影で暗躍しているような感じになっていて、その裏側にいる人間の思いとして『アリスが魔女だと知りたい』と感じた上で動いていると考えれば、積極的にアリスと交流を図りたいと接触してきているダヴェンポート卿と、そうして、同じように、アリスに対して交流を図ってきているノエルが、かなり怪しくなってくるのは間違いないだろう。
だからこそ、今、この瞬間に、踏み込んだような質問をしてくるノエルのことは、どうしても疑わしいと感じてしまう。
『それから、本当に、オルブライトがこの件に関わってきているかだが……。
それについては、可能性としてあり得ない訳じゃないが、2番目の事件に本当に関わってきているかどうかは今ひとつよく分からないままだな』
そうして、俺が、現状の整理をするように、頭の中で、ノエルのことや、オルブライトのことについて、あれこれと熟考しているうちにも、学院の4階には、あっという間に辿り着いた。
階段をのぼったあと、廊下から遠目に見たときにも感じていたことだったが、確認するように近寄ってみれば、なおのこと、下から見ていた時と変わらず、4階の廊下にある窓のうちの真ん中が不自然に一つだけ開いていて、その場所が、丁度、学院の玄関口の真上になっているのは間違いないだろう。
更に、窓に手をかけて下を覗き込んでみると、窓枠の下に飾ってあった植木鉢の壁掛け用のフックが一つだけ外れており、そこにあった植木鉢が、下へと落ちてきたのだということは、俺の目からも確認することが出来た。
『アリスの頭上に植木鉢が落ちてきた時、風はかなり強めに吹いていたが、他の植木鉢に関しては、しっかりと止まっていたみたいだし、ひとつだけが、元々、外れ掛かっているような細工をされていたというのなら別だけど、自然に外れてしまったということは考えにくいだろう。
……ましてや、明らかに狙って、その頭に植木鉢を落とされていることを考えれば、どう考えても状況的に見ても、4階にいた人物が犯人である可能性はかなり高いはず……』
俺が窓の枠も含めて、念入りに植木鉢が飾ってあった場所などの調べを進めていると、同じように窓枠を覗き込んだノエルが僅かばかり眉を顰めながらも『……あー、これに関しては、どう考えても、明らかに誰かの故意によるものだよなっ……っ!?』と声を出したあと。
「……さっき、アリス姫の頭上に植木鉢が落ちてきた際に、俺自身も、誰かの影が、4階の窓際で横切ったのが見えたから、そいつが犯人の可能性は滅茶苦茶高いんじゃないかっ?」
と、はっきりと、この場の現状を見た上で、そう言ってくる。
その言葉には、概ね、俺自身の意見とも同じだということもあって、確かに頷ける意見だなとは思ったものの、何かが引っ掛かるというか、違和感を感じながらも……。
『まだ、見落としていることがあるかもしれない』と、思いながら、ほんの僅かでも良いから他に手がかりになるようなものが落ちていないかと、証拠を探していったものの、そう易々と証拠が残っている訳もなく。
『流石に、そこまでのヘマはしていないのだろうな』と、俺は思わず難しい表情を浮かべたあとで、それならばと、植木鉢を落とした犯人の目撃情報などはなかったかと周辺への聞き込み調査を開始してみた訳だが。
事件当時、学院の4階の部屋などを使ってサークル活動をしているような者は、殆ど0に近いといってもよく、4階には人の影も全く見当たらなかったことから、犯人自身も、そのことは分かっていて、敢えて、4階の一目につかないような場所から、植木鉢を上から落としたと考えるのが妥当だと言えるだろう。
その上で、4階での聞き込み調査が出来ないと踏んで、一階下の3階で聞き込み調査を開始してから、学生の一人が4階に上がった人物を見たと証言してきて浮上した人物は、『記憶も曖昧で、うろ覚えにはなってしまうものの、おそらくは、見た事も無いような外部の人間っぽい人だったと思う』ということで、ここでも、オルブライトが関わった可能性の方が濃厚になってきてしまった。
実際に、もしも、本当にそうだというのなら、オルブライト自身が、全ての講義が終わったあとの、この学院の4階については、学生に関しても、講師に関しても、人が殆どいなくなって手薄になるということを事前に知っていなければいけないとは思うが……。
「……っていうことは、目撃情報から考えても、何が目的かは分からないが、やっぱり、オルブライト伯爵がアリス姫を狙ってきてんのかもしれないよな……っ!?」
そんな中で、ノエルがそう言ってきたことに、俺はただただ眉を寄せて難しい表情を作り出した。
状況的な証拠で言うのなら、ノエルの言う通りである可能性の方が高いのは確かだろう。
だけど、ノエル自身が知らないのか、それとも分かっていて、敢えて、そう言っているのかは分からないが……。
もしも、この一件に、あの男が関わってきているのだとしたら、外部の人間であるオルブライトがそれを知るために『普段から、4階に人がいなくなるという学院側の事情を知っていて、それを教えてくれる』ような、ソマリア側の人間も、この一件に関与している可能性があるんじゃないかと俺は思う……。
まぁ、勿論、俺がここまで考えられるのは、あくまでも、レイアードが、アリス達に対して『この外交が、シュタインベルクの利益になることはないし、絶対に、この国にはいない方が良いから、今すぐ、全ての荷物を纏めて、自国に帰るべき』というようなことを言ってきたからこそであり。
その裏に、ソマリア側の人間が何かしてくるんじゃないかという警戒心を持てていたからで……、本来なら、ソマリアへの疑心なども何も抱いていない状態だっただろうから、ここまでのことを考えられるにしても時間がかかっていたかもしれないし、そこまで深く疑うことはしていなかったかもしれない訳だが。
その件について、俺たちが『ソマリアの人間を疑っている』ということを、ノエルは知らない訳だから、見方を変えれば、今、この瞬間にも、ノエルが、オルブライトだけに罪をなすりつけようとしているとも取れなくはない。
それに、ノエル自身が、度々、俺たちには隠そうとしているような雰囲気を醸し出しながらも、アリスに向ける表情として、まるで、底なしの沼のように暗い感じの視線を表に出す時があるのが、俺は少し前から、ずっと気になっていた。
普段が、からっとしていて、明るい分だけ、まるで一転して、深い海の底のような、暗く澱んだようなその瞳は、決して、綺麗なだけではいられないと知らしめているようにも見えて、そういう目をする瞬間があるからこそ、どうしても警戒心のようなものは沸き上がってきてしまう。
更に言うなら、そんな状態のノエルが、多少なりともアリスに執着して近づいていきたいと思っているのだということは、要所、要所で、伝わってくるし、『俺も、アリス姫とは、もっと関わりたいと思っている』というような言葉を俺たちに言ってきていることからも、そのことを隠す気はないみたいで、度々、そういった部分が垣間見えることがあるからこそ、そういう意味でも心配はしている訳だが……。
そうして、内心でノエルのことを疑いつつも、調査を終えた俺たちが、学院長にそのことを報告しに学長室に向かうと、そこに、俺自身が怪しんでいたもう一人の人物である、ダヴェンポート卿がやって来ていて、学院長と外交官であるヨハネス殿と一緒に、3人で学長室にある革張りのソファーに座って、話を進めていた。
恐らく内容としては、今度の学院で開催されるイベントのことなどについて、密に相談や連絡を取り合っているという感じになるのだろう。
この学院自体、国が運営しているようなものだということで、外交官であるヨハネス殿は、普段は、そうではないみたいだが、ダヴェンポート卿は、割と頻繁に学院に来て、学院長と、そういったことについて深く話しをしたりもしているらしい。
だからこそ、今回の留学にあたって、学院に通う前に、俺たちのサポートの任に、シュタインベルクから来た誰かが付くようになると話してきたあとで、度々、俺たちの様子を見に学院まで視察に来てれたり、気に掛けるつもりだというようなことも言っていた訳だしな。
それから……、そのあと、俺たち二人がやって来たことで、ソファーから立ち上がり、挨拶もそこそこに、『一体、どうしたのか……?』という視線を向けてくる三人に対して、俺たちが、といってもノエルが話すことは殆どなく、俺自身が今さっき起きた事件について、しっかりとした事情を話していけば、直ぐに、ダヴェンポート卿もヨハネス殿も俺の方を見ながら驚きに染まったような表情を見せてきた。
そうして……。
「……まさか、私達のいないところで、そのようなことが起きていただなんて、思いもしていませんでした……っ!
いやっ、それは、それは、本当に大変でしたよね!? ……皇女様はご無事で……っ?」
と、此方に向かって聞いてくるダヴェンポート卿に対しては、そこまで違和感を感じなかったものの。
そのあと直ぐに……。
「アリスについては、気が動転していただろうから、俺の判断で、先に王城へと帰らせることにしました」
と伝えた俺に対し。
「そうでしたか。
……何にせよ、お怪我がないようでしたら本当に良かった。
しかし、皇女様のことは、本当に心配ですので、私自身も気に掛けたいと思っていますし、世話役であるアルフには、特に、これまで以上に気に掛けておくようにと伝えておきましょう……!
外交相手としても、皆様に、何か起きてしまうことは、一番、気を付けなければならぬことですからねっ!」
と、念押しするように言われたことで、俺はそれが親切でそう言っているのか、その裏に何か他の意図が隠されているのかと分からずに、思わず勘ぐってしまった。
アルフというあの男が、ダヴェンポート卿が一番に信頼している腹心の部下であるのは間違いないだろう。
だが、どちらにせよ、これが、親切から言っている場合でなければ、本当に上手いこと隠されながら、俺たちのことについて深く探ってきている可能性が高く、一瞬たりとも気が抜けないなと、内心で思う。
そのあとも、ダヴェンポート卿は、俺が学院長に今後の学院の警備を強化してほしいと願い出た際にも『それは、是非ともそうするべきだと思います』といった感じで、最後まで、俺に寄り添った上で、尻尾を見せるようなことはなかったと思う。
それが演技なのか、そうじゃないのか、俺の目から見ても見破ることが難しかっただけに、ノエルに関しても、ダヴェンポート卿に関してもかえって怪しく見えてしまって、どちらに関しても、それなりに疑わしい部分はあるなと思った訳だが。
そのあとは、ノエルに関しても、ダヴェンポート卿に関しても、それ以上、特別、怪しい言葉を俺にかけたりするようなことはなく、普通の遣り取りしか出来なかった。
……俺が、今、ここで、アリス達と別れてから、ノエルと一緒に行った調査報告についての説明を、アリスも含めて、セオドア達にしていくと、そのことに聞き入りつつも、俺以外の全員が、ノエルや、ダヴェンポート卿のどちらかが怪しいとは感じていたみたいで、グレーなのがバエルなんじゃないかといった感じに話が纏まっていった。
だが、今回の事件も、オルブライトが絡んできている可能性もあることを思えば、複数の人間がこの件に絡んできているのは何ら可笑しいことではなく、ダヴェンポートとノエルが一緒に共同で何かをするということは、その関係性からもあり得ないとは思うが、他の人間が裏で関わってきている可能性はあるのかもしれない。
「とりあえず、ノエルに対して注意するのは勿論のこと、ダヴェンポート卿と、その部下であるアルフには特に気を付けるようにしてくれ。
……今後は、特に、俺たちの様子を探ってくるような素振りを見せてくるかもしれない」
そうして、俺が注意喚起をしたあと、既に、アルフに関しては、怪しい素振りで俺達のことを探ってきているかもしれないと、セオドアが俺がいなかった時のことを口に出して教えてきたあとで……。
この場にいる全員が、真剣な表情で俺の言葉に頷いたのを見届けてから、俺がいなかった時にも全員でそういった話になったらしく、今回の事件や第二の事件の時の犯人についての考察を進めていたことについて、ルーカスや、セオドア、アリス、アルフレッドの口から話を聞いたことにより。
アリスが、今までのことまで含めて。
「オルブライトさんが関わってきているのなら、国の重鎮でもある宮廷伯の誰かが怪しくなるかもしれません。
あの……、私自身も宮廷伯の人達の関わりについては凄く疑っているので……。
ルーカスさんにもお願いして、御手紙を書いてもらうついでに、彼等のことも、エヴァンズ侯爵に聞いてもらうことにしたんです」
と言ってきたことについて、その視点は、俺にはなかったことだなと感じながらも、アリスがその話をした時に、セオドアの表情が一瞬だけ、あまりにも険しくなったことから……。
俺は、そのことに違和感を感じて、セオドアに対して。
「……?? 今、アリスがその話をしていた時に、一瞬だけ、厳しい表情をしたけど、セオドア、お前は、宮廷伯が絡んできているかもしれない可能性について、何か思うところがあったのか……?」
と、聞いてみたんだが、俺の言葉に、ほんの僅かばかり視線を上げたあと、それまでの表情をパッと覆い隠すようにしながら『いや、別に、何でもない。……気にしないでくれ』と、普段、ハッキリと言葉を伝えることの多い、セオドアにしたら、あまりにも曖昧な感じに誤魔化してきたことで、俺はそのことに少しだけ眉を寄せたものの。
その瞬間……。
恐らく、能力を使ったことで、ここまで、本当に、俺たちにも心配をかけないように気を張って、無理をしてしまっていたのだろう……。
ソファーに座ったままではあったが、『……ぅっ、ふぅっ』と、小さく苦しそうな声を漏らしたあと、ふらっと、目の前で、アリスがよろけたことから『姫さんっ……!』や『お姫様っっ!』と、セオドアやルーカスが直ぐに動いたのと、俺や、アルフレッドが『アリス……っ』と声をかけたのは、殆ど同時のことで……、俺たちは、慌ててアリスに駆け寄っていく。
そうして『っ……、ぅぅっ……、はぁ……っ、はぁ……っ、』と、溢れ落ちる、辛そうな吐息に、胸を抑えて苦しみ出したアリスに、先ほどまで少し戻っていた顔色が、また青白くなってしまっていることから、無理が祟ってしまった結果だろうと判断した俺は、直ぐさま、セオドアと一緒に……。
「姫さん……、アルフレッドに癒やして貰ったとはいえ、まだまだ、しんどいんだろう?
出来れば、今日はもう、本当に無理をせずに、ベッドで横になって休んでくれ……っっ!」
「あぁ、セオドアの言うとおりだ、アリス。
このあと、もしも、万が一、ダヴェンポート卿の部下であるアルフや、他の人間などといった来訪者が来たとしても、俺たちの方で、上手いこと誤魔化すことも出来るんだから、どうか無理だけはしないでくれ……っ」
と、声をかけることにして、そんな俺たちに向かってアリスが、ほんの僅かばかり顔を上げ。
「ごめんなさい。
セオドアも、お兄様も、本当にありがとうございます……っ」
と、申し訳なさそうな表情を浮かべたのを見て『そんなことは気にしなくていい……!』と感じながら、俺は、アリスの侍女である二人に視線を向けて、冷たいタオルなどの手配をするように視線でアイコンタクトを交わしたあと、今、自分に出来ることとして、この場にいる全員と連携を取って、アリスのことを介抱していくことにした。