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497 ソマリアへの留学の話


 執務室のデスクの前の椅子に座り、此方に向かって真剣な表情を浮かべたままのお父様に、ソマリアから強い要望を出されたことで私だけ行くんだろうかだとか、どうして、私に白羽の矢が立ったのだろうかだとか、本当に色々な感情が浮かんできて、聞きたいことが上手く(まとま)まらなかったものの……。


 部屋の中にある本革の椅子や棚なども含めて殆ど黒一色で統一された、洗練された雰囲気で優雅な曲線のデザインが特徴である、明るい色調のものが多いロココ調の家具にしては珍しく男性向け用に作られたアンティーク家具が置かれ、格好よさも感じられるようなシックでモダンな雰囲気のお父様の執務室の中で。


「一体、どうして、私に……?」


 と、お父様に向かって問いかけると、私の一歩後ろに立ってくれていたセオドアも含めて、ウィリアムお兄様や、ルーカスさん、アルといった面々も、凄く驚いたような表情を浮かべて、私と同様に戸惑ってしまっているみたいだった。


 先ほど、スミスさんから、ソマリアの話を聞いたばかりだったからか、この場にいる誰しもが眉を顰めて、どこかお父様からの言葉に反対する雰囲気で……。


 みんなで、一体、どういうことなのかと顔を見合わせながらも、お父様からの話を聞こうと椅子に座っているお父様に視線を合わせれば……。


「……それがな、この6年の間で、シュタインベルク自体、魔女や、謂れのないことで傷つけられ、差別される赤を持つ者に対して、大分、その人権も保護することが出来てきているだろう?」


 と、お父様からそう言われたことで、私は『確かにそうだ』と、その言葉に、こくりと頷き返した。


 この6年の間……、お父様という強い協力者を得て、私自身も赤を持つ人達のために、何が出来るのかを考えて、一生懸命に行動してきたし、それについては、私自身も自信を持ってそうだと納得することが出来た。

 

 具体的に言うと、エヴァンズ家がそうしていたのをモデルにして、圧倒的に、後回しにされてしまいがちな、赤を持つ身寄りのない子ども達を助けるために、私がジェルメールでドレスなどを売り上げたお金を使って、専用の孤児院を作らせてもらったり……。


 彼等の人権を保護するために、セオドアやアルなど、みんなにも協力してもらいつつ、少しずつウィリアムお兄様とも案を出し合い、お父様に、魔女や赤を持つ者達に対する法案などをちょっとでも良くなるように改善案として国の政治として議題に挙げてもらったりだとか。


 更に、4年前のフードの二人組が関与していた事件でも、『赤を持つ人達の犯行なのだ』という裏も取れていない記事を書いて、面白おかしく騒ぎ立てて世間の不安を煽ろうとしていた記事を、新聞記者のトーマスさんの力を借りて、訂正するのに奔走したり……。


 それから、ジェルメールで衣装を作る際も、積極的に赤を取り入れたようなドレスなども作ったりするようになり、元々、私のファンだと言ってくれていた令嬢を中心に、少しずつそういった色合いのものを身につけるのが可笑しくないことだと広がりをみせていたり。


 今日のパーティーでも、私は自分の成人を迎える誕生日だったこともあり、王家の証であるアンティーク調の金色を纏っていたけれど、そういった令嬢達の姿は、ちらほらとあって、更に言うなら、その殆どが私のファンのご令嬢達であり、彼女達は、今日、私が着ていたドレスについても……。


『あちらは、ジェルメールの新作ですわよね!』


『あーもう、本当に、皇女様の着ているドレスは、いつ見ても、皇女様にぴったりで素晴らしいですわ……!』


『皇族の証である金を華やかな感じもありながら、あのように少し落ち着いた風合いの色味にして着用していらっしゃるのも素敵ですし、人を選ぶ感じで、似合う人が限られるようなドレスでありながらも、今日も、華麗に着こなしてらっしゃって、とってもお似合いですわね……!』


 と、ほんの少し恥ずかしくなってしまうくらいに、べた褒めしてくれていた。


 そうして彼女達が、私が紅色の髪の毛を持っていることで、私のファンとして、社交界でも『赤色を身につけていることが素敵』なのだと、積極的に赤を身につけてくれていることで、今ではあまり、パーティーなどでも、()というのはそんなにも珍しくない色になりつつあった。


 その甲斐もあってか、昔から先進国として進んでいたりはしていたものの、今では、シュタインベルクは、どの国よりも、そういった人権の保護などが進んでいて、勿論、完全に差別がなくなった訳じゃなく、今も()しき風習として色濃く残っていたりはするものの、国内でも、赤を持つ人達に対して、一般の人達の態度が軟化(なんか)し受け入れられ始めていたりもする。


 だからこそ、お父様のその言葉には、直ぐに、同意することが出来たものの、そのことが、この件に、一体、どういった感じで関わってくるものなのか分からずに、首を傾げながら戸惑ってしまっていると。


「この6年の間、私達も可能な限り動いてきたが、それら全てにおいて、殆どは、アリス、お前の功績だ。

 国内では、そのことが大分広まっていて、赤を持つ者達からは特に、お前は自分達を助けてくれる()()()()()()()()()()()だと讃えられているが、どこでその話を聞いたのか、ソマリアの第一皇子から強いアプローチがあってな。

 一国の姫君としても、社交界の象徴(シンボル)としても、素晴らしいご活躍をしているアリス姫に、先進国でありながらも、まだまだそういったことに遅れを取っているソマリアもまた、学ばなければいけないことが山のようにあるからと、私自身も勉強したいと感じていますと……。

 その代わり、魔女の研究なども進み、学力水準が世界でも高いことで有名な我が国の学院に来てもらうことで、アリス姫にとっても勉強になるようなことがきっとあるかと思いますので、是非とも、双方に利があるように、こちらへ学びに来ないかと手紙で要請を受けたんだ」 


 と、お父様から詳しく事情を説明してもらえたことで、私は、『そっか、そういう意味があったんだ……』と、ある程度、その説明で納得することが出来た。


 同じ大国として、シュタインベルクも決して遅れを取っている訳ではなく、かなり進んでいる方だとは思うものの、ソマリアの学力水準は、世界でも一番かもしれないと言われるくらいに高く、基本的に、皇族や、貴族などは家庭教師が付くのが一般的ではあるけれど……。


 薬師(くすし)や、学者などといった研究職などや、貴族の跡取りとして生まれた訳ではない子息などが、それまで以上に、騎士としての腕などを磨いて、ソマリア国内にある騎士団の精鋭(せいえい)を目指すなど、一つの分野などに特化した、大人向けの、一般の教育を終えた貴族や、皇族などを対象にしている学院があるということで、今回、ソマリアからは、その学院へ留学に来ないかと打診を受けたのだと思う。


 お父様からすると『時を司る能力』の持ち主であり、精霊王であるアルが、ずっと傍にいてくれて、能力で命を削ってしまった魔女の寿命を元に戻したりすることも出来る私が、国外に出るということ自体、ちょっとだけ反対気味だったのかもしれない。


 それから、この6年で、私も大分分かるようになってきたし、お父様も感情表現をしっかりと表に出してくれることが増えてきたことで、お父様の瞳には、娘である私のことを心配してくれる色合いが強く乗っていた。


 それでも、シュタインベルクと並んで、世界三大主要国に数えられるほどの大国であるソマリアからの……、よりお互いの国同士、結びつきを強くして、友好国として絆を深めていきたいということを目的にした要請については、内容自体に不足がある訳でもなく、シュタインベルクにとっても利があることから断ることも出来なかったんだろうな……。


「僣越ながら、陛下……っ。

 護衛騎士の立場として、過分なことを言っている自覚はありますが、アリス様のことを思えば、気軽に国外に出ることには、俺は反対です!

 俺自身も、アリス様のことは、日頃から、この身にかけても御守りするようにしているが、普段は、しっかりとコントロールをすることが出来ている力でも、それでもその身に危険が迫ってしまったら、突発的に出てしまうことだってありますし、何かあってからでは遅いかと……!」


「父上、俺も反対です……!

 アリスの能力は、本当に魔女の中でも特別なものであり、それだけ国を挙げて、秘密にして護っていかなければいけない重要事項のはずでしょう……?

 国内でも隠し通さなければいけないほどのものなのに、もしも、万が一、アリスの能力が他国の人間に知られれば、その瞬間に、どんな国も、アリスのことを狙ってくるに違いないっ!」


 そうして、私がお父様に向かって発言をする前に、セオドアと、お兄様が思いっきり眉を寄せて、私のことを私以上に考えてくれて声を出してくれると……。


「陛下、俺も、陛下が仰る内容については理解出来るものの、殿下とセオドアの言うように、お姫様が他国へと留学するのには反対です。

 内容を聞く限り、留学ということは、あまりにも長期間、ソマリアに滞在するということになるんですよね……?

 お姫様が唯一無二の力を持っていることを思うと、どうやっても心配でしかありません」


「うむ……、そうだな。

 僕も以前に比べたら、人間にバレないよう魔法を使うこともしているが、アルヴィンが、いつ、アリスのもとへとやってくるかもしれないと考えれば、そういった危険性もあるからな」


 と、ルーカスさんとアルも、みんな、私のことを思って、お父様に進言するように声を出してくれた。


 そのことを凄く有り難く感じながらも、私自身も、この6年、ツヴァイのお爺さんも協力してくれているにも拘わらず、手がかりなども殆どなく、全く音沙汰がないアルヴィンさんのことは気がかりだった。


 更に言うなら、みんなが懸念してくれている内容についても、私自身が時を司る能力を持っていることで、もしも万が一、そのことが誰かに知られてしまったら、良くない結果を招いてしまいかねないし、私が狙われることで、みんなにも迷惑がかかってしまう可能性だってあるだろう……。


 そうして、この6年の間に、シュタインベルク国内で見つかった魔女も何人かいて、秘密裏に魔女を囲っては、私自身がそうしたいと言ったこともあり、彼女達を助けるために能力を使ってきたことで、みんなが、私の身体のことを心配してくれているのも、手に取るように伝わってきた。


 その上、セオドアの言う様に、基本的には、普段、コントロール出来ている能力も、私自身が危ない目に遭いそうになると突発的に出てしまうことがあり、この6年の間に、幾度か、私が赤を持っていることで蔑んできたり、私のことを嫌っているような人達から、裏であれこれと画策されてきたこともあって、どうしてもその全てを防ぎきれなくて、発動するようなことも、6年という長い歳月の中で起きてしまっていた。


「あぁ、そうだな……。

 私も、その危険や、可能性については考えなかった訳ではない。

 アリスが、国にとっても特別な存在になっている以上、この国に住まう者どころか、他国の人間に、アリスのことが知られると良くないだろう……。

 そこでだ、先方が名指ししていたアリスだけじゃなく、数人、親善大使として、こちらに勉強などをしに来たり、シュタインベルクでも評判の高い人物を講師として迎え入れたいと提案されてきたことを逆手にとって、アリス、お前は魔女に関する研究が進められている魔法研究科に……」


 そのあと、続けて……。


「精霊王様は、アリスと魔法研究科に通いつつも、国内でも植物などの知識に精通していることから、先方に怪しまれないよう、生物学や天文学などといったもの幅広く学べることの出来る学科にも行き来可能だという許可を取りましたので、そちらにも……。

 ウィリアム、ルーカス、お前達は、講師としてそれぞれに、ウィリアムは経済学を、ルーカス、お前は哲学や物理学などを教えに行きつつ、セオドアや、アルフレッド様と一緒に、その傍で、アリスのことを護ってやってくれ……。

 そうして、セオドア、お前は、アリスの護衛騎士として、アリスの傍にいながらも、騎士としての学科にも特別な立場として通う許可を取りつけたから、たとえ、他国であろうとも優秀な人材がいれば講師として迎え入れることで有名なソマリアで、更にその腕を磨いて、アリスのことを護れるようにしてくれたら嬉しい。

 ……お前では、騎士の学科に通う生徒などは相手にならないだろうが、少しでも、精霊王様の半身であるアルヴィンに太刀打ち出来るよう、色々な人間の動きを見て勉強になるところは吸収していってほしいと思っている」


 と私だけがソマリアに行くわけではなく、ここにいるみんなが、ソマリアに行けるよう手配したと、暗に、お父様にそう言われたことで、私はまさかの提案に驚いて目を丸くしてしまった。


 それから、その言葉に『みんなと一緒に行けるのなら、私にとっても凄く心強い話だな』と、ちょっとだけホッと安堵しつつも、お父様の配慮に有り難いなと感じながら納得しかけたところで、ハッと、あることに気付いた私は……。


「私にとっては、みんなが一緒に来てくれるのなら、こんなにも心強いことはないのですが……。

 だけど、お父様……、ウィリアムお兄様は、お父様の跡を継ぐ皇太子としての立場があるので、あまり長期間、国内を()けて留守にするのは良くないのではないでしょうか……?」


 と、私も、セオドアも、アルも、別に問題無いんだけど、ウィリアムお兄様は、皇太子としての役目があるし、お父様には、今、伝えることはしなかったんだけど、もしかしたら、ルーカスさんも表舞台に出て来たばかりで、その背景を考えると、ソマリアに行くのは、あまり良くないんじゃないかと心配して声をかけると……。


 ウィリアムお兄様は、私の言葉に『確かにそうだ』という表情を浮かべつつ、ルーカスさんも私が何も言わずとも、自分のことに気付いてくれたみたいで『俺も、そうだね』というような表情に変わったものの。


 それでも、二人とも、自分達のことよりも、私がソマリアに行くことを、過剰に心配してくれたみたいで『それでもお前、(お姫様)のことを放っておくことは出来ない』と、私の方へと視線を向け返してくれた。


「あぁ、そうだな。……実は、それなんだがなっ。

 勿論、ウィリアムが皇太子だということで、国内に一人でも皇族を残すべきだということもあって、私自身もかなり悩んだんだが、6年前のあの食事会での一件以降、ギゼルも、お前が魔女であることや、アルフレッド様の半身であるアルヴィンのことなどもあり、精霊などについても軽く知ってはいるが、それでも、ウィリアムほど深く関わってきてもいないし。

 お前とも大分距離は縮まっているが、事情もしっかりと分かっていないまま、ギゼルをお前の護衛目的で付けるのは不安に感じていたところ……。

 まだまだ陛下もご健在なのですし、ソマリア国が講師を求めているのなら、ウィリアム殿下が行った方が良いのではないかという推薦が、()()()()()()()()()()()()からも多くあがってな……。

 理由付けには持ってこいのものだったから、私もそれを採用することにした」


 と、此方に向かって、ウィリアムお兄様がソマリアに行くことになった経緯について話してくれたあと。


「それから、ルーカスなのだが、お前は外に出て来て久しいこともあり、もう、エヴァンズ家には戻っているが、すぐに侯爵からエヴァンズ家の領地の経営を引き継ぐように、領主としてその座に就くことになってしまうと、また国内で甘いだなんだと非難の声があがり、そこに付けこみ、あれこれと煩く言ってくる貴族達も出てくるだろうからな。

 お前がソマリアに、国の代表で選ばれ、講師として行くことで、お前には悪いが、そこで経験を積むことで、帰ってきた時には、国内の貴族を幾らか黙らせることも出来るだろうという意図がある」


 と、続けざまに、お父様からそう言ってもらえたことで、私は、ウィリアムお兄様だけでなく、ルーカスさんもソマリアに行くことで、国内であれこれと批判してくる貴族達について、やんわりと抑えることを期待してくれているのだと、お父様がそこまで考えてくれていることに嬉しくなって、思わず口元を緩ませてしまった。


「……本当に、何から何まで、ご尽力頂けて、陛下のご厚情に感謝致します。

 陛下から、そこまでのことをして頂ける理由などどこにもないというのに、俺のことまで、そのように考えて下さってありがとうございます」


 そのあと、私の傍に立ってくれていたルーカスさんが最大級の感謝の意を述べるように、お父様に向かって声を出せば、お父様もルーカスさんに向かって、『これから、ある程度、お前にとっては逆風が続くだろうが精進しなさい』と、言葉をかけるのが聞こえてきた。


 その言葉に、真剣な表情を浮かべながらルーカスさんが、こくりと頷いたあとで、お父様の方へと真っ直ぐで、どこまでも誠実な視線を向けたセオドアが、いつも以上に私に忠誠を誓うかのように、真摯に……。


「陛下、俺自身も、必ず姫さんのことを守り抜くと誓います……っ!

 今までも、自分の腕を磨けるだけ磨いてきましたが、これまで以上に強くなって、たとえ何が起ころうとも、対処出来るようにしていくつもりです……!

 姫さんのことは、この身にかけても、必ず……っ!」

 

 と、決心したように声を出してくれたことで、私がその言葉に驚いて、お礼の言葉を伝えようとセオドアに、『ありがとう』の気持ちを込めて、視線を向けたところで……。


「父上、アリスのことは俺達にお任せ下さい……!

 ソマリアの第一皇子が、アリスに興味を持っているというのは、今日のパーティーで、外務部長官のスミスから聞いて、俺たちも気に掛けていたところです。

 諸外国であるソマリアには、必要以上にアリスの情報を渡さないように、俺も傍でアリスのことを護っていきます……!」


 だとか……。


「セオドアと殿下の言う様に、陛下、俺もお姫様のことを御守りするために充分に周囲へと注意を払って気をつけていくと誓います……!

 特に、ソマリアの皇子だけではなく、周囲も、先進国であるシュタインベルクのことは気になっているはずですし、お姫様のことについても詳しく知りたいと、別の人間が近づいてくる可能性だってありますからね。……虫除けは、俺にお任せ下さい!」


 といった感じで、ウィリアムお兄様とルーカスさんが私のために声を出してくれただけではなく。


「うむ、僕にも、大船に乗ったつもりで任せてくれたら良いっ!

 アリスに危険が迫ったら、躊躇なく、魔法を使うつもりでいるし、なるべく人間達に僕の存在やアリスの能力がバレないように上手く立ち回って見せよう。

 ここ数年の間に、僕も、何とか表情を取り繕うくらいのことは出来るようになってきたからな……」


 と、アルも力強い口調で、私のことを思って、お父様に向かって言葉をかけてくれた。


 みんなのその言葉に、ジーンと胸の奥底から沸き上がってきた温かい気持ちに包まれながらも……。


「みんな、そう言ってくれて、本当にありがとう……っ。

 お父様、私も、一生懸命、みんなの足を引っ張らないように、国の為にも、ソマリアの親善大使として、これまで以上に、両国の友好関係が結べるように頑張っていきたいと思います」

 

 と、私自身も、折角、与えられた特別な機会だから、皇女として国のためになるようなこともしていかなければいけないだろうと強い意志を固めながら、対面にいるお父様の目を見て、しっかりと、自分の言葉を伝えていくことにした。


 そんな私を見て……。


「アリス……、お前にそう言ってもらえると、私としても本当に有り難い。

 いつも、国のためにもなるようなことを率先して考えて、行動しているお前のことを私は誇りに思う。

 負わなくてもいい気苦労をかけることになってしまって、本当にすまないな……」


 と、どこまでも優しい瞳で、ほんの少し申し訳なさそうにお父様が私に向かって声をかけてくれたことで、この場での話は、それで終わることになってしまった。


 そのあと、ルーカスさんと一緒に、パーティー会場では、あまりにも貴族達への対応などをしなければならず、まだみんな、晩ご飯も食べていないことから、ウィリアムお兄様も来てくれることになって、ローラが作ってくれた晩ご飯を一緒に、私の自室で食べようという話になったあと……。


 私は、ソマリアへと旅発(たびだ)つまでに1週間ほどの準備期間があるということで、みんなで、ソマリアに行くのに持って行く留学に必要になるものを、王都の街まで買いに出かけようと約束することにした。


『国同士の友好を結ぶためのものでもあるし、遊びに行くような旅行ではないんだけど、なんだか、みんなで外国に行くだなんて本当に初めてのことだから、準備の段階から、ちょっとだけときめいて、ワクワクしてしまうかもしれない……っ』


 その上で、皇女として、旅立つ前までの間に、ジェルメールなどに行ったり、ツヴァイのお爺さんやトーマスさんなど、お手紙を出せる人にはお手紙を出して、色々なところへと挨拶回りなどをしに行った方が良いだろうなと感じつつ。


 『やるべきことは、しっかりとしておかなければ……』と、内心で、そう思った私は、ひとまず、ローラが作ってくれた温かくて美味しいご飯を、みんなと一緒に食べに行くことにした。





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♡正魔女コミカライズのお知らせ♡

皆様、聞いて下さい……!
正魔女のコミカライズは、秋ごろの連載開始予定でしたが、なんとっ、シーモア様で、8月1日から、一か月も早く、先行配信させて頂けることになりました!
しかも、とっても豪華に、一気にどどんと3話分も配信となります……っ!

正魔女コミカライズ版!(シーモア様の公式HP)

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1話目から唯島先生が、心理的な描写が多い正魔女の世界観を崩すことなく、とにかく素敵に書いて下さっているのですが。

原作小説を読んで下さっている方は、是非とも、2話めの特に最後の描写を見て頂けたらとっても嬉しいです!

こちらの描写、一コマに、アリスの儚さや危うさ、可愛らしさのようなものなどをしっかりと表現してもらっていて。

アリスらしさがいっぱい詰まっていて、私は事前にコミカライズを拝見させてもらって、あまりの嬉しさに、本当に感激してしまいました!

また、コミカライズ版で初めて、お医者さんである『ロイ』もキャラクターデザインしてもらっていたり……っ!

アリスや、ローラ、ロイなどといった登場人物に動きがつくことで。

小説として文字だけだった世界観に彩りを加えてくださっていて、とっても嬉しいです。

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本当に沢山の方の手を借りてこだわりいっぱいに作って頂いており。

1話~3話の間にも魅力が詰まっていて、見せ場も盛り沢山ですので、是非この機会に楽しんで読んで頂ければ幸いです。

宜しければ、新規の方も是非、シーモア様の方へ足を運んでもらえるとっっ!

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※また、表紙や挿絵イラストで余す所なく。

ザネリ先生の美麗なイラストが沢山拝見出来る書籍版の方も何卒宜しくお願い致します……!

1巻も2巻も本当に素敵なので、こちらも併せて楽しんで頂けると嬉しいです!

書籍1巻
書籍2巻

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✽正魔女人物相関図

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+注意+

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