499 ジェルメールへ
王都で最近出来た雑貨屋さんや、お菓子屋さんを通り過ぎ、ジェルメールへと向かうと、お洒落な建物の上に付いている、一目見て、高級衣装店だと分かるようなドレス姿の女の子を模した、アンティーク調で鉄製の可愛らしい看板が、私たちのことを出迎えてくれた。
少なからず変わっていく王都の街並みに、まるで変っていないジェルメールがそこにあるというだけでも、凄く安心した気持ちになれる。
その上で、まぁるい曲線を描いたアーチ型で両開きのドアを開けると、上に吊り下げてあったベルがいつもと変わらず来客を知らせるように、カランコロンと鳴ったことで、扉から背を向けて、お店の中にあるトルソーに新作のドレスの見本を飾りつけていたヴァイオレットさんが此方へと振り返ってくれたあと……。
私の姿を見つけて、みるみるうちに、パァァァっと、満面の笑みになりながら、その瞳を明るく輝かせ……。
「アリス様……っ! いらっしゃいませ!
今日は、お店に来る予定にはなっていませんでしたけど、一体、どうされたんですの……っ!?
私は、いつでも、アリス様がうちのお店に来て下さるなら、本当に大歓迎なのですけど……っ!」
と、こちらに向かって、パタパタと駆け寄ってきてくれたあと、私自身、ソマリアへの留学が急遽決まってしまったこともあって、今日、ジェルメールに行くことは事前に伝えていなかったため……。
私が来るとも思っていなかったであろうヴァイオレットさんは、どこまでも嬉しそうな表情で、私のことを歓迎するように、興奮した様子で声をかけてくれたあと、私の隣と背後に、セオドアや、アルだけでなく、ウィリアムお兄様や、ルーカスさんも立ってくれていたことで、あまりにも珍しい組み合わせにびっくりした様子で目を丸くしてしまった。
「まぁっ……! 皇太子殿下や、ルーカス様まで……っ!
ようこそ、おいで下さいました……!」
そのすぐあとに、ヴァイオレットさんは、ここがお店の中であることを思い出したのか、私には、この6年で仲が深まったことで遠慮が取れて、私自身がそうしてほしいと望んだことで、私が子供だった頃以上に砕けた口調で、名前呼びになり、フレンドリーに接してくれるようになっているんだけど……。
お兄様たちに対しては、しっかりとお店のオーナーとして対応をするよう、明るい笑顔に戻り、ハキハキとした口調で声をかけてくれた。
今日は、朝が早いということもあってか、本当にいつも予約で埋まっているジェルメールにしては、6,7人の令嬢や夫人の姿が見えるだけで、そこまで人の気配がなく、お客さんは少ない方だと思う。
私自身は、ジェルメールのデザイナーも兼任していることもあって、誰かに作ってプレゼントをしたりする衣装が、そのまま少しだけ形を変えて、私のブランドの新作として発売することになっている関係上、どんなときでも予約なしで入れるようにしてもらっているものの。
お客様を多少制限することで、お店にいる間は、お客さんたちが、ゆったりと飾っているドレスや髪飾りなどの小物が見れるようにというヴァイオレットさんの配慮で、普通の令嬢や夫人たちに関しては、今では、一時間起きくらいに、最大で、10人までのお客様でストップになるように制度が設けられ……。
予約で埋まってしまっている場合は、新規のお客様を断るような感じになってしまっていることから、王都の街を散策していて、フラッと気になったからドレスを買いに来たといった感じで、お店に入ってくることが出来た人は、本当にラッキーだと思う。
今は、朝が早いこともあってか、偶然、あと残り3枠くらいお客さんが来れるように空いているけれど、急遽、ドレスが入り用になったと必要に迫られて、ダメ元でやってくるお客さんたちもいて、そういう人たちで、気づけば、空いていた枠も埋まってしまうということは、よくあることだから……。
「ヴァイオレットさん、事前の連絡もなしに突然来てしまってごめんなさい。
……急遽、どうしても、私自身の衣装が複数枚必要になってしまって……、出来れば、ご相談に乗って頂ければ嬉しいのですが、お時間は大丈夫でしょうか……?」
だからこそ、私自身、『ジェルメールのデザイナーとしても、お世話になっているのですから、予約などは取る必要もないし、いつでも遠慮なく来てくれたらいい』と言ってくれていたヴァイオレットさんに、それでも普段は、しっかりと予約を取って来ることが多いんだけど、ソマリアに留学に行くことで、複数のドレスなどが必要となり、急遽、ジェルメールに来ることになってしまったのを申し訳なく感じながら、声をかけると……。
「気にしないでくださいな……っ!
皇女様が来て下さるだけで、うちの店舗内も一気に華やいで、ファンの子たちが喜びますからねっ!
むしろ、いつもお世話になっているのは、私たちの方ですし、そのように思われずとも、全然、構いませんわ~!
皇女様と一緒にデザインした作品については、うちでも新作として発表させて頂いていますし、それも、また、うちのお店の人気を高めてくれている最大の要因になっていますからね……!」
と、『うふふ、私は、いつだって永遠の20代ですわ!』と日ごろから豪語していて、いつだって若々しい雰囲気のまま、あまり年を取ったとは感じさせないくらい年齢不詳の優美な雰囲気のヴァイオレットさんが、店内にいる令嬢や夫人たちの方をそっと見やってくれたあとで、私に向かって、目の前で、茶目っ気たっぷりに、ぱちりと一度ウィンクをしてくれた。
見れば、この6年間、いつもそうだったんだけど、ジェルメールに来るお客さん達は、ヴァイオレットさんが言ってくれたように、私のファンである令嬢や夫人たちが多いことから、今日も、私がジェルメールに来たことで、しっかりとマナーを守って、話しかけてくるようなことはないものの。
それでも、遠巻きに、ちらちらとこちらを気にするようにしている彼女たちの瞳に浮かんだ、確かな熱と尊敬が混じったような憧れの眼差しに、私自身は、そういう風に思ってもらえて嬉しいなと感じつつ。
未だに、自分が社交界で、人々から憧れられるファッションの象徴として見られていることに慣れていなくて、こういった視線を浴びるたびに、むず痒いような気持になって、パッと見ただけでは、その感情を悟られないくらい、皇女として凛と背筋を伸ばして表情を取り繕うことは出来ているものの、内心では、もの凄く照れてしまっていたり……。
そんな内心をおくびには出さずに、彼女たちの強い視線に応えるように、一度だけ柔らかい笑顔を向ければ、それだけで、きゃぁきゃぁと、興奮したように彼女たちが、一人一人のお客様を大事にする接客スタイルで、自分に対して一対一で付いてくれて対応をしてくれている、ジェルメールのスタッフさんに向かって……。
「あぁぁ、もう、もう、皇女様が今日、ジェルメールに来ることさえも知らなかったですし、それだけで、凄く素敵なサプライズに、ラッキーな一日になっているというのに……!
こ、皇女様が今、私たちに向かって笑いかけてくださって、あまりにも光栄すぎますわ……!」
「一日ずれただけで明日には会えなかったと思うと、本当に、今日、ジェルメールの予約を取っておいて正解だったと思います……っ!
皇女様が着ていらっしゃる、今日のお召し物も、可愛らしくって素敵すぎますわ~!
皇女様がいらっしゃったということは、近々、新作が出るかもしれないってことですわよね!
次回の新作は、一体、どんなものになるのかしらっ!?」
と、なるべく私に聞かれないようにと声を抑えたつもりだったのかもしれないけれど、嬉しい気持ちが隠せなかった様子で、はしゃいだように上擦った声になってしまって、ばっちりと彼女たちの声が聞こえてしまった私は、彼女たちのためにも、そっと聞こえなかったふりをしつつ。
ヴァイオレットさんが案内してくれることで、ドレスが沢山飾ってあるお店の中を通り過ぎ、奥にあるミーティングルームへと入っていく。
基本的な部分はあまり変わっていないけれど、ジェルメールの内装も王都の流行に合わせて時代の流れとともに多少変化し、衣装づくりの相談をすることが出来る、この打合せ用の部屋では、まるで応接室のように、ロココ調の上品で可愛らしいインテリアで統一されていた。
さらに、壁を丸くくり抜いて作ってある棚には、人形サイズの小さなトルソーに、今までジェルメールから発売されてきたドレスが可愛く、ミニチュアの見本としてコレクションされ、ヒールなども年代別に置かれていることもあって、ブランドとして、ジェルメールが大好きな人たちにとっては、この部屋に通されただけで、垂涎もののアイテムがいっぱい置かれていた。
私が、ヴァイオレットさんに促され、複数人掛けることの出来る柔らかな雰囲気のソファーに、セオドアとアルと腰掛け、それから、お兄様とルーカスさんが私たちの座っているソファーの斜め横にあった一人掛け用のソファーにそれぞれ座ってくれると……。
みんなが座ったのを見届けてから、私の対面に座ってくれたヴァイオレットさんから、『衣装を複数作ること自体は、私どもは本当に大歓迎なんですけど……っ!』と、前置きしたうえで、皇女様がドレスをいっぺんに新調するだなんて本当に珍しいですわねと驚いたような瞳で、詳しい事情を聞きたいと言わんばかりに視線を向けられて、私は、今回の事情について、しっかりと説明することにした。
「実は、私も含めて、まだ、国内でも、ごく一部の人たちしか知らないことなんですけど。
シュタインベルクと友好関係を結んでいるソマリアから、お父様宛でお手紙が届き、ぜひとも、私に親善大使として、ソマリアの学院へと留学をしてこないかというお話が来たことで、みんなで一緒に、ソマリアへと行くことになりまして……。
これからしばらくの間は、長期で、ソマリアに滞在することになってしまうので、今日はその件で、しばらくは、こちらで一緒に仕事が出来なくなってしまうということを伝えに来たのと……。
私自身、普段している格好で良いんじゃないかなと思っていたのですが、ソマリアへ行くことで、この間、ヴァイオレットさんが、私のお誕生日パーティーに合わせて作ってくださった特別なドレスだけじゃなく。
パーティー用のドレスなども含めて新調した方が良いんじゃないかと、ローラとエリスが張り切ってくれて、その言葉に後押しされて、せっかくなので、この機会に衣装を作らせてもらいに来たのと、セオドアやアルのパーティー用の衣装なども含めて必要になってくるだろうなと思いまして……」
そうして、ソマリアに留学することになったのを説明することで、ジェルメールとのお仕事について、しばらくは、ストップしなければいけなくなるであろうことや……。
ソマリアの親善大使として、ここで、ドレスなどを新調することで、私自身、それまでは深く考えることが出来ていなかったんだど。
よくよく思考を巡らせてみれば、たくさん、アイディアを出して、ドレスや、メンズ用品なども複数作っておくことで、しばらくは、私のブランドとして発表する衣装などには困らないだろうし、いつもお世話になっているジェルメール側に貢献するような置き土産が出来るという意味合いでも、凄く良かったかもしれない。
私が、そのことを説明する前に、私の言葉を聞いて、一瞬だけ固まってしまったヴァイオレットさんは、そのあと、すぐにハッとしたように……。
「まぁ……っ! そうだったんですの……っ!
国同士のことですから、私どもがそこに口出し出来るような立場ではないということは分かっているつもりなのですが、アリス様がこの国からいなくなるだなんて、一国の皇女様としてのお立場で致し方ないといえども、あまりにも寂しすぎますわ~!!」
と、うるうると感極まって、ハンカチを取り出しながら、子供のようにわっと声を上げたヴァイオレットさんから、そう言われたことで、私は、慌てて、ヴァイオレットさんに……。
「わぁぁ、ヴァイオレットさん、申し訳ありません……!
そんなふうに言っていただけるだなんて、とっても嬉しいですし、私も実は、凄く寂しかったんです。
ですが、一時的なことですし、必ず、こちらに戻ってきますので、その時はまた、一緒にお仕事が出来ればいいなと感じています。
それから、今日、アイディアをいっぱい出して、私のドレスだけではなくメンズ用品なども含めて、お洋服をたくさん作ることで、ジェルメールに少しでも貢献することが出来るかなとも思っていまして……」
と、声をかけていく。
私自身はフォローのつもりで、その言葉をかけたんだけど、ヴァイオレットさんは、私のその言葉を聞いて、さらに感極まってしまったみたいで……。
「あぁぁ、もう、もう、本当にいつも、私どものために心を砕いてくださって、優しく配慮して下さり、アリス様には、心の底から感謝しています……っ!
そんなふうに仰っていただけるのならば、アリス様がソマリアで着るドレスや、セオドアさんやアルフレッド様のお洋服まで、私にお任せ下さいなっ!
ソマリアの方たちが、あっと驚くような、洗練されたデザインの華やかな衣装を、一緒に、作りましょう……!」
と、今にも私のことを抱きしめたいと言わんばかりの雰囲気で、オーバーすぎるほど私に感謝してくれたあと。
私がソマリアに行くことを寂しく思ってくれて、ほんの少し、名残り惜しさのようなものを感じてくれている様子はありながらも、それでも、しばらくシュタインベルクを離れることになる、『私と作る衣装』だということもあって、いつも以上にやる気に満ち溢れ、張り切った様子で、最新の生地のカタログを机の上に広げてくれた。
生地の色味などだけではなく、糸を透かし模様にして刺繡が施されたレースや、透け感のある柔らかな雰囲気を持ったチュール、上品で可憐な雰囲気が特徴のシフォンなど、クラシックなデザインのものから、最新の流行に合わせて生地屋さんが仕立てた可愛らしい生地などが並び、見ているだけでも楽しくなってくる。
そこから、さらに、ふわっとした愛らしいデザインの衣装が多い、ジェルメールの中でも、Aラインのドレスや、プリンセスラインのドレスなどを中心に、ドレスの型をどうするのか決めつつ。
複数の生地を組み合わせて、新しい衣装をどうするのか、私は、細かくヴァイオレットさんんと相談していく。
「こっちのお花模様の刺繍があるレースは可愛いですけど、こっちのサテン素材の生地も凄く素敵ですね……!」
「えぇっ、そうですわよねっ!
そちらは、ふわっとした愛らしいデザインで、アリス様には絶対に似合う生地になっていると思います……!
この間は、プリンセスラインのドレスにしましたので、今回は、Aラインのドレスにしましょうか…?」
そうして、私たちが細かくやり取りをしていく中で、私自身のドレスを作るのも大事なことだけど、今回は、ソマリアで、夜、着る予定にしている部屋着として、ネグリジェなども作る予定にしていたことから……。
私がソマリアで着る予定のドレスに関しては、パーティー用のものなどのドレスに関して、机の上に広げられていた生地のカタログや、私のイメージなどをしっかりと伝えていたことで、それに合わせてデザイン画を描き起こしてくれていたヴァイオレットさんと、今回は、Aラインのドレスに、桃色の、大人っぽさの中にも可憐な愛らしさがあるサテン生地の、スパンコールなどで、清楚に上品な雰囲気で胸元あたりに装飾を施したドレスを作ることにして……。
大体のイメージが固まってきたことで、今度は、私の部屋着のネグリジェをどうするのか、決めていくことにしたんだけど。
そこで、一応、話には加わってくれていたものの、私とヴァイオレットさんが話すばかりで、あまり邪魔をしないようにと配慮をしてくれて、机の上に出されていた紅茶を飲みながらも、ここまで、殆ど、口を開かずに、見守ってくれていたみんなの意見も気になって……。
ドレス自体は、私自身が、ヴァイオレットさんと一人で盛り上がって決めてしまったことから……。
「これから、部屋着を作ろうかと思っているんだけど、みんなは、私の部屋着について、どう思う……?
さっきは、自分ひとりでドレスを決めてしまったし、ここまで、ヴァイオレットさんとずっと私だけが話していたこともあって、出来れば、こっちについては、良かったら、みんなの意見も仰ぎたいなと思うんだけど……」
と、ソファーに座ってくれているみんなに向かって声をかけたら……。
「お姫様、それ、俺らに聞く……?
ドレスならまだしも、なんで、そっちを俺らに聞くようなことになるのかなぁ……っ!
そういうのも含めて、あんまり、理解していないでしょ……っ!」
と、突然、ものすごく困ってしまったかのような雰囲気の、ルーカスさんにそう言われて、もしかしたら、何かいけないことでも聞いてしまったのかと、ルーカスさんの言葉に、一人、戸惑ってしまっていると……。
「いや、マジで、それすぎて……。
幼い頃から、あまりそういったところが分かってないから、今もそのままの距離感すぎてな……。
これだって、多分、俺らが会話に入れてねぇことを、ただ純粋に心配しただけだろうし、本気で、部屋着について、どうしようか相談に乗ってほしいって思っている瞳でしかないからな。
姫さん、その言葉は、俺ら以外には絶対に言っちゃだめだぞ……!」
「アリス……、セオドアの言う通りだ。
頼むから、お前は、もう少し大人になった自覚を、きちんと持ってくれ……っ!
そんなんだから、いつまでも、目が離せないと思ってしまうんだからな……!」
と、続けて、セオドアと、ウィリアムお兄様にそう言われたことで、私は、セオドアに自分の考えを言い当てられて、その通りなんだけど、ルーカスさんだけではなく、どうして、そのあとに、セオドアからもウィリアムお兄様からも心配されるようなことになっているのか、よく分からずに、困惑してしまったものの……。
「うん……? えっと、分かった……。
あまり誰かれ構わずに言うようなことではないと思うんだけど、なるべく誰にも言わないように気を付けることにするね……!」
と、みんなに向かって、声をかけることにした。
そのあと、アルが……。
「うむ、アリス、ここにいる全員がそう思っていると思うが、僕たちは別に構わないけど、他の人間には間違っても言わないようにな……!」
と、言ってくれたことで、『良かった、みんなに言うのは、大丈夫だったみたい……』と、ホッと胸を撫でおろした私は、安心しながら……。
「そうだったんですね。……それなら、今度から、必ず、みんなにだけ言うようにします……!」
と、みんなに向かって、口元を緩ませ、微笑むように柔らかい笑みを向けた。
そのことで、セオドアも、ルーカスさんも、ウィリアムお兄様も、私の相談には乗ってくれるような雰囲気を出しつつ。
「いや、そりゃぁ、俺たちは、確かに大丈夫だし、もちろん、いつだって相談に乗るつもりだけど……。
柔らかい笑顔で、こんなにも嬉しそうな表情をされたら、断ることも出来ねぇっていうか……」
「アルフレッド君、本当に、ちゃっかりしすぎてない?
それが、俺たちの総意であることには代わりがないし、お姫様から頼まれたことを断るつもりなんて、俺には毛頭ないけど……」
「おい、お前たちは、ちょっとは、断ることも覚えろよ……!
人の妹だからな……? 俺が、アリスの相談に乗るのは分かるが、お前たちは違うだろう……?
アリス、俺は相談に乗ることは構わないと思っているんだけど、少しは気を付けような?」
と、三人からそう言ってもらえたことで、私は、みんなに聞くのは、あまり悪いことではなくて、『これから私の部屋着をどうするのかみんなも相談に乗って決めてくれるみたい』と、じんわりと幸せな気持ちに包まれて、パァァァっと表情を綻ばせながら……。
「セオドアも、アルも、ルーカスさんも、お兄様も、本当にありがとうございます……!
どんな感じの部屋着にするのか、みんなに相談に乗ってもらえるだけで、凄く嬉しいです」
と、嬉しさいっぱいの表情で、みんなに向かって声をかけた。