525 行くことを拒まれた、離れの棟の秘密
王城へと戻ると、玄関ホールで、何人かのソマリアの侍女達が頭を下げ『お帰りなさいませっ、ウィリアム様っ! アリス様っ!』と、手厚く持てなすよう、私達のことを出迎えてくれた。
シュタインベルクでは、普段、私の身の周りの世話として、髪の毛を結ってくれたり、ドレスを着せてくれたりなどといった身支度を手伝ってくれたり、衣装や装飾品などの管理をしてくれる役回りだけではなく、私のお世話に関して、部屋の掃除や、食事などといったことも含めて全て、ローラとエリスが担ってくれていたけれど。
ソマリアでの、ローラやエリスの仕事は、主に、ソマリアへと持ってきた私達の荷物の管理をしてくれたりする役目を持ちながら、ソマリア側が私達に宛てがってくれている専属の侍女達に指示を出してくれたり、私の身支度を手伝ってくれたり、学院以外で、従者を伴って外に出る必要がある場合などにお供をしてくれたり、紅茶を淹れてくれたりといった、私達の身の回りのことだけを気にかけてくれる特別な侍女という立ち位置にいて……。
今、私達に『お帰りなさい』と挨拶をしてくれた、ソマリア側が私達に宛てがってくれた専属の侍女達は、主に寝室などのベッド周りを整えてくれたり、寝室だけじゃなくて、貴賓室として用意されている全ての部屋の掃除をしてくれているハウスメイドと呼ばれる人達や、シーツなどの洗濯業務を担ってくれているランドリーメイドと呼ばれる人達だった。
私自身、この1週間ほどの間に、彼女達とも話させてもらう機会が増えていることもあって、彼女達の顔や名前についても、一人一人、覚えることが出来ていたし。
あくまでも国賓である私達と、彼女達の間には、正式な主従関係はないから、私達に対しては、どうしても王城に来たお客様への対応になってしまって、距離感があるのは仕方がないことだと思うんだけど。
それでも、私が普段通りに柔らかな感じで接していると、彼女達は驚いた様子ながらも、直ぐに、それまで以上に、大事なお客人として、より丁寧でありながらも、少しだけ心を開いたような雰囲気で接してくれるようになっていた。
――そう、彼女達は、本当に普通に、一国のお城に勤めている従者として自分達の仕事を全うしながら、私達のことを手厚く持てなしてくれているんだよねっ。
だから、今まで、そこに違和感を抱いたことはないし、彼女達の中に怪しい人物がいるということは絶対にあり得ないと思う。
そうして、私が彼女達からの丁寧な挨拶に『ただいま戻りました』と、微笑みながら声をかけていると、ハウスキーパーの仕事を任されている、侍女の一人が……。
「皆様、お帰りなさいませっ……っ!
初めての学院生活で、気苦労なども多く、きっとお疲れのことでしょう?
夕食までの間に、少しでも、お腹の中に入れることが出来る簡単な軽食などを、厨房のシェフに作ってもらって、貴賓室まで持って行くように手配しましょうか?」
と、声をかけてくれたものの、私はお兄様達と顔を見合わせて、その有り難い気遣いに、ふるりと首を横に振ってから、丁重に断ることにした。
とりあえず、帰りの馬車で、みんなとも話していたんだけど、王城に戻ってきたら、休憩をするよりもまず先に、ダヴェンポート卿とヨハネスさんに、初日の学院生活がどうだったのか報告をしに行った方が良いだろうという話で落ち着いていたから、そっちに向かうべきだよね……っ。
「お気遣い頂き、本当に、ありがとうございます。
ですが、折角の美味しい夕食が入らなくなりそうですので、今日のところは、ご遠慮させてもらいますね……っ!
あの……、それで、もしも、ご存知なら教えて欲しいんですけど、ダヴェンポート卿や、ヨハネスさんが、今、どちらにいらっしゃるか知っている方はいますか?
出来れば、これから、学院での初日の生活がどんなものだったのか、報告をしに行きたいのですが……っ」
そうして、彼女達の目をしっかりと見つめながら、あくまでも、先ほど、レイアード殿下から、学院の廊下で色々と気になることを言われてしまったことについては、一切、触れることもなく。
これから、ダヴェンポート卿と、ヨハネスさんに会いに行きたいと思っているのだという旨を伝えると、丁度、そこに何かしらの仕事を終えて、偶然、通りがかったアルフさんと出くわして。
「皆様、お帰りなさいませ。
先ほど、お戻りになられたんでしょうか? 直ぐに、対応出来ず、申し訳ありません」
と、仰々しい仕草で頭を下げられてしまった。
使用人頭のアルフさんと言えば、私達に付いてくれている使用人達を一手に纏める役割を担ってくれていて、食事などで、王城を移動しなければいけない際などに呼びに来てくれたり、必要なことがあれば、王城の中の軽い案内役を担ってくれたり、食事の際の給仕をしてくれたりしている人でもあるんだけど。
ソマリア側が宛てがってくれた侍女達とは違い、彼自身は、いつもあまり表情に変化がなくて淡々としていることが多いというか、窺うように、その瞳を真っ直ぐに見つめてみても、今ひとつ、何を考えているのか読めなかったりするんだよね……。
もしかしたら、ダヴェンポート卿から厳しく言い含められていたりするのかもしれないけれど、私達と接する時は、殊更、敬語や所作などといったところで、丁寧な動きをするように気を付けているような節があるし、国賓である私達に対しては、何か失礼なことがあってはいけないと思ってくれていたりするのかもしれない。
彼自身、宰相であるダヴェンポート卿の直属の部下であり、これまでは、一緒に仕事をするのに、ずっとその傍に付いていたみたいだから、そこで多くのものを見てきただろうし、ダヴェンポート卿だけではなく、ソマリアで働いている家臣達のことも、他の使用人達よりはきっと詳しいはず。
だから、出来れば、距離を縮めて、色々なことを聞きたいなと思っているんだけど、普段から親しく話すことが出来るような感じではなくて、中々、隙がないような気がする。
そうして、私達が、この場で、ダヴェンポート卿やヨハネスさんが、今、どこにいるのか、その所在を聞いたことで。
「ヨハネス様も執務室にいらっしゃると思いますが、ダヴェンポート卿でしたら、先ほど、私自身が、執務室でお会いしましたので、確実に、そちらにいらっしゃいます。
私で良ければ、ご案内いたします」
と、アルフさんが、ダヴェンポート卿が、今現在、仕事をしているという執務室まで連れて行ってくれることになった。
それから、私達を先導するように、お城の廊下を歩き始めてくれた、アルフさん曰く……。
「ソマリアの王城の中は、あまりにも入り組んでいるので、初めて来た新人の使用人も、お客様達も、何の案内もないと迷ってしまうことが多いんです」
とのことらしく。
ソマリアの王城は、私達が生活しているメインの建物である皇宮や、皇后宮、それからお父様や官僚などが働く仕事用の宮などで、幾つもの棟があって、建物が沢山あるシュタインベルクの皇宮とは違い。
広大な土地にそびえる一つの巨大なお城として、住居スペースや、宰相であるダヴェンポート卿や家臣達が働いている執務室といった、王城で働く人達の仕事場なども、大きなお城の中に一纏めになっており、誰かの案内がないと迷ってしまうくらい、入り組んだ構造になっているみたい。
「へぇ、そうなんだな。
……だけど、ソマリアの王城も、どこの国の城にもあるみたいに、見張り台なんかの小さな棟は幾つかあるっぽいし。
この敷地内には、もう一つだけ、メインの王城の隣に、同じような感じの建物が建ってるよな?
こっちの王城に比べて、建物自体は一回り小さめだが、それでも豪華な雰囲気があって、俺は、最初、そっちが国王陛下達の住居用スペースになっているのかと思っていたんだが」
「あぁ……、えっと、はい、そうですね。
そちらは、ソマリアの中でも特に限られた人間しか入ることの出来ない離れの棟となっています。
勿論、お互いに独立した建物である以上、それぞれ、外から入ることが出来るよう、1階に重厚な玄関扉も用意されていますが、実は、この本館の、3階から行ける渡り廊下とも繋がっており、内部から行き来することも出来るようになっています。
とはいっても、その場所に立ち入ることが許されているのは、我が国でも、王や、トップクラスの地位を持っている人達のみとなっていますので、私は一度も足を踏みいれたことはありませんが」
そうして……。
私の一歩後ろを歩きながら声をかけてくれた、セオドアの質問に答えるよう、淡々とした口調で降ってきたアルフさんの説明を聞いて、ソマリアの王城があるこの敷地内に、メインのお城以外に、もう一つ大きめの建物があるというのはもちろん分かっていたことだったけど。
そっちの建物が、限られた人間しか入ることの出来ない離れの棟だったということを知って、私は驚いてしまった。
――その用途は、一体なんなのだろうか……?
王の居住スペースや、政治などを行う公務の部屋などが一纏まりになって、この本館にあるのなら、そちらの建物の中に、そういった部屋が置かれていることは、まずあり得ないだろうし。
ずっと前から、ご病気で療養されているという王妃様がいらっしゃる場所であるというのが、可能性としては、一番高いとは思うんだけど、他にも何かしら、別の用途で使われていたりするのかな……?
もしも、王妃様が療養されているだけの場所ならば、私達に普通に事情を話しても何ら差し支えはないような気がするけど……。
私自身、アルフさんが色々と説明をしてくれている間、ソマリアの事情について想いを巡らせていたんだけど、ぼんやりと考え事をしていると危険かもしれないというくらい、本当に入り組んでいて、複雑な構造になっている廊下を歩かなければいけなかったことで、一旦、自分自身の思考が中断されてしまいつつ。
王城にある一室の前で止まったアルフさんが、コンコンとノックをして、扉の前で『ギュスターヴ卿、失礼します。学院から、シュタインベルクの皆様が戻ってこられました』と説明してくれると。
中から直ぐに『入ってもらってくれ』と私達が部屋の中に入ることに了承してくれる、聞き慣れた声が聞こえてきたことで、私達は、宰相であるダヴェンポート卿が、普段から、公務を行っているという執務室の中に入らせてもらうことになった。
パッと見た感じ、私的な部屋ではなく、仕事用のための宰相の執務室だということもあってか、王城の中の華やかさや、豪華さというのが大分軽減されて、見た目の派手さというよりも、機能的な部屋であることを重要視しているみたいで、書類などが整理されて並べられている本棚の他には、デスクや椅子といった仕事をするために必要な最低限の家具しか置かれていないように思う。
とはいっても、部屋の中は、かなり広めであり、宰相という立場で数人の部下を抱えている人でもあるからか、ダヴェンポート卿が使うデスクと椅子だけではなく、部屋の中には、他にも幾つかのデスクと椅子が置かれていて、そこで複数人の人達が仕事をすることが出来るようになっていたし。
決して部屋の内装を手抜きにしているという訳ではなく、どちらかというのなら、シックな雰囲気の漂っている部屋は、どこまでも洗練されているといってもいい。
そうして、アルフさんに案内されて、私達が部屋の中に入ると、それまで書類に向き合っていた様子だったダヴェンポート卿が手を止め、ペンを机の上に置いたあとで、がたりと椅子から立ち上がり、私達の方へと深く腰を折って『ウィリアム皇太子殿下、並びに、アリス皇女殿下にご挨拶致します』と挨拶をしてくれてから顔をあげ……。
「皆様、学院生活、初日は、どうでしたか……っ?
何かお困り事など、ありませんでしたでしょうかっ?」
と、声をかけてくれた。
その態度は、一国の宰相といえども、どこまでも物腰が柔らかで、国賓である私達に対しても凄く丁寧な対応をしてくれていると思う。
「……そうですね。
俺とルーカスは、それぞれの学部で、講師として授業を行いましたが、学習意欲も高く、優秀な学生達が多くて充実した一日を過ごさせてもらえましたし。
自分達も、人に教えられるレベルまで、しっかりと教育課程を終えていますが、学部の教授達とも高度な話し合いが出来るということもあり、シュタインベルクにいた頃とは、また違った見解などを聞けることで、興味深い話と様々な知識に勉強になることも多く、大変有り難く感じています」
「……そうでしたかっ! いや、それなら本当に良かったです……っ!
折角の留学の機会ですから、皆様には、是非、我が国が誇る学院で、多くの時間を過ごして頂ければと思いますっ!」
そうして、お兄様がそつなく、今思いついたとは全く思えないほど、学院の教授のことも立てた上で、言葉をかけると、お兄様の言葉を聞いたダヴェンポート卿が、どこまでも明るい笑顔で、ホッとしたように安堵するのを見て、私は、これまで接してきた中では、ダヴェンポート卿にも『特に、怪しいところは見られないんだよね……っ』と内心で思ってしまった。
お爺ちゃんとも思えるくらいの年齢で、長いお髭を生やしているダヴェンポート卿は、パッと見、絵本に出てくる悪役の魔法使いみたいだけど、笑うと結構優しい雰囲気だったりするから、人は良さそうな感じがするし……。
とはいっても、今まで、私達に接してくれたソマリア人の中で、一番友好的だと思えなかった人が、レイアード殿下で、その他の人達に関しては、ノエル殿下や、バエルさんなども、一見すると、凄く友好的な態度で接してくれているし、ヨハネスさんだって、私達と話す時は、比較的、笑顔のことが多くて、特に、違和感に感じるような部分は見当たらなかった。
今のところ、怪しいと思えるのは、ギュスターヴ王くらいだけど、ギュスターヴ王には、中々、お会いすることすら、叶わないしね……っ。
「えぇ、俺自身も、殿下と一緒で、本当に有意義な時間を過ごさせてもらえたと思っています。
ただ、学院で講師をするにあたって、もしも可能なら、今後は、この国にある図書館なども積極的に利用させてもらえたら、講義に使える資料集めなどにも困らないので、凄く助かるなと感じているのですが、可能でしょうか?
他国の人間である自分達が、誰の案内もなしに勝手に図書館を使うことが許されるのかどうかは分かりませんが、可能であれば、その場所が知りたいということと。
頻繁に通うことになりそうですので、いつでも、みんなで自由に出入り出来る許可をもらえれば、大変、有り難いなと感じていますし。
折角、他国の王城に来ることが出来たということもあり、色々な部分を見させて頂き、今後、ソマリアの王城で拝見させてもらった素晴らしい部分を、国へと持ち帰ることで、シュタインベルクのこれからの発展に活かすことが出来れば、こんなにも嬉しいことはないなと思っていますのでっ!
もしも、差し支えがなければ、是非とも、問題のない範囲で、王城の中も見学させて頂ければ幸いなのですが……っ」
そうして、簡単にだけど、お兄様が自分達の学院生活がどうだったのかの報告をしてくれたあとで、ルーカスさんが、さらっと、さりげない雰囲気で、ソマリアのことを持ちあげながらも、自然に、この王城の中にもあるであろう図書館に行く許可を取ってくれながら、誰かの付き添いなどもなく、自由に王城の中を見学したり歩き回っても良いかどうかの確認をしてくれると。
一瞬だけ『……っ、えっ、……えっと、図書館ですか……?』と、驚きに目を見開いたダヴェンポート卿が、そのすぐあとで、ちょっとだけ戸惑ったような雰囲気を見せたことで。
一般的に国の重要な機密書などが置かれている場所と、王城にいる人間で、ある程度の地位を持っている人間なら誰でも見られるように解放されている図書館というのは、明確に分けられていることが基本だからこそ。
図書館に入ること自体は、多分問題がないはずだと、この場にいる誰もが思っていたことだったから『何か、問題があるのだろうか?』と、私は困惑して問いかけるように、ダヴェンポート卿の方へ視線を向けてしまった。
「……い、いえ、申し訳ありません。
実は、図書館は、我が王城の中でも、3階の東側に位置する場所にありまして、その辺りには、東の離れの棟に続く渡り廊下があり、そちらの建物には、国の中でも決まった人間しか行けませんので、どうしたものかと思ったのですが、図書館に行くだけでしたら、別に問題などはありません……っ!
私の方から、何か、お困り事はないかと聞いておいて、失礼な態度を取ってしまい、大変申し訳ないっ!
私自身、皆様方には、是非とも、王城よりも、学院で過ごす時間を多く取ってほしいという気持ちもありましたので、王城の中を見て回られたいと言われるとも思っておらず……っ!」
その視線を受けて、ほんの僅かばかり、苦い笑みを零しながら、ダヴェンポート卿が私達に向かって説明してくれたことで、私はその言葉に、ダヴェンポート卿が気になったのは、私達が王城の中を見学したいと言ったことではなく、東にある離れに近い図書館に行きたいと言ったことの方が心配する要素だったのかと感じて、そのことに、ちょっとだけ戸惑いつつ、咄嗟に、ふわりと何でもないように笑顔を作り出しながら、私は『そうだったんですね……っ!』と、声をかけた。
まさか、アルフさんに続いて、また、ここでも、離れの棟の話題になるだなんて思いもしなかったけど。
――そんなに、誰かが近づくことすら拒みたいほどに、離れの棟というのは、重要な何かがある場所なんだろうか……?
図書館に行きたいと話すことで、私達が自由に王城の中を歩ける口実にはなるはずだろうと思って、ルーカスさんが機転を利かせて提案してくれたことだったけど、ソマリアの人が隠したがっている離れの棟へと行ける渡り廊下があるのが、図書館の近くだというのなら、そっちの建物に行くことは出来ないとは思うけど、その近くまで行くことで、何か見えてくるものがあるかもしれない。
「……っ、学院で授業を行うための資料集めに、図書館に行きたいということでしたら、我が学院に通う生徒達のためにもなることですし、そのようにして頂けるのは、有り難いことでもありますから。
もしも、皆様が、これから直ぐに行きたいと仰られるようでしたら、図書館までは、ぜひとも、私に案内させてください。
その他の場所であっても、たとえば、国の重要な書類などが置いてあって入れないような部屋など、問題があるような場所に関しても、この辺りには行かないようにしてほしいといった感じで、説明しながら、ご案内出来ますので……っ!」
そうして、一瞬だけ、躊躇ったような雰囲気を見せていたものの、直ぐに、パパっと決断した様子で、此方に笑顔を向けてくれたダヴェンポート卿が、これから直ぐに、図書館まで案内してくれると言ってくれたことで。
完全なる善意からの言葉というよりは、もしかしたら、ダヴェンポート卿自身、王城の中で、私達に行ってほしくない場所については、自分で直々に、説明しておきたいと考えてのことだったのかもしれないけれど。
私達自身も、まだまだ、ギュスターヴ王のことや、レイアード殿下とノエル殿下の出自に関することなども含めて、聞いてみたいことなどは沢山あるし、どうやって、その話を切り出そうかと様子を窺っていたりもしたから、ダヴェンポート卿が図書館まで案内してくれる道すがらに、そういったことについても色々と話が出来るのなら、それは、願ってもないことだと言えると思う。
「うむ、僕も、色々なことで勉強になるだろうから、機会があれば、ぜひとも、図書館に通いたいと思っていたのだ。
シュタインベルクの皇宮にも図書館はあるが、国が違えば、また、その地に合わせて書物などにも変化があるものであろう?」
「うん、そうだね、アルっ。
図書館は知識の宝庫だっていいますし、私も、ソマリアの王城にある図書館に行けるのなら凄く嬉しいです。
ダヴェンポート卿が案内してくださるのなら心強いですし、折角ですので、図書館に行くまでの道中で、ソマリアに来てから気になったことなど、色々なことをお話させて頂いても構いませんか……?」
だからこそ……。
このあと、ヨハネスさんにも、一応、学院生活のことを報告しに行くつもりだったのだけど。
そちらについては後回しにすることにして、自然な感じで、あくまでも図書館の話題をメインにしながら、こちらに話題を振ってくれたアルに同意した私は、その道中で、色々と話が聞きたいのだということを、違和感がないように会話に盛り込みながら、ダヴェンポート卿の好意に甘える形で、ひとまず、この王城の東側にあるという図書館まで、みんなと一緒に向かわせてもらうことにした。