507 初めてのカジノ(前編)
いつも、お読み頂きありがとうございます。
此方、元々、507話として、同じ『初めてのカジノ』という題名で、前編と後編に分かれておらず、一つのお話だったのですが。
このたび、個人的に、あまりにも長くて読みにくかったなぁと感じたので、二話分にわけて、投稿する運びとなりました……!
(元々は、1万4千字くらいありました……っ(汗))
なので、どちらも507話として、前編、後編に分けさせて頂いております……!
お話の内容自体は、全く変わっておりませんので『もう、読んだよっ!』という読者様の方は、是非とも安心して頂ければ幸いです……!
何卒、宜しくお願いいたします……!
(此方のメッセージは、既存の読者様用に改稿の通知が行くため、前編、後編のどちらにも、前書きとして記載させて頂いています)
あれから順調な航路を辿っていたことで、私達がソマリアまで向かうのに、もうあと、二、三日ほどで到着する予定になっていた。
その間、船の中では、レストランやバーでの食事以外にも、頼めば、客室まで、マッサージに来てくれるような人達もいたりで、貴族向けに至れり尽くせりの状況になっており、更に言うなら、私達は今まで利用してこなかったんだけど、船内では、夜間に限定してカードゲームや、サイコロなどが備えられたカジノがオープンして、訪れたお客さん達の間で賑わいを見せているみたいだった。
陸にあるカジノに関しては、普段の客層自体、貴族の男性達が、こぞって通うような大人の社交場としてのイメージが強いものだけど。
あまり、王都などでは、そういったお店を利用することもないような夫人達や令嬢なども、勿論、成人済みの人達に限られるけれど、いつもとは違う船の中にあるカジノだということもあって、この客船を利用している間は、興味津々で利用しに行く人も多いんだとか。
船内で利用出来るこのカジノは、完全に、富裕層向けに作られた格式の高い場所として、お酒なども入ったり、ゲームの特性上、勝敗がついてしまうことで、普段は味わえないようなスリル溢れる勝負事に非日常の空間を味わえるということで、特別な高級感に浸ることが出来るように、ゲームを楽しむ沢山の人達の間で賑わいをみせる場所として、私達の客室がある一階下のフロアの殆どの面積を占めるように部屋が作られ、物凄く規模が大きなものとなっていた。
私自身、今までにも、エヴァンズ家にある娯楽室などで、そういったトランプゲームなどが楽しめるような場所を目にする機会などはあったものの、実際に、これまで、賭博場として運営されている場所には行ったことがなかったから、船内にあるという、このカジノに興味が全くなかった訳ではなかったんだけど。
初日に、レストランを利用する前に親しくなったバーのマスターから……。
「もしも、船内のカジノに行くのなら、最終日の二日前くらいからがお勧めですよ。
勿論、一概には言えませんが、その頃には、大分、物珍しさからやって来ている新規のお客様なども減って、ある程度、カジノに詳しい利用者の割合の方が 大きくなることで、その雰囲気をゆっくりと味わうことが出来るはずですし、より楽しめると思いますので……っ!」
と、カジノについての情報を提供してもらっていたことで、『それなら、最終日の二日前くらいまで、カジノには行かないようにしておこう』と、私達は、ここまで、カジノを利用すること自体を控えることにしていた。
カジノを利用すると一口に言っても、何も莫大なお金を元手に、自分の持っているお金を賭けて財産を全て失うまで遊ぶというような滅茶苦茶な遊び方をする訳ではなく。
ちょっとだけお金を持っていって、非日常の空間で節度を保ったまま、勝っても負けても、その雰囲気をただ楽しんでみようという、軽い目的で、そこまで大きな勝負をするつもりなんて一切なかったし、どこまでも健全な範囲で遊びに行こうと話していたことで、今日、初めて、私達は、船内にある賭博場まで行くことになったんだけど……。
そこでは、2週間ほどの旅路の中で、幾らかカジノに来る人自体が減っているといえども、がやがやと大勢の人達で賑わいを増し、お金を賭けているというのもあってか、普段は絶対にあり得ない白熱した雰囲気が感じられたことで、私は、周りの人達の本気度に、『わぁぁ、本当に凄い熱気……っ』と、ビックリしてしまうほどだった。
そうして、部屋の中に複数用意されていた、カジノ用の背の高い横長のテーブルの上には、ゲームをするためのトランプやダイスが置かれ、ディーラーと直接関わって、トランプを二枚ずつ配り、自分の手札を見ながらカードを引いて、手持ちのカードを21にする、もしくは可能な限り21に近づけて、ディーラーと比べて、自分の持っているカードの合計点数が21の数字に、より近しかったら勝ちとなるブラックジャックや……。
バカラというゲームで、直接ディーラと対戦などはせずに、実際に、場にいるのは、ディーラー一人のみだけど、バンカーと呼ばれる胴元と、プレイヤーと呼ばれるお客さんを架空の人物として、その二人を場におくことで……。
ディーラーが、それぞれに2枚ずつカードを配り、配られたカードの数字を足して、合計で、下一桁の数字が9に近い数になった方が勝ちという対戦を見守り、どちらが勝つのか、その勝敗を参加者である私達が予想するという、直接、私達が、トランプを触ったりして、ゲームに介入することが出来ないといった趣旨のゲームなど、カジノを運営している主催者側との賭け事だけではなく。
ディーラーにレーキと呼ばれる手数料を渡して、客同士が賭け事を行う、ポーカーなどといった、2人から複数人の参加者同士で行う対戦形式のもの……。
そうして、その他にもトランプゲームとは別に、サイコロを使ったクラップスというゲームなども含めて、会場では幾つもの趣向を凝らしたような内容のゲームが用意されていることで、本当に、沢山の人達が盛り上がりを見せていた。
『賭け事をするのは完全に初めてだから、この空気に圧倒されて、ドキドキと緊張してきてしまうし……。
どのゲームをしてみれば良いのか全く分からないんだけど、初心者には、どれがお勧めなんだろう……?』
私自身、ここに来るまで、1ゲームの相場が幾らなのか今ひとつよく分からなかったし……。
ちょっとだけ遊べれば良いからと、ほんの僅かなお金しか持ってこなかったから、あまり多くは遊べなさそうで、しっかりとゲームの内容を見て何で遊ぶか決めた方が良いだろうなと、沢山の人達の間を、セオドアとアルと一緒に通り抜けながらも、どこまでもこの場に不慣れな感じで、幾つものテーブルをきょろきょろと見渡してしまった。
ちなみに、お兄様は、こういう場には、それなりに慣れているからと、部屋の片隅に休憩の出来るスペースとして設置されている『カジノ利用者専用』に特別に用意された、軽食やドリンクが購入出来るカウンターで、みんなのドリンクを買ってきてくれるといって、ルーカスさんと一緒に購入しに行ってくれているため、私達と一緒にはおらず、二人に、どういうゲームが初心者向きなのかだけでも聞いておくべきだったかもしれないなと、私は、目の前で行われている複数のゲームに悩ましく感じてしまう。
「セオドア……、アルっ、見て見てっ、凄くいっぱい、ゲームが出来るみたい……っ!
私自身も、なんとか、一通り見て、それぞれのルールに関しては簡単に覚えることも出来ていると思うんだけど、パッと見る限り、みんな、それぞれに好きなゲームをしているように見えるし、どれが初心者向けなんだろうね……っ?」
そうして、ここまで付いてきてくれたセオドアとアルの方を振り返って、『沢山ありすぎて、どれにしようか迷っちゃうよね……っ』と、初めてのカジノで、ドキドキと胸が高鳴ってくる気持ちをそのままに、どのゲームにしようか相談に乗ってもらおうとして視線を向ければ……。
「あぁ、本当に、そうだな……っ。ゲームの種類だけでも、こんなにも豊富にあるものなんだな。
俺が見た限り、ブラックジャックよりは、どちらが勝つのかに賭けるだけでいいバカラの方が、比較的、初心者向けっぽいとは思うけど、姫さんが好きなものを選んだらいいと思うぞ」
と、セオドアが答えてくれたことで、私自身も確かにそうかもと感じながら、折角、ここまで来ているんだし、ひとまず、物は試しにということで、『勧めてくれてありがとう、セオドア。私、バカラの方に行ってみることにする……っ!』と、バカラをするために、専用のテーブルゲームの方へと近づいて、空席になっていた席へと、ちょこんと座らせてもらうことにした。
そのことで、周りにいる貴族の人達が、皇女である私が突然やってきたことに、ギョッと驚いたように目を見開いたのが視界に入ってきたけれど、緊張でドキドキしていたのを隠しつつ、皇女として、なるべく優雅な仕草は欠かさずに、ふわりと微笑みながら、私達の反対側に立っているディーラーさんの方へと視線を向けて、事前に交換して貰っていたチップを、テーブルの上へと用意していく。
パッと見た限りでは分からないだろうなと感じるものの、内心では、本当に、初めてのこと尽くしで、あたふたと、いっぱいいっぱいだったのは言うまでもなく、きっとセオドアやアルにはバレてしまっているだろうなと思う。
二人からは、もの凄く微笑ましそうなものを見るような目つきで、私の言動を見守るように目を細められてしまっていたから……っ!
そうして、ディーラーさんの……。
「では、皆様、お揃いになられましたので、どちらが勝利するのか、それとも引き分けになるのか、この勝負の行方に賭けるようにしてください」
と、胴元であるバンカーの方か、それともプレイヤー側の方か、架空の対戦相手のどちらが勝利するのかということと、極々、稀なことではあるけれど、下一桁の数字が一緒になってしまうことで引き分けという場合もあり得ることから、三つ用意された選択肢のどれに賭けるか決めて下さいと、ベッティングエリア(ベッドするチップを置くための場所)へと、チップを置くことを誘導されたことで……。
『これはもう、完全に運だ……っ』と思いながらも、少しでも参考になればと、テーブルを囲んだ席に着いている周りの人達がそれぞれ思い思いの様子で賭けていくのを見つめていると、私の隣にいるシルクハットを被った紳士風の人が、落ち着いた雰囲気で葉巻を燻らせ、堂々とした態度で、一気に、バンカー側へと大量にチップを置いているのが見えて、私はその見た目からは考えつかないような豪快な賭け方に驚いてしまった。
――凄いなっ! こんなにも堂々と、沢山、賭けているだなんてっっ!
その姿に、思わず視線が釘付けになってしまったんだけど、このテーブルの参加者は、私を入れて5人いて、私の隣のシルクハットの人も含めて貴族の男性が3人、夫人が1人といった感じではあったものの、みんな、紳士な雰囲気の貴族の男性よりも少なめではありつつも、割と、一気に沢山のチップを賭けて大勝負に出ている人が多いみたいで、『勝負師で凄い……!』と感じつつ。
そういうものなのかと、ちょっと勿体ないような気もするけど、周りの人にならって、『ええいっ、悩んでいても仕方がない……っ!』と、あまり、堂々とした紳士の人の真似をして同じ方に賭けるのも良くないかもしれないと、私は自分の手元にあるチップの殆どをプレイヤー側の方へと、ドンと豪快に置いて賭けることにした。
因みに、配当金に関しては、プレイヤー側が勝利した場合、賭けた金額の二倍がもらえて、何故か、バンカー側が勝利した場合は、手数料が5%、カジノ側に取られることになるそうで、1.95倍の金額が、そうして、引き分けの場合は、中々、そういった状況が訪れないことで9倍の金額が貰えることになっているみたい。
――もしかしたら、架空の対戦相手といえども、バンカーが運営側として胴元と設定されていることもあって、そちら側が勝利すると、5%の手数料が取られることになるのかもしれない。
それなら、わざわざバンカー側に賭けなくても、プレイヤー側に賭けた方が、予想が当たれば、配当金として入ってくるお金が二倍になるし良いことづくめのように思えるんだけど……。
私が、頭の中で、そんなことを考えていると……。
「帝国の可憐な花にご挨拶を。
私、伯爵位を持っております、オルブライトと申します……っ!
休暇を楽しんでおられる、我が国きってのプリンセスに、突然、不躾にも、お声がけをするようなことになって申し訳ありません。
……皇女様、そのように、プレイヤー側に一気に賭けるなどと、このゲームで遊ぶのは、もしかして初めてですかなっ?」
と、突然、隣で、オルブライトと名乗った、カイゼル髭を生やした紳士風の貴族の男性から、ほんの僅かばかり心配されるかのようにそう問いかけられてしまったことで、私は、正直に、『実は、そうなんです……っ。私自身、下一桁の数字が9に近い方が勝ちという、ゲームのルールについては、簡単に把握しているんですけど』と声に出して頷き返すことにした。
私が、そう伝えると、隣の席でオルブライトさんは、もの凄く納得したように『そうでしょうな』と声を出したあとで……。
「このバカラというゲームは、見た目では、その勝率は半分半分の確率のように思えますが、そのゲームの性質上、バンカー側が46%ほど、プレイヤー側が44%ほどの勝率となっていて、残りの10%が引き分けに賭けた場合の勝利となっています。
といいますのも、バカラの基本ルールは、最初に2枚のカードを引いて、そのカードを足した合計で、下一桁が9に近い数字になった方が勝ちというルールがありますが、最初の2枚のカードを足した合計で、どちらか一方が8か9になった場合を除き、互いに下一桁の数字が低かった場合、3枚目のカードを引くことが出来ます。
どちらか一方の合計で8か9になった場合は、双方ともに3枚目のカードを引くことは出来ず、2枚のカードの合計で争われることになりますが、そうでなかった場合、プレイヤー側とバンカー側で条件に差があり、プレイヤー側は、下一桁の数字が5以下の数字になった場合に一枚引くことが出来ますが、バンカー側は、下一桁の数字が6以下の数字だった場合にもう一枚カードを引くことが出来るのです。
これが、バンカー側の配当率が1,95倍になっていて、プレイヤー側に賭けた時の2倍の金額より少なくなっている理由でもあるんですよ」
と、バカラというこのゲームでは、バンカー側に賭けた方がちょっとでも有利になるということを私に懇切丁寧に教えるために口を開いてくれた。
そうやって、オルブライトさんから親切に色々と教えてもらえたことで、段々と私にも、このゲームがシンプルな内容以上に、奥が深いのかもしれないと思えるようになってきた。
カードの合計が6か7になった場合、プレイヤー側は、それ以上カードを引くことが出来ず、そのまま対戦しなければいけないのに対し、バンカー側は7になった時のみであり、もしも仮にプレイヤー側が6で、バンカー側が7だった場合、プレイヤー側は、追加でカードを引くことが出来ないから、そのまま負けが決定してしまうけれど。
バンカー側が6で、プレイヤー側が7だった場合、バンカー側はカードを更に引くことが出来て、2か3の数字が出て、プレイヤー側の数字よりも多い8か9にすることが出来れば、逆転の可能性もあり得るということになる。
その結果、完全に運だけだと思っていたけれど、多少、バンカー側の方に有利な条件で作られているゲームになっているみたい。
だからこそ、オルブライトさんのように、このゲームの経験者の人でも、勝負をかける時などは、プレイヤー側に、あまりにも多い金額を投入するよりは、バンカー側の方に賭け金を多めに投入する場合の方が多いみたい。
勿論、あくまでも、確率の問題だから一概には言えないらしいんだけど、中々、初めの段階からプレイヤー側にバッと大量のお金を賭けている人は見ないから、心配して声をかけてくれたんだとか。
そう言われてみれば、割とみんなお金を使ってはいるけど、プレイヤー側の方に賭けている人は少なめかもしれない。
元々、この場に持って来ているお金が少なかった私と違って、みんな、まだまだ手元にそれなりに残してあるみたいだし……。
ただ、私が、オルブライトさんに『わざわざ、懇切丁寧に教えて下さってありがとうございます』と、明るい笑みをこぼしながら、お礼を伝えて頭を下げてから、私以外の周囲の人達は、どういった状況なのだろうと、その様子を窺うようにテーブル席を確認していると、オルブライトさんは別だけど、他のゲームなどで負けが込んでしまっていたのか、焦ったような様子で、これに賭けているのだと言わんばかりに苛立ちを募らせているような神経質そうな男性の姿も、1人だけ目に入ってきた。
パッと見た限り、余裕がなさそうなのは、その人くらいで、後はみんな、ゲームが始まったばかりということもあり、優雅な雰囲気を漂わせているだろうか。
――私自身も、勝手が分からず、持って来たお金の殆どを一度に費やしてしまったから、他の人よりも余裕がないといえばそうなのかもしれないけれど。
自分の身を滅ぼすほどの大金を持ってきている訳でもないから、全然、問題無くて、寧ろ、今は、どっちが勝つのか、この勝負の行方を見守るのにワクワクしていて、隣に座ってくれていたオルブライトさんと、セオドアとアルと一緒に和気あいあいとしながら……。
「一体、どっちが、勝つんでしょうね……っ! 結果が出るのが凄く楽しみです……っ!」
と、単純に、勝敗について見守るように、ベッティングを締め切ってくれたディーラーさんがカードをシャッフルした上で、架空の対戦相手であるプレイヤー側と、バンカー側に、二枚ずつカードを伏せた状態で配っていくのが見えたことで、更に、ドキドキしてきてしまった。
――きっと、この待っている間の、ドキドキや緊張感が、カジノの醍醐味というものなのかもしれない。
「それでは、皆様、手元を御覧下さい……っ!
プレイヤー側の手札は、スペードの7、そしてダイヤの5が出たことで、足して12!
下一桁の数字は2になりました……!」
そうして、ドキドキの瞬間は、思ったよりもすんなりと訪れて、私達の反対側に立ってくれているディーラーさんが、まずは、プレイヤー側のカードを、私達参加者側に見えるように、ゆっくりとオープンしてくれつつ、下一桁の手札の合計を口頭で盛り上げるように説明してくれると……。
「お次は、バンカー側の手札をオープンさせて頂きます……っ!
バンカー側の手札の一枚目は、スペードのエース、そして二枚目は、ハートの3が出たことで下一桁の数字は4っ! よって、どちらも3枚目のカードを引くことになりますっ!」
と、更に、バンカー側の手札をオープンして、ドキドキしながらテーブルの上のカードを見つめている私達の気分を高めてくれるかのように、この場を沸き立たせてくれているのが分かって『この3枚目で勝敗が決まってしまうし、どっちが勝つのかな……っ?』と、ワクワクしつつ、私はディーラーさんの手元にあるシャッフルされて配られるカードへと、片時も目が離せない状態で、期待に胸を膨らませながら視線を向けていく。
そのあと、運命の勝敗を左右するかのように、一枚ずつ、プレイヤー側と、バンカー側にカードが伏せられた状態で配られていったのが見えたあと……。
「それでは、同時に開けさせてもらいます……っ!
バンカーの数字は、ダイヤの3っ! 先ほどの合計が4しかありませんでしたので、足して7になりますっ!
そして、そして、プレイヤー側の数字は、クローバーの6っ! 今ある合計数が12で、足して18っ! 下一桁の数字は8になりますっ! よって、僅差にはなりますが、今回の対戦では、プレイヤー側に賭けた方達の勝利になります……!」
と、二つのカードを同時に捲ってくれて、私達に向かって高らかに、どちらが勝ったのか勝利の宣言をしてくれたことで、わぁぁぁぁという歓声と共に、まさかの展開になったことで、私は思わず驚きに目を見開いてしまった。
『えっと……、プレイヤー側に賭けた人は、単純に計算して2倍の配当金が貰えるわけだから、私の持って来たお金が、元々5000ゴルドだったというのあって、約1万ゴルドまで跳ね上がったということになるんだよね……?』
「なんとっっ、皇女様っ、おめでとうございますっっ!
二分の一の勝率だとはいえ、初心者で、自分の殆どのチップを積んで勝利するのは、凄いことだと思いますよっ!」
その上で、オルブライトさんが自分は負けてしまったにも拘わらず、私の勝利を湛えるように声をかけてくれたことで、私は、この場で、自分のことは二の次で、他人が賭け事に勝ったことを心の底から褒められることの出来るオルブライトさんこそ、本当に紳士に相応しい人だなぁと感動してしまった。